大阪で人気に火が付き、東京でもブームを巻き起こしている「スパイスカレー」。しかし、スパイスカレーとは、何か。そもそもカレー自体、各種スパイスを使う料理であり、その語義通りに捉えると、何をもってスパイスカレーというのか、イメージがしづらいかもしれない。実際、スパイスカレーがどんなものを指すか、きちんとした定義づけはまだされていないのが実情だろう。
それでも今回、名店と評される複数のスパイスカレー店への取材を試みた中、共通項として見えてきたのが、「店独自のスパイス配合」と「ニッポンのカレーを感じさせるうま味」、そして「オリジナリティーある盛り付け」だ。また、「小麦粉フリー」の特徴を掲げる店も多かった。そう、スパイスカレーとは、いうなれば「店の個性と美学を前面に打ち出したカレー」なのだ。「スパイスカレー」とその美学に迫った。

注文後にスパイスを炒ってブレンド

<スパイシーチキンカレー定食 900円(税込み)>

同店では、注文を受けてからホール状のスパイスを炒り、カレーに加えて提供。「スパイスは直前で炒った方が、よい香りが立ちますから。香りを食べるカレーライス、というのがうちのカレーのコンセプト」と、梶田店長。

ベースのカレーは、玉ネギ、緑黄色野菜、鶏がら、鰹節、昆布だしを合わせ、花椒で麻辣味を加えている。華やかな盛り付けは、「各種の野菜料理をたっぷりとワンプレートで盛り付けたら、意図せず見栄えのする一皿になった」と、梶田店長は話す。

◎店舗情報
「スパイスカレー 青藍」
所在地=東京都杉並区高円寺北2-41-15
創業=2017年11月
営業時間=11時30分~14時、18時~20時
席数=13席
1日の販売食数=90~100食(カレーメニュー全体)

美的センス必須のトライアングル盛り

<プレーンカリー3種盛り 1,200円(税込み)>

深夜までカレーが楽しめる「ドリンクとつまみが楽しめるカレーBAR」。飲みに来店するお客も、9割以上がカレーを注文するという。

店でスパイスを配合し、地鶏とソテーした玉ネギを使った欧風の「チキンカリー」、鶏ひき肉を使いスパイスを利かせた「キーマカリー」、甘エビの頭でだしをとった香ばしさが魅力の「海老カリー」の3種類のカレーを提供。盛り付けが印象的だが、店主いわく「2本のしゃもじを使い、正三角形に仕上げている。意外とセンスが必要なんですよ」。

◎店舗情報
「CURRY BAR シューベル」
所在地=東京都杉並区西荻南1-23-11 日興パレス西荻窪PARTII 1階
創業=2014年3月
営業時間=19時~翌2時、土18時~翌2時、日祝12時~16時、18時~22時
席数=10席
1日の販売食数=「プレーンカリー3種盛り」は10~15食

薬効が期待できる健康スパイスカレー

<2種の合いがけ薬膳カレー(普通盛り) 1,300円(税抜き)>

「胃腸を整えるカレー」を追求し、油脂は極力使わず、小麦粉不使用、17種類以上のハーブとスパイスを配合。砂糖は加えず、玉ネギ、トマト、ショウガ、ニンニクを炒めてうま味と甘味を付け、昆布、チキン、ナツメ、クコの実、ショウガなどを煮込んだ薬膳スープをベースにした4種類のカレーを提供している。

ハーブとスパイスの薬効を前面に打ち出しているが、味わいは“薬膳”の持つ薬のイメージからほど遠く、スパイス感が強いやみつき系だ。

◎店舗情報
「麻布十番薬膳カレー」(夜は「Dining BAR Hidden Lounge」)
所在地=東京都港区東麻布3-8-9 東麻布ビル地下1階
創業=2016年3月
営業時間=11時30分~14時30分、18時~翌1時、金土11時30分~14時30分、18時~翌4時
席数=18席
1日の販売食数=50~60食(カレーメニュー全体)内「2種の合いがけ薬膳カレー」は20~30食

具材にタブーなしの自由な創作キーマ

<ぜんかけカレー 1,350円(税込み)>

カルダモンの香りを利かせ、ブラックペッパーとカスリメティをパラリとかけて仕上げた3種類のキーマカレーを用意している。メニューは月替わりで変えており、「うちのカレーは何でもありの自由なカレー。使う具材にもタブーはない」と、調理スタッフの西嶋氏は言う。

取材当日のメニューを見ても、鶏軟骨やイカ、タケノコ、揚げナスを使ったり、煮干し、トマトで味をアレンジするなど、ユニークだ。キーマカレーを味わった後は、鶏がらベースに和風だしを加え、スパイスを利かせた「ヤムカレースープ」をかけ、スープカレーに味変して、楽しめる。

◎店舗情報
「旧ヤム邸 シモキタ荘」
所在地=東京都世田谷区代沢5-29-9 ナイスビル1階
創業=2017年7月
営業時間=11時30分~15時、18時~22 時、土日祝11時30分~15時30分、17時30分~22時
席数=14席

スリランカの日常食をイメージ

<スリランカプレート 1,100円(税込み)>

スパイスカレーブームは、もとは「スリランカカレー」がルーツといわれている。同店のカレーは、スリランカカレーを日本人向きにアレンジ。ココナツミルクを使用したまろやかなタイプから、スパイスの利いたタイプまで、味が異なる13種類のカレーをすべて手作りで提供している。

「スリランカカレーでハズせないのは、レンズ豆のカレーですね」と奥原店長。各種副菜がワンプレートで盛られており、「途中から混ぜて食べると、複雑なおいしさが楽しめます」(奥原店長)。

◎店舗情報
「ポンガラカレー 赤坂アークヒルズ店」
所在地=東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル3階
創業=2018年9月
営業時間=11時~23時、土日祝11時~22時
席数=27席

三日月に盛り付けた“映えるカレー”

<スパイシーチキンカリィ 1,100円(税込み)>

北海道のスープカレー店「Rojiura Curry SAMURAI」の姉妹店で、「野菜を食べるルウカレー」を提供。鶏がらと香味野菜のスープをベースに、クミンの香りを中心に自家焙煎したスパイスをブレンドした。スパイスの香りが個性的だが、味わいはまろやか。素揚げ野菜と福神漬けの役割を果たす各種副菜の彩りがよい。

「野菜がたっぷり取れて、映えるカレーにしたかった」と、出川店長。赤・緑・黄色と色バランスよく副菜を付け合わせ、店名にちなんで三日月形に盛り付けている。

◎店舗情報
「三日月カリィ SAMURAI. 下北沢店」
所在地=東京都世田谷区北沢3-34-2
創業=2017年12月
営業時間=11時30分~15時30分、17時30分~22時30分
席数=17席
1日の販売食数=「スパイシーチキンカリィ」は30~40食

◇外食レストラン新聞の2019年7月1日号の記事を転載しました。