最近は手軽にたくさんの種類のお味噌が購入できるようになりました。デパートの味噌売り場で商品を手にとって悩んでいらっしゃる方、よくお見かけします。お味噌汁は毎日の食卓に欠かせませんので、美味しいお気に入りのお味噌に出会えると、本当に嬉しいですよね!
お味噌の造り方は、地域ごとにさまざまです。「標準的な造り方」というのはありません。お味噌の味は、基本の材料の「大豆・米や麦(麹)・塩」のバランスや、素材の持ち味、製造の工程、土地の気候、また麹となる米の精米具合によっても、大きく味が変わります。

甘い味噌、辛い味噌

甘口のお味噌と辛口のお味噌の違いって何?と、ときおり尋ねられます。お味噌の甘さは、大まかには麹(こうじ)の量で決まります。麹が多ければ甘口、麹が少なければ辛口になります。九州ではデパート、スーパー、道の駅の産直などで、さまざまなお味噌が販売されていますが、麹の多い甘口が一般的です。

お味噌の麹の量を示すのに「割(わり)・歩(ぶ)」という単位を使います。東北では辛口のお味噌がよくみられます。東北の多くのお味噌は麹が少ないのです。たとえば「五歩味噌」と言うと、大豆に対して半分の量の麹を使っているという意味です。

九州甘口味噌は、だいたい「15~18割」の味噌が多いです。大豆に対して1.5~1.8倍の麹を使っているという意味です。九州では甘口を好む人が多く、麹の多いお味噌は贅沢な高級品とされています。20割を超すとパッケージに「贅沢なお味噌〇〇割麹」とよく書いてあります。

ちなみに…パッケージの裏側に米としか書いていないんだけど、麹は入ってるの?と心配される方がいらっしゃいます。「お米に麹の菌をまいて、米麹にしてから入れます」お味噌に麹は欠かせませんので、ご安心を。

風土によって異なる、お味噌を楽しむ喜びを

学生時代の友人と会っておしゃべりしていると今でも、「こおこちゃんのお味噌汁、美味しかったね〜」と私のお味噌汁のことをよく話題にしてくれます。私は関西の学校に通っていました。福岡出身の私の味噌汁は、関西の友人たちには珍しい味だったようです。

そのころ、大阪や和歌山、京都、福井、兵庫とあちこちでかけ、味噌料理をたくさん楽しみました。友人のご実家におじゃますることもありました。その土地のお味噌汁を食べ、食卓を囲んで郷土料理の話をすることはとてもワクワクしました。友人たちを部屋に招き、お料理することもよくありました。「美味しい」の一言が、なによりも料理を作る喜びを教えてくれました。

我が家の味噌は、30割麹の麦味噌と、20割麹の米味噌を、味噌汁の具材や料理に合わせて使いわけています。慣れ親しんだ香りよい甘口のお味噌は、私の元気の源です。もともとは祖母が、家族や嫁ぎ先だった開業医の入院患者さんのために工夫して造っていた家庭のお味噌です。

今も当時のレシピを基本に、材料を厳選し職人に造っていただいています。美味しいお味噌造りはとても奥が深く、材料だけでなく風土によって醗酵具合が変化し、味も大きく変わってきます。

全国のお味噌を手軽に楽しめる一方、郷土の味噌の特徴がわからないという人も増えて来ています。郷土の味をもう一度見直して、それぞれの町の味噌自慢が出来るよう、美味しさを引き継いで欲しいなと思います。

ひとくちに九州の味噌といっても、麹の割合はもちろん造り方によって味はさまざまです。また、九州や瀬戸内は、麦味噌や合わせ味噌の愛される地域です。その芳醇な香りは、個性的な郷土料理で生かされています。

九州にお越しの際は、それぞれの地域の個性豊かな味噌料理を味わってみてください。

「日本らしい丁寧な暮らしと食べ方」をお届けします

初めまして!調香生子です。「しらべ・こおこ」と読みます。
日課にしていることは、朝ごはんを丁寧に作ることです。毎日続けることこそ、家庭料理を紹介する中でとても大切だと感じています。私の朝ごはんは、ほとんどが和食です。だしの香りに、ふくよかで豊かなお味噌の風味が、朝一番の幸せです。

この連載コラムのテーマは、「日本らしい丁寧な暮らし」です。お台所中心の日々の暮らしで気づくこと、家庭料理の美味しさや楽しさ、レシピ、祖母の教えてくれた健やかな生活のちょっとした知恵などについて触れていければと思います。