イタリアはヨーロッパ第一の米生産国で、パスタと同じように米を世界中に輸出しています。そのお米の産地、夏は蒸し暑く蚊に悩まされ冬の湿気でカビだらけ。およそイタリアらしくない地に住んでもう30年が過ぎました。人口570人、信号機一つの町に住み、お米の流通に携わっています。イタリア人も知らない「お米」の歴史やエピソードのページを開いてみませんか。

イタリアのお米の産地は

音楽。美術。ファッション関係のイタリア語はかなり日本に入っています。歴史・観光でイタリアの地名は他のどの国よりも記憶に残っているはずです。それだけ日本人になじみ深い国なのです。さて、イタリア料理ですが、お米料理のRISOTTO(リゾット)をご存知ですか。 PASTA・PIZZAに比べるとかなり出番の少ない料理です。

本場イタリアでもRISOTTOが食されている地域は限られています。アルプスの雪解け水を集めて流れるイタリアで一番長いPO川流域、TORINOが州都のPIEMONTE州・MILANOが州都のLOMBARDIA州、そしてVERONA近くのVENETO州の一部が米の産地です。

1930年代に栄えたころの農家

リゾットのスープにこだわるイタリア人

「米に味があるなんて・・・米は米だ」と笑われたのが今住む町のBARで聞いた米農家の人たちの声でした。RISOTTOは生の米を洗わずに鍋に入れ、スープを加えて混ぜながら炊く料理です。米粒が壊れないように混ぜない炊き方もあります。

よって、米はスープの味を吸って適当な硬さ(AL DENTE)を保つ特徴が求められます。お米の宣伝には「煮え過ぎない米」と言うキャッチフレーズはありますが、味についてのコメントはありません。では、イタリア人は何を基準にお米の品種を選んでいるのでしょう。今まで私が行ったアンケート調査の「なぜその品種を選んだのですか」には回答さえ得られていません。

有名な品種はCARNAROLI, ARBORIO。 産地でよく使われるBALDO, ROMAなど。「米は米」には、米なら何でもOKと言うあいまいなニュアンスが感じられます。と言う訳で、お米にはこだわりはありませんがスープには気を遣っています。

イタリア中部・南部でトマトソースが大切なように、北イタリアでは一般家庭でもスープは大切に扱います。野菜と鶏、肉も加えて数時間ゆっくり煮込んで味を出します。そんなスープの味を吸ったRISOTTOは美味しいです。

ラードを加えたリゾット「PANISSA」

ミラノでは食べられない地元のRISOTTO「PANISSA(パニッサ)」をぜひ一度お召し上がりください。米の中心地VERCELLI市近郊で、地元の人が推薦するレストランに行かれるのがよいでしょう。地元産の米と豆(赤インゲン豆を使うと美味しそうに見えます。ひよこ豆は使いません)・スカローニャ(玉ねぎの一種)・SALSICCIA・ラードを加えたRISOTTOです。かなり重い料理です。

PANISSAの材料

 

ラードから取り出したサラミ

 

切ったらそのままお召し上がりください

ラードといえば、ラードに漬けたSALAME D’LA DUJAという腸詰めがあります。SOTTO GRASSI
と呼ばれることもあります。(高級品は)浅い陶器に入っています。周りのラードを拭き取って薄皮をむけばそのまま食べられます。赤ワインにぴったりです。

SALSCICCIAは辞書ではソーセージと訳されています。確かに腸詰めですが生のサラミという方が正しいと思います。BBQには欠かせない食材で、焼いても生でも煮てもおいしいです。

リゾットにはジャポニカ米

お米の話に戻ります。ジャポニカ米とは日本米のことでしょうか?

世界のお米はジャポニカ、インディカ、ジャバニカの三つに分かれています。東南アジア産の細長いのがインディカ、そしてインドネシア産の幅広で長いジャバニカです。

日本のお米もほとんどがジャポニカですが、イタリアで生産されるRISOTTO用もジャポニカに属するのです。

お寿司に使うお米 左・イタリア産  右・日本産コシヒカリ

さて、イタリアで必ずお米が出て来る場所があります。どこでしょう?

それは病院です。入院して一番困るのが茹でただけの白米です。許されるなら「ふりかけ」を持参したいです。

日本人一人の年間米消費量は60キロ弱ですが、イタリアは5キロを切っています。食されるのが米の産地に限られているのが一番の原因でしょう。米の料理がそれだけ人気が無いのは残念なことです。スープを入れながら炊くRISOTTOは確かに時間がかかります。米産地でさえ家庭でRISOTTOを作る回数が減ってきています。

スーパーマーケットにはかなりの種類のお米が並べてありますが、買っている人を見ることは滅多にありません。消費量が少ないので、バーゲンの時に買っておけば十分間に合うからです。

私の住む町と田んぼ