加工食品メーカー各社が主催する小中学生を対象にした「出前授業」が人気だ。希望校に社員や専門家を派遣し、食事の大切さや楽しさを分かりやすく解説する。教室は子どもたちの笑顔であふれ、笑い声が絶えない「食育の場」へと急変する。少子高齢化の進行と人口減少社会の到来は食品業界に暗い影を落とすが、先人の知恵や技術に裏打ちされた食のバトンを次世代につなぐ取組みとして注目されている。

味の素社は「だし・うま味の味覚教室」を開催する。オリジナルテキストで味覚の基礎を学び、和食のだしの役割について理解を深めてもらう。だしの材料となる昆布や鰹節の観察や試飲も行い、食への関心を喚起する食育プログラムだ。

日本水産は、社員や水産業に関わる専門家を小学校に派遣。魚の養殖や調理方法、EPA・DHAなど魚の持つ効能についての講義を行う。「魚食普及」の取組みとして海岸や海洋施設での体験学習にも力を注ぎ、海とさかな自由研究・作品コンクールへも協賛する。

日本ハムはNPO法人と連携し、出前によるウインナーの手作り体験教室を実施する。肉とスパイスを混ぜて羊腸に詰め、ボイル加熱後フライパンで焼く本格的なスタイルだ。食事の大切さや食べ物の役割を丁寧に解説し、朝食を取ることの重要性を伝える。

明治は小中学生向けに牛乳、ヨーグルト、カカオ・チョコレートなどの各カテゴリーで食育セミナーを開催。講師は開催地域の社員が担い、目的に応じて複数のカリキュラムを選ぶことができる。「運動と食事教室」「うがい・手あらい教室」では、健康教育にも取り組む。

「スナックスクール」を運営するカルビーは、おやつを通じて正しい食習慣と適切な食品を選ぶ自己管理能力の醸成を図る。1日のおやつの目安となる量や食べる時間について学習し、心をリラックスさせる“おやつコミュニケーション”の重要性を説く。

ハウス食品グループは、カレーやスパイスなどをテーマに出張授業を行う。人気メニューのカレーや身近なスパイスを通して、世界とのつながりや異文化に対する興味・関心を深めることが狙い。スパイスから作るオリジナルカレーの調理実習も人気だ。

キユーピーの「マヨネーズ教室」は、年間約400回行われる人気の授業。マヨネーズの原料や乳化の仕組み、容器の工夫などを学ぶ。野菜スティックで手作りマヨネーズを味わう機会を設け、野菜嫌いの克服プログラムとしても注目される。

「しょうゆ塾」は、社員がふんする博士とアシスタントが楽しく学習を進めるキッコーマンの食育活動。食べ物の大切さや食事の重要性について考える機会を提供。取組みは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を盛り上げる「東京2020参画プログラム」にも認定された。

マルコメは社内認定資格「味噌アンバサダー」の資格を持つ社員を派遣し、味噌の食べ比べや味噌汁作りなど体験型のワークショップを開催する。オリジナル教材で味噌の味や色、香りの違いなどについて講義し、発酵食品の魅力を訴求する。

各メーカーとも企業色を極力控え、授業内容は非常に分かりやすい。共通するのは、食の未来を紡ぐ子どもたちへの思い。CSR活動の一環として無料で開催することが多く、実施件数は年々増えている。

◇日本食糧新聞の2017年12月18日号の記事を転載しました。