居酒屋以外の業態で、“ちょい飲み”需要の取り込みを進める例が急増している。「あまりお金をかけず、ライトに飲みたい」と考える層が増えている最近の風潮をにらみ、新たな客層の掘り起こしにつなげたい狙いだ。ちょい飲み客の多くは、店の滞在時間が短めで回転が早い。つまみも、凝った料理を新たに考案する必要はなく、シンプルな料理でもお客の満足感は高い。店にとっては参入しやすい好条件揃いだ。そこで、今号では中華・ラーメン店のちょい飲み事情に着目した。

気軽で安くておいしいおつまみ【リンガーハット ちゃんぽん酒場 浅草駅前店】

長崎ちゃんぽんで知られる「リンガーハット」が既存店舗を活用した大衆酒場「ちゃんぽん酒場」を都内で2店舗実施し、好調だ。ちゃんぽん酒場はもともと、ランチタイムや大人数客の来店時にしか活用されていなかった2階席の稼働率を上げるべくスタートした試みだ。1階席はリンガーハットの通常店舗として営業しながら、2階席をちゃんぽん酒場として、夕方4時から開店している。

「リンガーハットは1人客や家族客が主流ですが、ちゃんぽん酒場は2~3人連れや、大人数のサラリーマングループ客が多いですね。どこかで飲んだ後の二次会利用も目立ちます」と、店長の岩本智寿氏。子ども連れの家族が複数組で来店する例も多く、「たまには飲みに行きたいが、子連れグループでは居酒屋は入りづらい」と考える層からの支持も高いという。

〆のちゃんぽん、〆の雑炊 各500円(税抜き)リンガーハットおなじみの「長崎ちゃんぽん」ではなく、飲酒の締め向けに朝食メニューのあっさり塩味、梅干入りの「朝ちゃんぽん」を提供
バチ割り焼酎 890円(税抜き)鉢に焼酎と氷、レモンを浮かべ、しゃくしで取り分けて飲む。焼酎ロック約4杯分。グループ客向きのようだが、50~60代の地元常連1人客の注文が多い、というから意外

大衆酒場ならではの活気と有名チェーンの安心感がお客を呼び込み、オープンから約2年が経過した現在も売上げは好調。月平均で前年比110~140%と推移している。

ちゃんぽん酒場では、独自メニューを提供している。つまみの価格は「500円以下」に設定。「1階の通常店舗で仕入れる食材を使ったつまみ」を中心にメニュー展開することで、コストを極力抑えている。

「特別な食材を使う凝った料理は、ちゃんぽん酒場では求められていません。気軽でおいしいおつまみの方が、お客さまに満足していただけます」と、岩本店長は語る。

【店舗概要】
所在地=東京都台東区花川戸1-2-5 浅草KSビル
営業時間=11:00~23:00
席数=カウンター5席、テーブル20席
ちょい飲み平均客数=平日15組40人、休日7組15人
ちょい飲み平均客単価=2,000円

軽く日本酒を飲み、締めのラーメンを楽しむ【一風堂 浜松町スタンド】

「白丸」「赤丸」で知られる豚骨ラーメン店「一風堂」が、“日本酒もラーメンも楽しむ新しいスタイル”のちょい飲み店を展開している。

「海外の一風堂では、お酒を2時間ぐらいゆっくり楽しみ、最後にメーンディッシュとしてラーメンを食べる“ラーメンダイニング”のスタイルが定着しています。そんな海外の事情をヒントにしました」と、同店を展開する力の源ホールディングスの広報・原智彦氏。コンセプトは、“ウエイティングバーと日本の角打ちの融合”だ。ラーメンを食べる前に軽く飲むウエイティングバーと、気軽に立ち寄れる角打ちをイメージしている。

いろいろ少しずつ気軽に楽しめるように、つまみはポーション少なめの安価で提供。ラーメン丼を模した盃が楽しい

おつまみメニューは、「手早く作れ、さっと提供できる」「どこかにラーメン店らしさが感じられる」点を重視して開発。それに加えて、「楽しさ、驚きがあり、思わずニヤリとしてしまう料理を意識しています」と原氏は語る。一風堂のラーメンが主役ではあるが、酒とつまみだけの新しい楽しみ方もできる店を目指しているというわけだ。

同店を訪れるお客の9割は、最後にラーメンを食べて帰る。1~2人の少人数客が主流で、アルコールを2杯程度飲み、締めにラーメンを食べ、1時間程度で退店する例が多いようだ。

「外回り後のサラリーマン2人組のお客さまなども、よく来店されますね。“長丁場にならず、お腹も満たすことができるので後輩を誘いやすい”といった声をいただいています」と、鈴木店長は言う。

梅のりたまご 220円(税込み) 煮卵を一風変わった味にアレンジ。半熟ゆで卵を梅酢に漬け、海苔の佃煮と青ジソを添えた。海苔の佃煮を下に敷くことで卵が転がらないアイデアが◎
かまバタ 350円(税込み)バターで丁寧に炒め、ふわっとした口当たりに。福岡・博多ではポピュラーなつまみで、うんちくを語りたくなる一品

【店舗概要】
所在地=東京都港区浜松町1-27-6マストライフ大門・浜松町1階
営業時間=11:00~23:00、金・祝前日11:00~翌2:00/日曜休
席数=カウンター11席、テーブル8席
ちょい飲み平均客数=100~120人
ちょい飲み平均客単価=2,000円

「食事まで堪能」スタイルで居酒屋とは一線を画す【バーミヤン】

本格中華のファミリーレストランとして、世代を問わず親しまれているバーミヤン。同店でも、「ライトに飲み、食事まで堪能したい」というニーズに向けた取り組みが盛んだ。

「おつまみ小皿メニュー」を299円、2品セットは500円で提供。1~2人で1杯飲むのに適したボリュームとリーズナブルな価格で、ビールのお供につい注文したくなるメニューだ。合わせて、赤・白ワイン、梅酒、紹興酒(各グラス)100円、生ビール中ジョッキ200円(平日14時~18時限定)などという破格値のアルコールドリンクをメニューで大きく訴求。飲酒目的ではなかったお客も、「食事のついでに軽くつまんで飲むのも悪くない」と喚起させられる。

また、ファミリーレストランとしては画期的な、焼酎のボトルキープ制も導入している。サラリーマン客の多い駅前店などでは、キープボトルが常時100本以上もズラリと並ぶほどの人気ぶりだ。

ビンチョウマグロの秘醤ソース 499円(税抜き)
12種類の素材で作ったたれでビンチョウマグロを味付けした、今シーズンの自信作。たれが絡んだレタスも、よいつまみになる

一部店舗では、「飲み放題100分999円」のサービスも実施。もはやちょい飲みを超える“センベロサービス”だが、同店を展開するすかいらーく広報の横田真紀氏によると、「居酒屋と競合するつもりではありません。あくまでも、お食事とともにお酒もしっかりとお得に楽しんでいただきたい、と考えてのサービスです」。

実際、同店では居酒屋で見られるような“本気飲み”のお客は少ないという。バーミヤンにおけるちょい飲みの光景は、居酒屋のそれとは一線を画すスタイルというわけだ。

※本文にある価格は全て税抜き

おつまみ3種盛り 299円(税抜き) ラーメン店ではおなじみ。この盛り合わせとビールの黄金コンビこそが、ラーメン店におけるちょい飲みの醍醐味、といってもいいだろう

【店舗概要】
出店エリア=関東、甲信越、北陸、東海、関西、中国、四国地方
総店舗数=331店(17年4月30日現在)
アルコールMENU(税抜き価格)=キリン生ビール(グラス)349円、同(ジョッキ)450円、同(ジョッキ)2杯目399円、アサヒスーパードライ(中瓶)549円、ハイボール349円、日本酒(純米吟醸・あさ開180ml)599円他

◇外食レストラン新聞の2017年6月5日号の記事を転載しました。