エームサービスは1月24日~2月16日にかけて、米国・マサチューセッツ州ボストンと、カナダ・オンタリオ州トロントで、日本食・食文化の普及活動を行った。農林水産省が進める北米での食文化発信事業の一環。
同社は日本からシェフを派遣し、株主である米国の給食事業大手アラマーク社のシェフを対象にしたセミナーと、現地企業の従業員や学生利用者を対象にしたフェアを実施。世界的ブームが続く日本食の正しい理解と認知拡大を目指し、企業食堂・学生食堂からバラエティー豊かな家庭の味を発信した。

現地で醤油、味噌、みりん、酢、塩麹などの使用方法を伝授

「両国で日本食はブームだが、イメージされるのは割烹料理・寿司・ラーメン。一方で、現地のシェフからは日本食の調理法を基礎から学ぶ機会が少ないのが現状」と、今回の派遣事業に携わった石田俊也IDSセンター長は語る。

ボストンでは日本の有名ラーメン店が進出し行列ができ、大学の学生食堂ではケータリングの寿司が提供されるところもある。しかし、そうしたメニュー以外では高級料理だけという印象が強い。

そこで、同社は高野誠同センター運営企画室室長、坂本拓也プロダクションスーパーバイザー、森谷貴之調理長の3人のシェフを派遣。事前に日本食メニュー20品を用意するとともに、現地で醤油、味噌、みりん、酢、塩麹といった基礎調味料の使用方法を伝授した。

かき揚げやエビの照り焼きなどが人気

実際に現地シェフ40人に研修を行った高野室長は、「シンプルな調味料をどのように使うかを初めて習い、驚くシェフが多かった」と振り返る。
普段北米で食べられる料理は、クリームシチューのようにソースと具材を一緒に食べきるスタイルが主流で、日本の煮物のように味付けのために調味料を使うことになじみがない。

今回「日本の家庭で食べられている料理」を知ることで、セミナー後アンケートでは、「継続的に日本の調味料を活用したい」「メニューの汎用(はんよう)性の高さから親近感が湧いた」などの回答が寄せられた。

企業食堂・学生食堂での日本食フェアでは、セミナーを受講したシェフを中心に日本食メニューを提供。かき揚げやエビの照り焼きなどが人気だったが、茶わん蒸しに親しみがないなど、新たな発見もあった。ボストンでは、武田薬品工業の現地法人や1日約1万食が提供される市内の大学で、トロントではウィルフレッド大学や企業食堂など全6会場で実施された。

アラマーク社の調べによると、北米では学生が進学先の大学の条件として、「友人らと頻繁に集まれる場所」(hangout)の充実が選択肢の一つとなっている。中でも「食事へのアクセス」について、78%が「重視する」と答えており、60%がヘルシーなメニューの充実を望んでいる。

◇日本食糧新聞の2017年4月10日号の記事を転載しました。