京都出身の調味料研究家・松本葉子です。10月1日は日本茶の日。京都のお茶というと、多くの方がイメージされるのは宇治茶、それも抹茶ではないでしょうか?
でも京都ならではのお茶は他にあります。お番茶です。番茶なんてどこにでもあるじゃないかと思います? いえいえいえ、京都の番茶は、ほかのとこのんとものすごぉちゃいますねん。どこが違うかというと…

落ち葉?燻製? これが京都のお番茶どすえ~

10年程前のことですが、私はとある国の空港で別室に連行されてしまいました。なんと原因は京番茶。

その国に住んでいる友だちに「来るんやったらあそこの番茶買ってきて」と頼まれたので、大量に買い、茶葉が粉々になるとまずいと思ってプラ容器に入れていました。税関でそれを開けられた途端、「これなに?」「茶です」「……あちらにどうぞ」

確かに見た目は枯れ葉。しかも匂いが凄いんですよ。京番茶って。よく言われるのは、たき火、たばこ、火事場(物騒…)とか。

この京都特有の番茶は、「京番茶」「いり番茶」などの名称で売られています。

茶摘みが終わった後、茶畑に残った育ちすぎた葉を茎や枝ごと刈って、これを蒸し、乾燥させてから焙じた茶なのですが、普通の茶のように茶葉を揉むことをしないので、葉はそのままの形で、小枝も混じっています。

しかも強火で炒るのでところどころ焦げていて、炒った時の煙で燻されるから独特の強烈な匂いがついているのです。

もちろんメーカーによって匂いには結構差がありますが、これを香ばしいと思うか臭いと思うかは…たぶん後者の方が多いでしょう。

くだんの税関では、「カフェインすら入ってないし、日本じゃ赤ん坊の飲み物です!」と言う私を無視して検査した後に解放されましたが、本当に京都じゃ番茶は赤ちゃんに飲ませることが多いです。お茶の中でも低刺激なので安心ということでしょう。

京番茶の淹れ方。ここでも匂いにはご注意を!

京番茶でも匂いが少ないものは、普通の番茶のようにやかんで煮出して淹れるように書いてあったりします。

でも、スモーキーフレーバーが強いものは、煮出さないようにと書かれているものが多く、匂いが染みつくのでやかんや急須は専用のものを使うことが推奨されています。

確かに我が家を含めて京番茶を常用する家では「番茶やかん」がありますね。これも京都の番茶の「飲み方」といっても良いかもしれません。

ここでは一保堂のいり番茶のパッケージに書かれていた淹れ方をご紹介します。

分量は、水1リットルに対して茶葉15g。京番茶は15gでもかなりかさが高いです。

沸騰したお湯を注いで15分抽出します。
お湯を注いだ時はこの水色。

15分後抽出完了。かなり色濃くなりますが、葉や枝は全部は沈みません。
これを漉して飲みます。

京番茶はこんな飲み方・食べ方もできますよ!

やかんや大きめのポットでたっぷり作って冷やして飲むのも定番ですが、熱い京番茶を飲みたい時は、急須で淹れるとよいでしょう。

急須で淹れる時は、茶葉多め・抽出時間短めがコツです。

京番茶の強い風味はミルクと合わせると、色こそ薄いもののチャイのような味わいになり、甘味がよく合います。

ただし、ミルクで煮出すとえぐみがでてしまうので、濃いめに淹れてから熱いミルクと合わせるようにします。

京番茶をスイーツに使うなら、ゼラチンか寒天で固めるのがおすすめです。

お茶屋さんで話を聞いた時に「甘味をつけない方がおいしい」と言われたのですが、実際に何種類か作ってみると、確かに甘味をつけるより、甘味なしで作って蜜をかけたり、砂糖きな粉を添えたりする方がおいしく感じました。

美しい琥珀色で、口の中で溶ける時に香りが広がる大人向きの一品です。

好きになったら手放せない京番茶。試してみませんか?

見かけも匂いもインパクトが強い京番茶。とある茶舗では「このお茶は好き嫌いが分かれるので、まずサンプルでお試しください」と書かれていたりします。

でも、京都以外に住む人もこのお茶のとりこになって常用する人も増えているのだそうです。

もし、まだ未経験なら、一度京番茶を飲んでみませんか?