こんにちは。食・栄養ライターの清原修志です。家庭向けの安くておいしくて簡単なオリジナル料理を中心にご紹介しています。今回は、かつお節とおぼろ昆布をトッピングするだけの、簡単オリジナル料理をご紹介します。夏はキッチンに立ってあまり火を使いたくないし、調理に時間をかけたくないもの。そこで、切るだけ、器に盛るだけの食材に、かつお節とおぼろ昆布を加えることで、イノシン酸とグルタミン酸の「うま味の相乗効果」で強いうま味が生まれ、サッパリしておいしい簡単料理にします。
「うま味の相乗効果」とは、複数のうま味物質を組み合わせると、一種類のうま味物質よりも数倍、数十倍のうま味効果が現れるという、日本の栄養学者が発見した効果のことです。

かつお節とおぼろ昆布の混ぜご飯

ご飯にかつお節1パックとおぼろ昆布一つかみとしょうゆを一たらしして混ぜ合わせたものです。かつお節としょうゆだけだと「猫まんま」ですが、おぼろ昆布も一緒に混ぜると、今までに味わったことのない味と食感です。ぜひ一度、お試しください。

かつおのタタキ・かつお節とおぼろ昆布添え

カットしたかつおのタタキを並べてめんつゆ(昆布つゆ系がオススメ)をかけ、その上にかつお節とおぼろ昆布をのせただけの料理です。ご存知の通り、かつお節はかつおを乾燥させたもの。

かつおの上にさらにかつお節をかけるなんて、意味不明かもしれませんが、かつおのタタキのうま味とかつお節のうま味では、同じうま味のはずなのに、不思議な相乗効果が生まれます。そこにおぼろ昆布が加わると、うま味の幅が広がるのです。

冷奴・かつお節とおぼろ昆布添え

カットした豆腐にしょうゆをたらし、かつお節とおぼろ昆布をのせただけです。豆腐は大豆製品だし、しょうゆは大豆を発酵させた調味料。相性が良いのは当たり前の定番組み合わせです。

かつお節をかけるのも定番ですが、おぼろ昆布を加えることで、いつもの冷奴がワンランクアップします。ぜひ、お試しください。

ところてん・かつお節とおぼろ昆布添え

ところてんを土佐酢(三杯酢にかつお節でとった出汁を加えたもの)で和え、かつお節とからしや青のりをかけるのは定番ですが、さらにおぼろ昆布も加えてみましょう。酸味・辛味・複数のうま味が相まって、ひんやりサッパリなのに、味わいが広がります。

干しエビ少々を加えても、香りとうま味が増しておいしいですよ。

いかがでしょう。夏は子どもたちも冷たい料理が好き。天然のうま味を覚える「食育」にもなると思います。ぜひ、お試しください。

かつお節のイノシン酸と昆布のグルタミン酸

先ほどから皆さんがご存知なことを前提にかつお節と昆布のうま味のことを語っておりますが、念のためにさらっと解説しておきます。

かつお節は先述の通り、かつおを乾燥させたものです。カットしてゆで(なまり節といいます)、燻製することで肉の中の水分を除去します(燻乾法といいます)。さらに表面にカビをつけ、カビが肉の中の水分をほぼ完全に吸い出すことで、かつお節は「世界一硬い食品」などともいわれるようになります。

水分がなくなったということは、かつおの肉のうま味「イノシン酸」が凝縮されているわけです。イノシン酸はかつおが死後熟成する際に自己消化で核酸(DNA)から生成されるものです。

昆布は、うま味物質のグルタミン酸が豊富に含まれている食品です。これも乾燥させることによりうま味がさらに凝縮されます。食品としても多用されますが、だしをとる食材として用いられます。グルタミン酸は昆布のほか、トマトやチーズなどにも豊富に含まれます。

グルタミン酸もイノシン酸も、少量の塩分と結びつくことで、うま味を強く発揮します。ちなみにうま味成分としてグルタミン酸ナトリウムを発見したのは、日本の化学者・池田菊苗(いけだ・きくなえ)です。1907年のことでした。ちなみにイノシン酸ナトリウムの発見は小玉新太郎、池田博士の高弟です。「うま味の相乗効果」の発見は国中明、彼も池田門下の研究者でした。

これらうま味のサイエンスについてわかりやすい本として、以前書いた記事「だしのうまみで野菜をたっぷりいただく!【レシピ付き】」のなかで、伏木亨さんの「だしの神秘」(朝日新書)をご紹介しています。おもしろい本ですよ。