今年の7月、「ビールのペアリングがよくわかる本」という本が出ました(発行元:株式会社シンコーミュージック・エンタテイメント)。日本ビアジャーナリスト協会副代表・野田幾子さんが監修を務めています。とてもおもしろい本だったので、ここに書かれていることを参考に、ビールに合う料理を考え、作ってみました。

ビールのペアリングを学ぼう!

実はこの本に、以前私とともに月刊誌「食生活」を編集していた小宮千寿子さんが、「編集・文」として参加しています。

ビールの製造工程に始まり、ビールの味を決める5つの要素、ペアリング(ビールと食べ物の、相性の良いものを合わせる)の基本~実践といった章で構成されています。無類の酒好きの小宮さんならではのきめ細かい編集ぶりが、この本に反映されていると思いました。

こちらに書かれていることを参考に、筆者オリジナルレシピをご紹介いたします。

【だしにこだわる肉じゃが】ほろ苦ビールに合う

ビールは単に「ほろ苦いもの」だと思っていませんか? 最近はクラフトビール(小規模な醸造所で作られるビール)が流行しているので、ビールにも甘みを感じさせるものや酸味のあるものなど、個性豊かなものがいろいろとあるのです。

ここでは、大手のビール会社でも一般的な、苦みのあるビールとの相性が良い料理をご紹介します。ビールの苦みは、食材や調味料によるうまみ成分を強調する効果があるのだそうです。

「ペールエール」や「ピルスナー」「セゾン」「IPA」のような苦みのあるビールに合うものの一つとして、この本では「肉じゃが」を挙げていました。

通常、肉じゃがは材料を炒めてから水と調味料で煮込むのですが、今回は炒めませんでした。そして、にんじんは30分くらい煮込むと甘みが増しておいしいので、先にだし汁で煮込みました。

だし汁は、昆布とかつお節でとっています。かつお節は袋入りの削り節ではなく、一本のものを水で濡らして湿らせ、ピーラーで削って作りました。

湿らせると削りやすいというのは、20年ほど前、食生活研究家・魚柄仁之助(うおつかじんのすけ)さんに教わりました。確かに削りやすいです。

<材料・4人分>
豚もも薄切り肉 400g
じゃがいも 小8個
にんじん 中1本
玉ねぎ 中1/2個
しらたき 1パック
水 1カップ
昆布 10cm
かつお節 1つかみ(粉状であれば大さじ1.5くらい)
砂糖 大さじ1
本みりん 大さじ1
酒 大さじ1
しょうゆ 大さじ3

<作り方>

  1. 水に昆布を入れ、30分〜半日浸けておく。かつお節は水で濡らして湿らせ、ピーラーで削る。
  2. じゃがいもは皮をむいて四つ割、にんじんは皮をむいて乱切り、玉ねぎはくし形切り、しらたきは食べやすい長さに切る。
  3. 昆布を浸けた水を中火で沸かし、沸騰し始めたら昆布を引き上げる。火を止めてかつお節を入れ、2分ほどおいたらキッチンペーパーを敷いたざるで漉す。
  4. (3)に(1)のにんじんを入れて中火にし、煮立ったら15分ほどゆで、じゃがいも、玉ねぎ、しらたき、豚もも薄切り肉を加える。
  5. 砂糖、本みりん、酒を加え、5分ほどしたらしょうゆを加え、さらに10分煮込んで完成。

【鶏もも肉のトマト煮】トマトと鶏肉でうまみの相乗効果

一般的なほろ苦ビールには、料理のうまみを強調する効果があると書いてあり、私にとっては目からウロコでした。そこでもう一つ、うまみのある食材を使った料理をご紹介します。

鶏肉は、食肉の中では淡白な食材です。しかし、意外にもうまみ成分のイノシン酸は、100g当たり150〜230mgと、豊富に含まれているのです(特定非営利活動法人うま味インフォメーションセンターホームページより)。

そこで、鶏肉料理をもっとおいしくするために、「うまみの相乗効果」というテクニックを使うことにしました。うまみ成分には、アミノ酸系うまみ成分の「グルタミン酸」と、核酸系うまみ成分の「イノシン酸」などがあります。このグルタミン酸とイノシン酸を混ぜ合わせると、うまみが大幅にアップするのです。これを、うまみの相乗効果といいます。

先ほどの肉じゃがを煮るときに使っただし汁は、昆布とかつお節で作りましたが、これもグルタミン酸が豊富な昆布と、イノシン酸が豊富なかつお節の組み合わせによる相乗効果なのです。

そこで、イノシン酸が豊富な鶏肉に、グルタミン酸が豊富な「トマト」を加えた料理「鶏もも肉のトマト煮」にしてみました。

<材料・2人分>
鶏もも肉 1枚
トマト水煮缶 1缶
酒 大さじ1
塩 小さじ1/2
こしょう 少々
オレガノ(粉) 少々
水 50cc
パセリ 少々

<作り方>

  1. 鶏もも肉を一口大に切る。
  2. 熱したフライパンに1を、皮のほうを下にして入れる。
  3. (2)にトマト水煮を加え、空いた缶詰の内側に水50ccを入れて回し洗いし、フライパンの中に加える。
  4. 酒と塩、こしょう、オレガノを加え煮立てる。15分程度でトマトが煮つまり、鶏肉に火が通ったら器に盛り、パセリを散らして完成。

※冷凍刻みパセリは過去の記事を参照してください。
余ったパセリは冷凍庫へ!簡単で便利な使い方【レシピ付き】

「ビールのペアリングがよくわかる本」には、ビールのペアリングの解説やテクニック、料理レシピなどが詳しく載っています(上の料理のレシピは載っていません)。書店などで目に止まったら、ぜひ手に取ってみてください。