身体の中からリフレッシュしたい時には野菜をたっぷり食べることにしている調味料研究家・松本葉子です。“きごしょう”あるいは“きごしょ”と聞いて、「あー、あれね」とすぐわかるのは、京都近辺のある年齢以上の方だけかもしれません。“きごしょう”とは一般的には、「葉とうがらし」と呼ばれているものです。
今回は、晩夏の味として昔から京都で親しまれてきた“きごしょう”と、その食べ方をご紹介したいと思います。

夏野菜の盛りが過ぎる頃に登場するワイルド葉もの

お盆を過ぎた頃から秋にかけて、京都の八百屋では、猛々しい感じの濃い緑色の葉野菜を見るようになります。これが“きごしょう”(葉とうがらし)です。

きごしょうとは、おそらく「木胡椒」という意味だろうといわれていますが、つまりは唐辛子(主に青長唐辛子)を収穫した後の株です。大きな株だと幹がかなり太くて、それこそ木のようになっていたりもします。

秋植え野菜のために畑を整理する必要上、夏野菜である唐辛子の株は抜いてしまうので、この時期に出回るんですね。根っこがついたままの大きな株で売られていることもよくあります。

農家だけでなく家庭菜園でも苗の入れ替えは必須です。下の写真は、うちの家のプランターで育てていた唐辛子。そろそろきごしょうとして食べようと思って抜きました。

きごしょうには、大きくなりすぎたり、既に赤くなってしまった唐辛子や、逆にまだとても小さい実や花もついていますが、これらもきごしょうの味のうち。

「食べられるものを捨てるなんてとんでもない、手をかけておいしく全部食べる」という京都の「始末しぃ」(倹約)のココロを体現したおかずになります。

風味鮮やかな「きごしょう」はこんなふうに食べます

きごしょうを調理する時は、まず硬い茎から葉だけを摘みます。ざるに山盛りになってもご心配なく。熱を加えるとかさが減ってほんの少しになっちゃいますよ。

葉は柔らかなものであればそのまま炒めたりもしますが、少しアクがあるので基本は茹でてから使います。でも茹ですぎは禁物! 独特の青っぽい風味が残るように下処理するのが、おいしく味わうコツです。

ついていた実は刻むなどして一緒に使ってください。時に強烈に辛いものも混ざっていたりして、それもまた良いアクセントになります。

ポピュラーな調理法としては、醤油と味醂、日本酒などで煮る佃煮や油炒め。だしじゃこやちりめんじゃこを入れて作ることも多いです。ほかに油揚げや肉と煮たり、味噌汁にいれたりもします。

トップの写真は、家のきごしょうを使った「きごしょうチャーハン」です。葉が比較的柔らかだったのでそのままごま油で炒めて、削り鰹、醤油で味付け、ご飯と玉子を炒め合わせています。

特にきごしょうの佃煮は京都らしい保存食。酒肴にもご飯の友にもなり、もちろん「京のぶぶ漬け」にもぴったりです。


京野菜のニューフェイスとしても注目されています

「捨てずに食べる」イメージのきごしょうでしたが、近年、葉を食べるための唐辛子「京唐菜」という品種もできました。新しい京野菜です。

「京唐菜」は、一般のきごしょうより早い時期から手に入り、葉も茎も柔らかいのでいろいろな料理に使うことができます。

もったいないからではなく、おいしいから食べよう!

きごしょうは、βカロテンやビタミンも豊富に含んでいる野菜ですが、なによりの魅力はその独特の風味。

きごしょうを見かけたら買って料理してみるのもいいですし、家庭菜園で唐辛子やピーマンを作っている人ならその葉を同じように使って、京都の普段着のおかずを楽しんでみてください。