京都出身の調味料研究家・松本葉子です。京都で古くから栽培され食されてきた京野菜は今や海外でも知られるブランドに。その代表的なもののひとつが万願寺唐辛子です。最近では京都以外でもよく見かけるようになってきた万願寺唐辛子。「これってどんな食べ方がおいしいの?」と気になっている方も多いかも。
伝統的な京都のおばんざいをはじめとする万願寺唐辛子のおいしい食べ方をご紹介しましょう。

万願寺唐辛子の特徴を知っておいしく食べよう

万願寺唐辛子の原種は、今から100年あまり前の大正時代に、京都府の北部に位置する舞鶴市の万願寺地区で生まれました。

日本伝統野菜である「伏見とうがらし」と、北米原産の「カリフォルニア・ワンダー」が自然交雑してできたものと考えられていて、そのルーツを今に伝えるのが「万願寺甘とう」です。「万願寺甘とう」は現在も、舞鶴市など京都北部の特定の地域でのみ栽培されている特産野菜で、「京のブランド産品」に認定されています。

その一方で、「万願寺唐辛子」という名称は大型の甘唐辛子の代名詞ともなり、日本全国で知られる一般名称になってきました。

万願寺唐辛子の特徴は、なんといっても肉厚で柔らかく、甘みのある味わい。煮ても焼いても食べ応えがあります。種が少ないので丸ごと料理したり、詰め物をするのにも適しているんですよ。

参考サイト:
万願寺甘とう 公式ホームページ
万願寺甘とうブランドブック(PDF)

万願寺唐辛子で作る京のおばんざい2種

万願寺唐辛子のやいたん

「やいたん」とは京言葉で「焼いたもの」という意味。地元で圧倒的人気の万願寺唐辛子の味わい方です。たっぷりの削り鰹と少量の醤油でどうぞ。

<作り方>
万願寺唐辛子を直火で素焼きに。ちょっと焦げ目をつけたほうが香りが立ちます。艶を出したい場合は、先に薄く油を塗ってもいいでしょう。

「万願寺唐辛子のやいたん」に、オリーブオイルと塩を添えればイタリアンのアンティパストにも。
白ワインやスパークリングによく合います。

万願寺唐辛子とじゃこの炒め物

万願寺唐辛子はちりめんじゃこと相性抜群。こちらも定番人気のおばんざいレシピです。万願寺唐辛子は柔らかいのでやや大きめに切るのがおすすめです。

<材料>
万願寺唐辛子……10本
ちりめんじゃこ……大さじ3~6
白だし(めんつゆ、だし醤油など)……大さじ1

<作り方>

  1. 万願寺唐辛子は適当な大きさに切って、種を取り除いておく。
  2. 白だしは3~4倍に薄めておく。
  3. フライパンに油を熱し、さっと洗って水を切ったちりめんじゃこを加えて軽く炒める。
  4. ちりめんじゃこに油が回ったら、万願寺唐辛子を加えて炒める。
  5. 万願寺唐辛子に火が通ったら(2)の白だしを少しずつ加えて好みの味に仕上げる。
    *万願寺唐辛子の大きさやちりめんじゃこの塩分の違いで塩加減は変わってきます。
    *薄口醤油、酒、みりんを混ぜたもので味付けしてもOK。

肉や油との相性の良さを生かしたメニューもgood!

例えば麺類。パスタに使ってもおいしい万願寺唐辛子ですが、暑い時期にはジャージャー麺風に仕立てるのもおすすめですよ。豚挽き肉にたっぷりの万願寺唐辛子を加えた肉味噌は鮮やかな色と味で食欲をそそります。

また大きな万願寺唐辛子の場合は、肉詰め焼きもおすすめです。使う挽き肉は、牛肉、豚肉、鶏肉のどれもよく合います。少し甘辛めに味付けるとお弁当のおかずにもぴったり。

そして、油との相性といえばやはり天ぷら。衣を薄めにつけて万願寺唐辛子ならではの美しい色合いも楽しみましょう!

万願寺唐辛子を生で味わうなら冷製スープで

万願寺唐辛子は唐辛子特有の青臭さが少ないのも特徴のひとつ。だから生でも食べやすいのです。ピーマンが苦手という子どもたちには万願寺唐辛子を代わりに使ってみるとよいかもしれませんね。

新鮮な万願寺唐辛子のヘタとタネをとり、冷やした牛乳や豆乳と一緒にミキサーにかけて少量の塩を加えればビタミンたっぷりの冷製スープのできあがり。これぞ飲むサラダ。暑い日の食卓にうれしい爽やかさです。

こんなふうにさまざまなレシピで楽しめる万願寺唐辛子。和洋中、エスニックと、本当にいろいろな料理に使えます。

時には、京都特産の「万願寺甘とう」と他の「万願寺唐辛子」を食べ比べてみるのも楽しいかも。

また特定品種でなければ家庭菜園やプランターなどでも育てることができるので、来シーズンは自宅栽培に挑戦して、とれたての万願寺唐辛子をたっぷり味わってみるのもいいかもしれませんね。