イタリア在住フードライター鈴木奈保子です。新年の最初の朝を祝う日本と違い、筆者の住むイタリアでは、1年の最後の夜、新年になる瞬間を盛大に祝います。今回は大みそかの夜、年越しの縁起物として欠かせない食べ物、レンズ豆の食べ方をご紹介します。

年を越すために欠かせない大みそかの主役レンズ豆

厳かな除夜の鐘とともに静かに新年を迎える日本とは対照的に、イタリアでは、大みそかの夜は、家族や友人などの大切な人たちと大勢でディナーパーティをして新しい年を一緒に迎える習慣があります。

カウントダウンとともにイタリア中で盛大に花火が打ち上げられる中、スプマンテで乾杯をして新年をお祝いします。

日本の元旦の食事のように、オードブルから始まって豪勢な食事を楽しむ大みそかのディナーを食べた後、もう少しで真夜中という頃に必ず運ばれてくるのがレンズ豆の料理です。

言ってみれば日本の年越しそばのようなものですが、のどごしの良いお蕎麦とは全く別物です。大晦日のレンズ豆の食べ方は、コテキーノまたはザンポーネというソーセージと一緒に煮込みます。これだけでも十分メインの一皿になりうるボリュームたっぷりの美味しいご馳走です。

散々、ご馳走を食べた後のお腹にはかなり厳しい料理ですが、イタリアでは、レンズ豆を食べないと新年を迎えられません。一口だけでもいいから、と頑張ってでも口に運ばなければならない縁起ものです。

古い縁起を頑なに守る!意外と迷信深いイタリア人

どうして大みそかにレンズ豆を食べなければいけないかというと、その丸くて平たい形がコインのようだからです。大みそかにたくさんのレンズ豆を食べると、翌年はたくさんのお金を得ることができるという古い言い伝えがあって、イタリア人にとってレンズ豆は実り多い豊かな1年を予見してくれる食べ物なのです。

豆類自体が再生のシンボルであることも、新年にレンズ豆を食べる理由の一つです。豆は、蒔くと芽が成長したあと豆に戻るように、1年が終わってまた全く新しい年が始まる、という再生の象徴です。

レンズ豆と一緒に食べるソーセージも、脂肪分がたっぷりの豚肉が豊かさを象徴する、大みそかのお楽しみです。その昔、庶民はめったに口にすることができなかった時代の風習です。

大晦日だけでなく毎日食べたい栄養満点なレンズ豆

縁起が良いだけではなく、レンズ豆は良質なたんぱく質、繊維を始め、レクチン、カリウム、ビタミンB1、鉄分などミネラルが豊富に含まれている栄養たっぷりな食べ物です。お肉がわりの栄養源として、古代から栽培されてきたという長い歴史があります。

調理の前に水に浸す必要がなく、手軽に調理できる便利なレンズ豆。イタリアでは、寒い冬には煮込んでスープにして、短くしたパスタを入れて食べたり、夏にはさっぱりとサラダにしていただきます。優しい味わいなので、豆類が苦手な方でもぜひ試してほしい料理です。

大みそかにはレンズ豆を食べて、ぜひ来年も、元気で実り多い1年を過ごしてくださいね。