ビーツをご存じですか? 丸くて真っ赤な甜菜(てんさい)の一種、ボルシチの材料で欧米人が好きな、あの根菜です。このビーツに関して昨年10月、米「ニューヨークタイムズ」に日本人植物学者の研究(ウィスコンシン大学の前田宏研究室がミシガン大学およびケンブリッジ大学と共同で行った研究)が掲載され、話題になっています。

「ニューヨークタイムズ」のニュースで話題!米ウィスコンシン大学・前田宏教授インタビュー

希少なビーツの「赤」

野菜の赤い色で有名なのはアントシアニンですが、ビーツの赤は違います。アミノ酸の一種、チロシンが変換されたベタレインという色素なんです。このベタレイン色素は、限られた植物にしか存在しません。まずビーツ。そしてキヌア、サボテンの花の部分、ほうれん草(軸がビーツと同じ色合いですよね?)。

私たちは、これらの限られた野菜がなぜこんな変わった色をつくるようになったのかについて興味を持ち、研究を始めました。調べてみると材料となるチロシンのつくり方が他の植物と違うことが分かりました。とても効率が良い。

チロシンはすべての植物がつくっている物質ですが、普通はそれをたんぱく質の材料として使っています。けれど、ビーツなどの植物たちは大量につくった余剰分で赤い色素をつくっているのです。

自然界ではいろいろなことがランダムに起こります。そのほとんどは消えていきますが、たまたま環境に適応した場合、それが残る。ビーツやほうれん草の祖先が生きていた環境で、その変化が適していたのでしょう。

たとえば、花は蝶を引きつけて受粉してもらわなくてはならない。新しい赤色が他の植物にはなかったとしたらそれは魅力的です。「なんか見たことないけれどキレイだね」と思ったのではないでしょうか(笑)。

医薬品や食品への活用をめざして

いまは分子レベルでビーツがチロシンおよびベタレイン色素を効果的につくる理由を調べています。鍵となる遺伝子や酵素の働きが理解できれば、将来的には医薬品や食品への活用も考えられます。

ちなみに、ビーツから取った色素は長保ちしません。ビーツの色素で絵を描いて壁に貼っておくと、1カ月ほどでだんだん色が薄くなり、最後は消えてしまう。

それは良いことだと私は思います。化合物が安定的でないということは、分解の過程で活性酸素という身体には良くないものを除去してくれる可能性がある。ビーツを毎日食べることは健康につながると考えられます。

昔から「様々な色のある野菜を食べなさい」と言われますね。それはやはり、自然界の動物がそうして進化してきたから。私たちも毎日、いろいろな色の植物を食べます。植物はそれぞれ多様なファイトケミカルをつくっているので、それを取り込むことで私たちの身体がより良く機能するようにできていると考えられます。

色というのは、植物が持つ何千、何万というファイトケミカル中の数個のファイトケミカルですが、色を指標に私たちが食べる食材を選ぶことで、結果として何万という多くのファイトケミカルを取り込むことができる。そうした食生活が、結果として健康につながっていくのだと思います。

前田教授オススメ「ビーツレシピ」

ウィスコンシンで暮らして約10年になるという前田教授のお宅のビーツ定番メニューを教えてもらいました。

ビーツピンクのスープ

ビーツの甘さでやさしい味です。

写真後方のスープは、牛乳を加えないもの。色の違いを楽しみながらお好みを見つけて

<材料・4人分>
・「ベビービーツ」……………………1パック
・じゃがいも……………………………中3個
・コンソメ………………………………1個
・牛乳……………………………………お好みで
・塩・こしょう…………………………適量

<作り方>

  1. じゃがいもはゆでる。
  2. (1)とベビービーツをミキサーにかける。
  3. (2)を鍋で温めてコンソメ、塩・こしょうで味を調え、半量を皿に盛る。残った半量に牛乳を加えてひと煮立ちさせ皿に盛る。

ビーツとフェタチーズのサラダ

「フェタチーズがベストマッチ」ベタレインファミリーのキヌアも一緒に。

<材料・2人分>
・「ベビービーツ」…………………1個
・フェタチーズ………………………大さじ3
・キヌア………………………………10g
・レタス………………………………1/2個
A・塩・こしょう……………………適量
A・バルサミコ酢……………………大さじ1/2
A・オリーブオイル…………………大さじ1

<作り方>

  1. ビーツはスライスする。
  2. キヌアはゆでる。
  3. レタスはちぎり、皿に盛る。
  4. (1)とフェタチーズを(3)の上に乗せる。
  5. (2)とAを混ぜ、(4)の上に乗せる。
    ※フェタチーズが手に入らない場合は、カッテージチーズでもおいしい。

おいしいのは「ピンポン玉」サイズ

ビーツはテニスボールほどの大きさまで成長しますが、「BABY BEETS」(ニュージーランド・リーダーブランド社)は特においしいといわれるピンポン玉くらいの小さいサイズの真空パック。下ゆで処理済みなので、開封後すぐに使えます。皮をむいたり下ゆでして粗熱を取るなどの手間もかかりません。

ニュージーランド・リーダーブランド社の「BABY BEETS」

また、真空パック後にレトルト加工をしているため、ビーツから出た天然の赤いジュースとおいしさをギュッと閉じこめています。着色料、調味料は一切不使用。

動画もぜひご覧ください

◇百菜元気新聞の2018年3月1日号の記事を転載しました。