インバウンドの隆盛や、食生活を見直したいという人の広がりとともに増えている菜食レストラン。昨年、大阪・堺市にオープンした「VEGAN BURG KITCHEN」は、ベジタリアンの中でも最も厳格な“ヴィーガン”に対応する、関西初の完全菜食ハンバーガー店である。食べ応えと味を追求する調理の工夫や、今後の展望などを取材した。

ヴィーガン対応のバーガーメニュー13種類考案

「誰もが気軽に利用できる店をと、幅広い年代に人気があるハンバーガーに特化。“ジャンクフードのイメージが強い食べ物を、ヴィーガンで楽しむ”というギャップも面白いのでは」と経営する街のあかり代表の中井純一さん。

バーやイタリアンバルを経営してきた中井さんは、体調を崩したことをきっかけにヴィーガンになり、4年前に大阪市内でヴィーガン料理店をオープン。その姉妹店となる同店は、「興味はあるが、レストランまでは行きにくい」という層をキャッチし、菜食をより身近にする役割も担っている。

「菜食は頼りないと思われがちだが、肉なしでもガツンと食べられるものを」と、13種類ものバーガーメニュー(745円~1382円)を考案。全てが、肉や魚はもちろん、卵や乳製品、白砂糖、化学調味料を使用せず、オーガニック野菜にこだわって作られている。

ザ・ヴィーガンバーグ 1,382円(税込み) 食べ方を悩むほどのボリューム感。パティにとろけるのは、豆乳ともちで作ったチーズ風のトッピング。添加物を避けるため、ソースやドレッシング、マヨネーズも手作りしている

肉の食感に近い弾力を目指す

バンズは、直径12cm(約90g)のアメリカンサイズ。卵や乳製品、添加物ゼロでありながら、ふんわり感も追求した特注品だ。

パティは約120gで、大豆ミートのミンチタイプを使用。湯戻しにかける時間を検討し、できるだけ肉の食感に近い弾力を目指したという。また、玉ネギを避けるベジタリアンタイプもあるため、玉ネギなしでのパティ作りに挑戦。塩麹での代用を発案し、うま味アップを実現した。

さらに、刻みショウガで大豆臭を抑制し、コショウやナツメグをプラス。つなぎには卵の代わりに片栗粉を使って成形し、オリーブオイルで焼き上げる。利用客からも好評で、違和感がなくおいしいという声が多く聞かれるという。

サイドメニューで人気の「大豆ミートの唐揚げ」(745円・税込み)

外国人客が3割

ハンバーガーの中でも人気なのが、ビッグサイズで価格も最高の「ザ・ヴィーガンバーグ」。その他、おからこんにゃくやテンペ(大豆の発酵食品)を活用してサンドするメニューもあり、アレンジの多彩さに驚かされる。また、グルテンフリーの要望が高いため、今後はライスバーガーの開発にも取り組む考えである。

利用客の6~7割が女性で、全体の3割は外国人客。ネットで探して来る人が多く、少しずつリピーターが増加中とか。「ヴィーガンに対応する食は、今は大きなニーズがなくても将来性が感じられる分野。今後は大阪市内へ出店して、より多くの人が利用しやすい環境を目指したい」と、中井さんは意欲を語る。

落ち着いて食事ができる店内。ビールやワイン、カクテルもあり、バル使いもできる
●店舗情報
「VEGAN BURG KITCHEN」
経営=街のあかり
店舗所在地=堺市堺区北瓦町2-1-33
開業=2017年4月
坪数・席数=15坪・30席/営業時間=11時30分~15時、17時30分~22時。不定休
平均客単価=1500円
1日平均集客数=20~30人

◇外食レストラン新聞2018年7月2日号の記事を転載しました。