こんにちは!今年の夏は猛暑に加え豪雨など多くの自然災害に悩まされましたね。日本のみならず、世界的にも異常気象のニュースが飛び込んできますが、そんな災害にも負けずに太陽の光をいっぱいに浴びたたくさんの農作物が収穫を待つまつばかりの実りの秋がやってきました!
ワインはブドウ、ビールは麦というようにお酒の原料はすべて“農作物”から生まれます。そして日本酒は「お米」。この秋もたわわに実った稲が収穫を目前に控えています! そして収穫されたお米でいよいよ日本酒造りのシーズンに突入します。

酒米の稲にもたくさんの穂が実りました!そろそろ収穫が始まります

「稲」の起源は東南アジアや中国と伝えられていますが、日本には縄文時代から弥生時代にかけて伝播したようです。「稲」の種類自体は全世界で約1000種ちかく、日本では約300以上と言われています。

普段、私たちが食しているお米は食用米(飯米)、日本酒を造る際に使用されるお米は酒造用米(酒米)として区別されています。

岡山県赤磐雄町(9月10日撮影)

近年では食用米も改良によって、酒造用に使用されることも増えてきましたが、その酒造用の酒米のなかでも農水省の検査基準に合格した酒米は酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)と呼ばれ、通常の酒米と区別されます。

酒造好適米は、(1)粒が大きいこと、(2)心白(しんぱく、米の中心にある白濁した部分)があること、(3)タンパク質や脂質が少ないこと、など一定条件をクリアしなければなりません。

現在、酒造好適米に指定されている品種は120種ほどあるようです。また稲の穂丈が平均120cmほどにもなるので稲が倒伏しないよう栽培技術も要します。

新潟県醸造試験場で研究されている酒米サンプルの一部

山田錦という酒米はよく耳にするけど…

酒造好適米のなかでも現在最も栽培され、生産量全体の33%を占める品種が「山田錦(やまだにしき)」です。山田錦は兵庫県が原産で、大正12年から研究が始まり昭和11年に誕生し現代の酒造業界になくてはならない酒米になりました。山田錦で醸される日本酒は吟醸酒が多く、繊細で雑味のない酒質が特徴です。

また次に生産量の多い「五百万石(ごひゃくまんごく)」は新潟県が原産で全体の25%を占めますが2011年までの40年間もの間、作付面積がトップの人気酒米でした。純米酒などに多く用いられ、お米の旨味のあるキレイな味わいに仕上がります。

筆者の身長154㎝、「広島錦」は160㎝もの穂丈がありました

岡山県原産の「雄町(おまち)」は1866年に誕生した現在品種登録されている酒米のなかで最も古く150年以上も栽培され続けている名米で、山田錦や五百万石の先々代にあたります。

ほか、長野県の「美山錦」は繊細で淡麗な味わいに、山形県の「出羽燦々(でわさんさん)」は香り高くすっきりとした味わいが特徴です。ワインがブドウ品種によって味わいが変わるように、日本酒の酒米でもそれぞれの特徴が楽しむことができるのです。

合鴨農法で無農薬栽培される酒米の圃場(新潟県)

各地の気候とその土地ならではの土壌が織りなす酒米を楽しんで!

前述したように、有名な酒造好適米がありますが、それ以外にも各都道府県でその土地にあったそれぞれの酒米がたくさん栽培されています。その土地の気候風土で育った酒米で造られる日本酒、それこそがまさに「地酒」といえるのではないでしょうか。

皆さんの住んでいる土地や故郷にはどんな酒米がありますか?また、旅先で楽しむ日本酒がその土地の酒米だったら何となくうれしい気分になるはずです。

また9月に入り酒屋さんの店頭には秋ならではの日本酒「ひやおろし」が並びはじめました。

「ひやおろし」の記事はこちら
秋の風物詩「ひやおろし」で菊酒を、四季の日本酒のおいしい飲み方

日本酒のラベルをよく見てみると酒米の名前が見つかるかもしれません。稲を思い浮かべながら秋の日本酒を楽しんでみてはいかがですか。

大越智華子著「日本酒講座」テキスト2017年発行版より