イタリア在住フードライターの鈴木奈保子です。今回は日本人に1番なじみの深いパスタ、スパゲッティナポリタンについての話題です。4月29日はナポリタンの日です。昭和を代表する日本の洋食であることから、カゴメ株式会社が「昭和の日」に制定しました。
ところがパスタ料理の本家本元のイタリアには「ナポリタン」は存在しません。代わりに今回はトマト味でおすすめの「スパゲッティアマトリチャーナ」のレシピをご紹介します。

ナポリではスパゲッティナポリタンが食べられない!

日本では知らない人はいないであろう洋食料理の代表「スパゲッティナポリタン」。昭和の喫茶店、レストランのメニューには欠かせない定番パスタ料理です。まさに昭和に誕生したスパゲッティナポリタンの美味しさをアピールするため、トマトケチャップでおなじみのメーカー・カゴメ株式会社が「昭和の日」にちなみ、4月29日はナポリタンの日と制定しました。

スパゲッティナポリタンは、ナポリ風スパゲッティを意味します。日本では、ゆでておいた軟らかいスパゲッティを玉ねぎ、ピーマン、ウインナーやベーコンなどと一緒に炒め、トマトケチャップで炒め合わせたものです。この料理に欠かせない大事な材料は、トマトケチャップ。美味しいトマトケチャップが料理の味を決定する要です。

ところが、本家本元であろうナポリには数多くのパスタ料理があるものの、トマトケチャップで炒めるパスタ料理は全く存在しません。また、ナポリのパスタはデュラム小麦のアルデンテ。

ケチャップ味の軟らかいスパゲッティナポリタンは、日本にのみ存在する、正真正銘日本の料理なのです。

新鮮なトマトとグラニャーノが特徴的なナポリ風パスタ

ナポリでパスタというと、すぐに思い浮かぶのが新鮮なトマトです。ナポリは、スペインがアメリカ大陸を発見した直後の16世紀よりスペインの属領でした。そのため、早い時期から新大陸のトマトがナポリの港へと運ばれてきたのです。

しかも、夏の強い日差しと年間を通じて降雨量が少ない地中海性気候がトマト栽培に適していたため、古くからトマトの栽培が盛んにおこなわれてきました。

1800年代にはすでにトマト缶の製造まで始まっていたナポリでは、トマトは古くから食卓のおなじみの食材でした。逆に、アメリカ生まれのトマトケチャップは、イタリアでは最近まであまり普及していませんでした。

また、パスタの材料となる良質のデュラム小麦が多く栽培されていたのも、ナポリを中心とするイタリア南部です。ナポリ近郊にあるグラニャーノという山間の町は澄んだ水が豊富にあったため、たくさんの水車を作り、小麦を粉に挽くことができました。

そして、海の湿度を含んだ風も、パスタをゆっくりと乾かすのに適していました。グラニャーノでは、16世紀末から大手メーカーによる乾燥パスタの製造が始まり、18世紀にはパスタの町として全盛期を迎えました。

このためナポリでは、他の地域より早くからトマトソースのパスタを食べることができたのです。トマトソースのパスタのことを、ナポリ風パスタと呼ぶのはそのためです。

参考サイト:
独立行政法人農畜産業振興機構、調査情報部「イタリアのトマトの生産状況およびトマト加工品の生産輸出動向(前編)」

ナポリタン似のスパゲッティアマトリチャーナのレシピ

イタリアには、日本のスパゲッティナポリタンに似たパスタもあります。スパゲッティアマトリチャーナです。

<材料>(4人分)
・スパゲッティ 320グラム
・トマト水煮缶 400グラム
・パンチェッタ又はベーコン 100グラム
・タマネギ 小1個
・唐辛子 1本
・オリーブオイル 大さじ1
・塩、コショウ 適量
・ペコリーノチーズ(好みで)

<作り方>

  1. 大きな鍋にたっぷりの湯をわかす。
  2. 深めのフライパンにオリーブオイルと拍子切りにしたパンチェッタを入れて、カリカリになるまで2、3分炒める。
  3. 薄切りにしたタマネギと唐辛子も加え、さらに弱火で2、3分炒める。
  4. 水煮缶のトマトは、漉してペースト状、または角切りにしておく。
  5. 水煮トマトもフライパンへ加え、弱火で約15分くらい煮込む。味見をして塩、コショウを適量加える。
  6. お湯が湧いたら、塩とスパゲッティを加え、指示通りの時間ゆでる。
  7. スパゲッティがゆであがったら、トマトのソースに和える。
  8. 熱々のうちにお皿に移し、お好みでペコリーノチーズを上からかけていただきます。

スパゲッティアマトリチャーナは、日本のナポリタンのように手軽に手に入る安い材料でできます。今年のナポリタンの日は、ケチャップの入らないアマトリチャーナを作り、日本のナポリタンと味を比べてみるのはいかがでしょうか? おすすめのレシピです。ぜひお試しください。