富士山を見るたびに「やっぱり静岡っていいよなあ」と実感している、静岡県在住の元祖農業ガール・藤野いち子です。今回は静岡の名産品のひとつ「わさび漬け」をご紹介します。静岡のわさび栽培は江戸時代から行われており、静岡駅のお土産コーナーでもさまざまな加工品が販売されています。わさびの歴史をひも解きながら、わさび栽培発祥の地・静岡市有東木(うとうぎ)で教えていただいたレシピを参考に、静岡県民の愛するご飯の友、わさび漬けの作り方をご紹介したいと思います。

わさび発祥の地・静岡市葵区有東木 400年の歴史は徳川家康が発端

皆さんは、旅行や出張のときに静岡に立ち寄られたことはあるでしょうか。静岡駅構内で幕の内弁当を買うと、ほぼ指定席のように「わさび漬け」が入っています。ちょっと苦手だな~と思っている方も、大好きだ!という方もいらっしゃるでしょう。鼻にツーンときて、ちょこっと涙ぐみながら味わう上品な風味は、大人だから良さが分かるものだと思います。

「天城越え」で知られる伊豆天城は、わさびの産地としても全国的に有名です。静岡県民の私も「天城がわさびの発祥の地なのかな?」と思っていたら、違いました。わさび栽培発祥の地は静岡市の山間部にある有東木という場所です。

わさび栽培は今から400年前、有東木沢の源流にある山葵山に自生していたものを、村人が町内の井戸頭という遊水地に植えたのが始まりだそう。当時、駿府城にいた徳川家康に 献上したところたいそう気に入られて、わさびの葉っぱが葵の形であることなどもあり、珍重されたということです。

有東木は静岡市街地から30kmの山間部。周辺は温泉も多く、自然が豊かなところです。車で安倍川沿いの細い道をひたすら上っていきます。川にはつり橋もかかっていて、猿を見かけはしましたが人とはほとんどすれ違いません。

多少不安になりながらも「有東木」の案内を頼りに急坂を上り、わさび田と茶畑と隣を流れる清流を見ながらたどり着いたのが、地元の方が運営する「うつろぎ」でした。うつろぎの外に出された看板に「こんな遠くまで来てくれてありがとう」と書いてあり、心があったかくなりました。

「うつろぎ」では、わさび加工品の販売、食事の提供のほか「わさび漬け作り体験」もできます(要予約)。車でなければなかなか行けない場所ですが、地元のお母さんたちとのおしゃべりが楽しい場所でもありますので、興味のある方は訪れてみるとよいでしょう。

材料は意外にシンプル!静岡のわさび漬けレシピ

今回は「うつろぎ」で教えていただいたレシピを参考に、わが家で再現したわさび漬けのレシピを紹介したいと思います。

<材料・分量>
わさびの茎(根がついているもの)  1束(200g)
塩  少々
酒粕  100g
砂糖  20g
塩麹  10g

<作り方>
1.わさびの茎は一本ずつ取り、根元まできれいに洗っておきます。

2.わさびの茎は細かく刻みます。わさびの根の部分は、黒い部分を取り除いてみじん切りにします。

3.わさびの茎と根に塩をふり、ガーゼなどで包み絞り、なるべく水分を切ります。

4.酒粕・砂糖・塩麹をすり鉢などでよく混ぜておきます。そこに(3)のわさびの茎と根を混ぜます。

5.フタのついた容器に入れて、わさび漬けの完成です。保存は冷蔵庫に入れて、早めに召し上がってください。

ちょっと大きめのスーパーや農協の直売所などでわさびの茎を販売していたら、ぜひ買い求めてください。安価でおいしいご飯の友「わさび漬け」が上記のように簡単に作れてしまいますよ。

そのままご飯にのせてしょうゆを垂らしていただくのが王道ですが、ちくわや蒲鉾に添えていただいてもおいしいです。いろいろな組み合わせで試していただければ、もっとおいしい食べ方が発見できるかもしれません。

「わさび漬け食べたことがない」という方は、まず味わってみて

「そもそも、生まれてこの方、わさび漬けは食べたことがないんですよ」という方もいらっしゃるかもしれません。一度味わえばおいしさがわかりますし、手作りするときの参考にもなりますね。

静岡駅から徒歩5分程度、静岡市葵区紺屋町にわさび漬けで有名な「田丸屋本店」がありますので、静岡にお越しの際にはぜひ立ち寄られるとよいでしょう(静岡駅ビル・パルシェ内にもテナントがあります)。

わさび漬けの良さは、私も若いころは分かりませんでしたが、最近はわさび漬けをつまみに冷やの日本酒を飲みたいなーっと思ってしまいます。味覚に刺激を求める大人になったということなのでしょうか。エレガントに日本酒を楽しめる大人になっているのならいいのですが・・・。

ということで、今回はわさび漬けを紹介しましたが、わさびみそやしょうゆ漬けも本当においしいご飯の友です。また次の機会にご紹介できればと思います。