9月になるとイタリアの各地でSAGRAと呼ばれる収穫祭が開かれます。広場で行われる村祭りから会場を使ったフェスティバルまで、大きさはさまざまです。そこでは、市町村が競って地産の料理を出すので、おいしい料理が出る収穫祭には人が集まります。
Alboneseという人口570人の町には、信号が1つしかありません。それでも、サッカー場と体育館があります。その体育館で今年もMAIS(トウモロコシ)の収穫祭が開かれました。

POLENTAはトウモロコシの粉で作った伝統料理

料理の種類が多く味も良いので、金土日の3日間で1500人が来場しました。昔は村の人が料理をしたのですが、現在は保健局などの検査が厳しいので、ケータリングの会社に依頼しています。配膳も含めてサービスは、村の人がボランティアで行います。

1か月前からポスターを貼り、電話で予約受付。当日は予約だけでほぼ満席状態です。

 

料理は、POLENTA(ポレンタ)と呼ぶトウモロコシの粉で作った料理が提供されます。私の一番好きなのはFUNGHI(キノコと腸詰め)を使った料理です。ASINO(ロバ)・CERVO(シカ)なども普段食べないので、人気があります。

POLENTA con FUNGHI e SALSICCI(キノコと腸詰)

POLENTA con Stufato di ASINO(ロバ肉) 

POLENTA CON CERVO(シカ)

これらの地方料理に合うワインはBONARDA

「BONARDA」はグラスに注ぐとシュワーと泡が出ますが、すぐに消えます。とはいえ、スパークリングワインではありません。甘口の赤ワインです。生産量が多く、また寝かせて価値が出る品種ではないので、安いワインです。

そんなわけで日本では見かけないワインかもしれません。主にロンバルディア地方(OLTREPO PAVESE)で生産されそして消費されています。有名なVARZIのサラミによく合いますので、ぜひお試しください。

POLENTA con FRITTURA di Maiale(豚) 

POLENTA CON GORGONZOLA(ゴルゴンゾーラ)

メインの料理にGORGONZOLAとCICCIOLIそしてポテトフライが付けばワインが余計に進みます。

CICCIOLIとはラードを作る過程で出来る「余りもの」です。カロリーが高くパン生地に混ぜたりポレンタのおかずとして使われました。現在では前菜として使われています。写真左下のCICCIOLIはこの地方独自の料理で、一般のCICCIOLIとは異なったものです。素材は豚の背肉です。軟らかい舌触りとしょっぱさが特徴で、ワインがすすみます。

収穫祭は食べて踊って

食べて飲んだ後は、バンドの演奏で大人から子供まで踊り始めます!

こうして楽しい収穫祭ですが、運営にはかなり苦労があるようです。週末の2~3日だけのイベントですから、入場数は天候に左右されます。伝統的な地方料理は若い年代には受けないのか、来場者の平均年齢は高かったようです。

コロンブスが広めたトウモロコシの歴史

トウモロコシは別名GRANO TURCOとも呼びます。トルコの小麦と訳しますが、昔は外国から来たものは俗にトルコからと呼ばれていました。

1493年にコロンブスが大航海から持ち帰った品目の一つで、スペインからフランスを経過してイタリアに伝わりました。当時は農家の庭で飼料用として栽培されていましたので、課税対象の穀物ではありませんでした。

それまで食べていた穀物は販売用にして、彼らがトウモロコシを食べるようになったのです。人口の増加で食糧不足であった1700年代中期からは農地で栽培されるようになり、下層階級の主食であったアワや大麦に代わる穀物の座を得たのです。

ところが、トウモロコシが主食になってビタミンB欠乏によるペラグラ病が発生。1735年に発見された病気は大きな社会問題となりました。そんなわけで、トウモロコシは主食の座から落ちたのです。

しかし、いまだに北イタリア(BERGAMOから東のVENEZIAまで)の家庭ではPOLENTA(トウモロコシの粉で作った料理)が食べられています。