おせちは毎年自家製だけど作るのは自分が好きな料理だけという京都出身の調味料研究家・松本葉子です。さて、おせちに使われることが多い八幡巻(やわたまき)。そのルーツが京都にあるということをご存知でしょうか?
今回は京都の郷土料理である八幡巻を紹介するとともに、簡易バージョンの八幡巻レシピもつけてみます。京都の食文化から生まれた食べ方・八幡巻を楽しんでみませんか?

正統派の八幡巻は川魚専門店で買うのが正解

八幡巻の「八幡」とは、実は京都の南部にある八幡市(昔は八幡町)のこと。

古来、石清水八幡宮の傍を流れる放生川の土をあげて栽培したごぼうは味が良いことで知られ、八幡の特産品でした。このごぼうに同じく地どれの川魚である鰻やどじょうを巻き付けて作った料理が八幡巻なのです。

淡水魚をよく食べる京都や滋賀には魚屋とは別に川魚屋がありますが、川魚屋では八幡巻を製造販売しているところも多いのです。

生の鰻を割いてごぼうに巻き付けて炭火で焼いて…という八幡巻は家庭で作るにはかなりハードルが高い料理なので、普通は専門店で買ってきます。

トップと下の写真は錦市場の川魚店『のとよ』の八幡巻。おせちの八幡巻は『のとよ』のものでないとダメという人も多い名店です。

炭火で焼き上げた鰻のうま味が香り高く歯ごたえの良いごぼうと絶妙の相性。1本1700円と値段は張りますが、それも納得のおいしさです。注文ごとに竹の皮に包んでタレもつけてくれます。

おうちで八幡巻を作るなら鰻の代わりに牛肉で

鰻の代わりに穴子が使われていることもある八幡巻ですが、家庭で作るなら牛肉を用いるのが簡単でおすすめです。

<材料>
牛肉薄切り 300g
細めのごぼう 3~4本(200gくらい)


・醤油 大さじ3
・味醂 大さじ3
・酒  大さじ6 (このうち大さじ3をだし汁に代えてもOK)
*醤油、味醂、酒は1:1:2の割合

米のとぎ汁 3カップ程度
薄味をつけただし汁 2カップ程度
小麦粉 適宜
サラダ油 適宜

<作り方>

  1. ごぼうは皮を包丁でこそげて15㎝程度の長さに切り水につけておく。(ごぼうが太い時は縦割りにして細くする)
  2. 米のとぎ汁でごぼうを茹でてから水洗いした後、だし汁で煮て、八幡巻を作る本数分に分けておく。
  3. 牛肉を作る本数分にわけ、1本分の牛肉を広げて小麦粉を茶こしで軽くふってからごぼうを巻く。(ゆるみがないように巻くこと)
  4. 巻き終わったらラップに包んで握り、ごぼうに肉をなじませる。
  5. フライパンにサラダオイルを熱して、ラップをはずした4を巻き終わりの部分を下にして入れて焼き始め、転がしながら焼き色がつくまで焼く。
  6. Aを合わせてフライパンに加えてからめるようにしながら煮て、照りをつける。
  7. 適当な長さに切り分けて盛りつける。

実は超手抜きでもおいしく作れてしまうのが八幡巻

上に牛肉で作る八幡巻の作り方を書きましたが、実はわたしは普段はもっともっと手を抜いていたりします。

  1. ごぼうの皮はむかず、よく洗うだけ。(皮に風味もポリフェノールも含まれてるしね)
  2. 新ごぼうなら細めに切って水にさらすだけで生のまま使う。硬いごぼうなら、100ccくらいの酒を加えて水分がなくなるまで炒って使う。
  3. 小麦粉をふらずぎゅっぎゅっと巻いていくだけ。
  4. 酒を加えて3分→味醂を加えて5分→醤油 と時差で加えて煮汁を煮詰めていく。

それでもちゃんと出来上がるのが八幡巻のうれしいところ。粉山椒がよく合いますが、溶きがらしもいけますよ。

ところで八幡巻を作る時にひとつだけこだわって欲しいことがあります。
それは「巻き込むのはごぼうだけ」ということ。確かに人参やインゲンなどを巻き込めば彩りも美しく見栄えがします。けれどそれは「野菜の牛肉巻き」であって八幡巻からは離れすぎてしまう…。

のどかで豊かな里であっただろう、いにしえの八幡に思いをはせて、京都発祥のごぼうのおいしい食べ方として八幡巻を楽しんでもらえるといいなと思います。


味がしっかりついていて作り置きもできる八幡巻は、おせちはもちろん、普段の献立、酒肴やお弁当のおかずとしても大活躍。

栄養的にもバランスが良いので、ぜひレパートリーに取り入れてみてくださいね。