最近、スーパーフードのビーツが注目されています。ボルシチの材料として有名ですが、楽しみ方はいろいろあるとか。ロシア出身で、日本との架け橋としてテレビのクッキング&トークショーなどで活躍しているユリア・ヴェッチノワさんに、ビーツの魅力を教えてもらいましょう。

赤紫の秘密はポリフェノール

ビーツは「飲む血液」と言われるほど栄養価が高い野菜です。濃い赤紫色をしていますが、これはベタシアニンというポリフェノールの一種が含まれているから。赤ワインの代わりにもなるスーパー野菜、それがビーツです。カルシウム、マグネシウム、カリウムといったミネラルや鉄分が豊富で、むくみの改善も期待できます。

ロシアにいた頃は、祖父がダーチャ(夏から秋にかけて過ごす別荘)の畑でビーツを栽培していました。ロシアではビーツの収穫は毎年9月頃。収穫したら保存して1年中使えるようにしています。

ビーツはボルシチ以外にも、いろいろな料理で使います。よくつくるのはサラダ。ロシアにはビーツを使った定番サラダが3つあります。1つはビーツとプルーン&くるみのサラダ。

2つ目はビネグレットという酸味をきかせたサラダ。ビーツだけ別のボウルに入れてひまわり油を混ぜておくと、ほかの食材にビーツの色が移らず、きれいな色のサラダになります。

3つ目は「毛皮のコートを着たニシン」という面白い名前のサラダです。ニシンの酢漬けと根菜類(にんじん・じゃがいも・ビーツ)、白身と黄身を分けた卵を順に層に重ね、層の間にはたっぷりマヨネーズを塗ります。

日本には、ゆでてレトルトにした商品がありますが、とても使いやすいですね。缶詰よりも味が濃厚で甘く、おいしい料理がつくれます。ビーツはホウレンソウの仲間なので、生だと独特の香りがありますが、加熱すると香りが抑えられ、ぐんと甘みが増します。

オレンジと相性が良いので、同じ形にカットして酸味のあるソースに合わせたり、ナッツ類、少し苦みのあるルッコラと合わせるのもおすすめです。

赤、緑、白、豆入り…バリエーション豊かなボルシチの世界

ビーツを使った料理で私が好きなのは、やはりボルシチです。

ロシアでは、ボルシチは家庭料理のひとつで、家によって味が違います。実は、基本的なレシピだけで40種類以上もあるんです。日本で知られているボルシチはクラシックなレシピで、ほかにも豆やザワークラウト、プルーンが入ったボルシチや、緑や白のボルシチ、サーロ(豚の脂身を塩漬けにしたもの)とにんにくたっぷりのウクライナ風ボルシチなど、さまざまな種類があります。

だし汁を取るために入れる肉は牛・豚・鶏で、羊肉は使いません。肉なしのベジタリアン・ボルシチも人気があります。夏は冷製ボルシチもおいしいですよ。ヨーグルトの白とビーツの赤が混ざり、ピンク色の可愛いボルシチになります。

ボルシチは本当に飽きない料理です。肉や野菜でだし汁を取った後、生じゃがいもとキャベツ、にんじん、炒めたたまねぎ、ビーツなどを加えてグツグツ煮込むのが基本のレシピで、このレシピにひと工夫すれば、毎日違うボルシチを楽しめます。

たとえば、ダイエットなどで軽いボルシチが食べたい時は、ポルチーニやしいたけなどのきのこ類でだし汁を取り、レッドキドニービーンズなど豆を使ったボルシチにすればヘルシーです。

家庭でボルシチを上手につくるコツは、ビーツを炒める前に、酢やレモン汁を加えて色止めをすること。酸味を加えないとビーツの色が落ちて、オレンジ色のボルシチになってしまうのでご注意を。隠し味に砂糖をプラスするのもおいしさの秘訣です。トマトを加えてビーツの甘さを調節するのもポイントです。

パスタや餃子入りにすれば、ボルシチだけでもお腹いっぱいになりますよ。私の故郷・ハバロフスクのボルシチは、すり下ろし器を使わないで、野菜を包丁で切るのが特徴。そのため野菜の食感が楽しめます。

「美容と食はつながっている」と気づき料理研究家の道へ

中学生の時に初めて日本語に接し、大学では第2外国語として勉強。3ヵ月間東京に短期留学して日本語を磨きました。

その後来日し、ハリウッド美容専門学校に2年間通い美容とエステの知識を習得。「食はとても大事」という先生のひと言で、美容と食はつながっていることに気づきました。そこで、ル・コルドン・ブルー東京校にも通い、料理の勉強を始めました。

卒業後はホテルのスパでエステティシャンとして働いていましたが「もっとクリエイティブな仕事がしたい」と一念発起し、料理研究家の道に進んだのが3年前。私をずっと成長させてくれる料理の仕事に、やりがいと楽しさを感じています。

3月23日には、私が出演したNHK教育テレビ「えいごであそぼ with Orton HELLOWORLD」のDVDが発売されました。ビーツの汁でピンク色にした大人気レシピ「桃クッキー」も収録されています。ぜひ、ご覧ください。

ビーツと豆腐のサラダ

海外で話題の「ビーツとヤギのチーズのサラダ」をもとに、日本でもつくりやすいようアレンジ。


<材料・2人分>
・「BABY BEETS」……………250g
・絹ごし豆腐…………………40g
・ベビーリーフ………………100g
・オリーブオイル……………小さじ1
・くるみ………………………30g
〔ドレッシング〕
・バルサミコ酢………………大さじ1
・はちみつ……………………小さじ2
・塩……………………………小さじ1/2
・こしょう……………………適量
・オリーブオイル……………大さじ2

<作り方>

  1. ボウルの中にバルサミコ酢、はちみつ、塩、こしょうを入れ、塩が溶けるまで混ぜる。オリーブオイルを少しずつ加え、均一になるまで混ぜ合わせる。
  2. ビーツの水気をキッチンペッパーなどで拭き、2cmほどの角切りにして、(1)のドレッシングであえる。豆腐は小さめに切り、くるみはフライパンで焼き色がつくまで炒める。
  3. 皿にベビーリーフを敷き、オリーブオイルをかける。(2)のビーツをのせ、豆腐とくるみを散らす。

ビーツのスーパースムージー

女性にうれしい栄養たっぷりのビーツ。ロシア人がよくつくるスムージーのレシピはいかが?


<材料・2人分>
・「BABY BEETS」……………250g
・バナナ………………………1本
・プレーンヨーグルト………150g
・はちみつ(またはメープルシロップ)…大さじ2
・レモン汁……………………大さじ1

<作り方>

  1. バナナは冷凍庫で凍らせる。ビーツは細かく切る。
  2. ミキサーに材料を入れて攪拌する。
  3. (2)のスムージーをグラスに注ぐ。
    ※ルクマパウダー(5g)をプラスするとさらに味わいが増します。

おいしいのは「ピンポン玉」サイズ

ビーツはテニスボールほどの大きさまで成長しますが、「BABY BEETS」は特においしいといわれるピンポン玉くらいの小さいサイズの真空パック。下ゆで処理済みなので、開封後すぐに使えます。レトルト加工をしているため、ビーツから出た天然の赤いジュースとおいしさをギュッと閉じこめています。着色料、調味料は一切不使用。

たべぷろでは過去にもビーツについてご紹介しています。

キレイな赤になった理由は?教授おすすめビーツのスープ【レシピ動画付き】

【プロフィール】
ユリア・ヴェッチノワ Yulia Vetchinova 1988年生まれ。ロシア・ハバロフスク出身。Creative Chef Japan主宰。ロシア国立人文教育大学で日本語と日本文化を学び、08年初来日。13年からはル・コルドン・ブルー東京校でフランス料理とパンを学ぶ。料理教室では年間1,500人にロシア料理と美食のレッスンを行う。

ユリア・ヴェッチノワさんの記事はこちら

◇百菜元気新聞の2018年4月1日号の記事を転載しました。