ぐるなびは、2017年版トレンド鍋に「フルーツ鍋」を選出した。今年は東日本で記録的な長雨や冷夏が続き、例年と比べ十分に夏を満喫できなかったことから戻り夏を楽しみたい消費者が多い、西日本では例年より暑い日が続いたため夏のだるさや疲れを癒したい消費者が多いと需要を予測。

また、近年の健康志向の高まりの中で、今年は野菜と果物など豊富な栄養素を一皿で摂取できるサラダも注目されていることや、20代の女性を中心にフォトジェニックな料理を求める層が増加し、フルーツ鍋の彩りの良さもこうしたトレンドを反映した。年々レモンなどの柑橘類や国内産フルーツの出荷量が増加していることも後押しした。

ぐるなび「今年の一皿」は町おこしの起爆剤にも

ぐるなび総研が、2014年から発表している「今年の一皿」は、一時的なブームではなく、その年の世相を反映し、後世に食文化として伝えていくにふさわしい「食」を選定するものだ。まだ歴史が浅いが、回を重ねるにつれ、食における回顧録として人々に愛されるロングセラーになっていく可能性が大きい「キーワード」といえよう。過去3回の大賞、ノミネート品からピックアップして受賞当時から、その後を探った。

2014年の一皿は「ジビエ料理」

農林水産省が6次産業化を推進する一環として、国産ジビエ(シカ、イノシシなど食用に供する野生鳥獣)の利用促進のための情報発信と資源の有効活用に向けた取組みを展開する中、14年に厚生労働省が「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を作成し、狩猟から消費に至るまでの各工程で、安全性確保のための取組み指針を公表し、日本における「ジビエ料理元年」となったことなどから「ジビエ料理」が「今年の一皿」に選ばれた。

また、中山間地での鳥獣被害が深刻化し、農作物の被害額が200億円を超える状況の中、鳥獣被害防止のためにも「ジビエ料理」の活性化が求められた。

ぐるなびの13年10月と14年10月の「ジビエ」掲載店舗数の伸び率は前年比98%増で洋食業態だけでなく、和食、和風居酒屋でもジビエを取り扱う店舗が増大し、「ジビエ」検索数では同259%増と消費者の関心の高さがうかがえた。14年12月と16年12月で比較でも同80%増となっている。

ジビエ料理コンテストが開催されるなど6次産業化の推進役が期待される

「高級かき氷」は、日本の夏の風物詩として夏季限定のサイドメニュー的なメニューが生果実、天然素材のシロップ、またリキュール類を使用し、洋菓子の要素を取り入れるなど高級感とともにバリエーションが豊富になり、一杯1000円以上のかき氷に行列ができるなど話題になり、ネット検索されるメニューとなった。

年間通じて「高級かき氷」を販売する専門店も増えた。「かき氷」の検索数は12年11月~13年10月と13年11月~14年10月では593%増、13年6月と16年6月の比較でも90%増となっている。

2015年の一皿は「おにぎらず」

2015年は訪日外国人数が1973万7000人と過去最高を記録したインバウンド元年ともいえる年だ。また、イタリアで開催されたミラノ万博で、日本の食文化の魅力と多様性を発信した年でもあった。しかし、日本ではコメ離れが進むという問題があった。その問題提起として「にぎらずにできるおにぎり」として「おにぎらず」が選出された。

「おにぎらず」は、海苔の上にご飯を敷き、その上に具材を乗せて海苔の四隅を中心にあわせるような形で包み、半分に切ったもの。具材がきれいに見えるのがおにぎりと大きく違う。NBメーカーから専用海苔が発売され、ヒットするなど家庭で普及した。

検索数は、飲食店では大きな伸びはないが、ぐるなび会員を対象にした「おにぎらずを知っているか」というアンケート調査では14年以前は「知っている」の回答が16.3%だったが15年には「知っている」の回答が83.7%にまで高まっている。しかし、中食では、ご飯にメンチカツやかき揚げを挟んだ商品が定番化するなどにぎらないおにぎりという料理は市場に定着した。

ノミネートワードでは、「クラフトビール」が15年12月と16年12月の比較で30%増。1990年代にビール製造の規制緩和をきっかけに起きた「地ビール」ブームが、名前を変えて再ブレーク。最近では店内で醸造タンクを設置するなど、独自のビール造りに取り組む飲食店もでてきている。

また、「なまずの蒲焼」はウナギ価格の高騰で代替食材として注目され、検索数も14年1~12月と15年1~12月の比較で263%増と急増。しかし、もともとナマズは日本各地の郷土料理として親しまれてきた食文化でもあり、ノミネートをきっかけに「なまずの里よしかわ」として町おこしをしていた埼玉県吉川市が中心となって、「全国なまずサミット2017in吉川」が開催されるなど地域活性化へと広がっていった。

埼玉県吉川市では、「なまずサミット2017in吉川」を開催

2016年の一皿は「パクチー料理」

パクチーは、エスニック料理における薬味として、専門店で使われる特別な食材だった。しかし、大手食品メーカーが生鮮で一般的に流通させ、家庭においても広がり、愛好する人を「パクチスト」、パクチーを追加することを「追いパク」と呼ぶなど新語も生まれ、健康・美容を意識する女性のニーズを捉え、薬味からサラダ、鍋などの主役の食材として認知された。15年1~11月と16年1~11月のパクチーをメニューに提供する店舗数の伸び率は93%増。16年12月と17年6月との比較は50%増となっている。

「日本ワイン」は、15年10月に国税庁が「果実酒等の製法品質表示基準」(適用開始は18年10月30日)を策定。日本ワインを「国産ブドウのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」と定義し、濃縮果汁などの海外原料を使用して国内で製造された国産ワインと区別されたことから消費者の関心が高まった。伊勢志摩サミットで提供されたことや、世界規模の国際コンクールでの受賞などから「日本ワイン」の人気と知名度が高まっている。

<「今年の一皿」とは?>

ぐるなびにアクセスした月間6100万人のユニークユーザーが検索したビッグデータと、1504万人のぐるなび会員を対象としたアンケート結果から、その年に話題となったキーワードを複数抽出。さらに、メディア関係者の審査を経て、ノミネートワードを選出。その中から「今年の一皿」が選定され、ぐるなび総研の承認を経て決定される。農林水産省、国土交通省観光庁が後援している。(取材協力=ぐるなび)

◇日本食糧新聞の2017年8月12日号と9月20日号の記事を転載しました。