関西在住ながら福島が大好きで、年に何回かは必ず訪れる調味料研究家の松本葉子です。そんな私が福島で出会った“うンまいもん”のひとつが「川俣シャモ」。福島県伊達郡川俣町の地鶏です。
いつもは福島で味わう「川俣シャモ」ですが、今回は丸ごと一羽お取り寄せ~。福島市内の川俣シャモ専門店で聞いた調理のコツなどを参考にして食べ尽くしてみました!

おもてなしの心から生まれた地鶏・川俣シャモ

川俣町で行われる「川俣シャモまつり」は毎年大盛況、福島県内では川俣シャモを使っていると標榜する飲食店も各種あって、それなりにリスペクトされている地鶏なのですが、残念ながら県外では知名度はイマイチ。

こんなにおいしくてリーズナブルな鶏なのにもったいない!と食べるたびに悔しく思っている松本です。

それにそもそも川俣シャモというのは、「田舎ならではの最高の食材で心と身体を養っていただきたい」(川俣町農業振興公社HP)という“おもてなしの心”から生まれた地鶏なんですよ。

昭和の後期、地鶏の水炊きが大好物だった当時の町長が「訪れた人に喜ばれるような川俣町ならではの名産を作りたい」と、シャモに着目。開発が始まったようです。

どうして川俣町でシャモなのかといえば、川俣町は古くは養蚕で栄えた町であり、それで財をなした旦那衆が闘鶏を楽しむためにシャモ飼育が盛んだったという歴史があったから。

でも「うまい地鶏を作る」といってもそれは容易なことではなく、途中で頓挫しかけたこともあったのだそう。それを乗り越えて川俣町の人たちの大いなる努力によってできたのが、現在の「川俣シャモ」。

純系のシャモのメスとレッドコーニッシュのオスの間に生まれたオスに、ロードアイランドレッドのメスを交配させて生まれるのが川俣シャモです。

と聞いても、シロウトにはよくわかりませんが、写真でみると、茶色~焦げ茶で精悍な体躯の鶏です。脚が長いところなんかが、よく見る鶏とは違いますね。

川俣シャモは川俣町の豊かな自然の中、平飼いで、健康によい餌でのびのび育てられています。

参照サイト:
川俣シャモ – 川俣町公式ホームページ

川俣シャモを一羽、取り寄せてみた!

川俣シャモの生産、販売は川俣町農業振興公社が手がけ、川俣町の道の駅などで販売しているほか、通販もあります。

精肉以外にローストチキン、燻製、砂肝のアヒージョなどの多彩な加工品もあって、中でも砂肝のアヒージョは、川俣の道の駅や福島市の福島県物産館でおみやげに人気とのこと。確かにこれ、食べてみるとスパイシーで歯ごたえがあっておいしいんです。

でも今回は川俣シャモを食べ尽くすということで“肉”でいきます!

ただし、一羽丸ごとといってもさばくのは大変なので(ヘタレ…)、バラシのセットを購入。一羽分といっても、オス、メス、大きさによって価格は異なり、4000~6500円程度と幅があるので購入時はご注意を。

今回は内臓・ガラ付きで注文。モモ、ムネ、ささみ、手羽、手羽元、レバー、心臓、砂肝、ヤゲン軟骨、ガラが小分け真空パックされて冷蔵で届きました。

早速とりだしてみると、モモは見るからにしっかりした肉質で1枚375g。心臓、レバー、砂肝の内臓類も角がピンとたっていて艶々。これはおいしそう!期待が高まります。

販売情報:
地鶏屋本舗(株式会社川俣町農業振興公社)

川俣シャモは部位に合わせた調理でよりおいしくなる!

以前、川俣シャモの専門料理店を訪れた時、シェフに「自分で料理するならなにがおすすめですか?」と聞いたら、「皮のついた部分を焼くのがいいかな。川俣シャモのしなやかで弾力があるおいしさがよくわかると思う」とのことだったので、まず手羽を塩焼きに。大きくて、炭焼きは難しそうなのでオーブン焼きにしました。

ほかの鶏をこういう風に焼くと、天板に脂がべちゃべちゃとたまったりしますが、川俣シャモはそんなことがなかったことも驚きです。しかも焼いても小さくならない。…ってことは、水っぽくないということですよね?

それは、食べるとよくわかります。歯ごたえあるのに硬くなくて、噛むほどにうま味がでてくる感じ。

ささみは炭火焼きにして、わさびを添えてみました。

これがささみ? と思うほどうま味があってびっくり。弾力があるのにさっくりかみ切れるのも心地よく。

なるほど焼き鳥は、川俣シャモの王道の食べ方かもしれないと実感しましたね。

川俣町の道の駅のスタッフさんは、「川俣シャモのむね肉は親子丼とか煮物にもいいし、唐揚げにしても鶏の味がしっかりしてるからおいしい」と言っていたので、衣をつけて揚げてからマッシュルームクリームソースを添えてみました。

おぉ。濃厚なソースにも肉の味が負けません。クリーム煮とかこういう料理にすると、普通の鶏だとソースの味しかしないことが多いんですけどね。川俣シャモ、存在をかなりアピールしております。

モモとムネはシャモといえばお約束の鍋にもしてみました。

スープ(後述)炊き鍋にしてポン酢で食べたのですが、当たり前以上においしい。写真を見てもらえれば、少しは伝わるでしょうか。

内臓類は、心臓と砂肝は焼き鳥で、レバーは日本酒、醤油、みりんでさっと煮て七味唐辛子をふっておつまみに。いずれも臭みは皆無で、もっと食べたい! と家族のリクエストが。でも1羽だから心臓も肝臓も一個ずつなのは仕方なし~。

最後にガラ。よく洗った後、水からじっくり煮てスープをとりました。クセがないので香味野菜もなしで大丈夫。脂ギトギトにもなりません。

実は鶏ガラでスープを取る時って、生姜やネギをいれると洋風に使いにくくなるし、セロリや玉ねぎ、ローリエなんかをいれると今度は和風に使いにくいので、良い鶏なら水だけでスープをとった方が後々便利なんですよ。

そういう時にも川俣シャモはぴったりです。

できたスープは、野菜スープやカレー、鍋、味噌汁、ラーメンスープなどのベースに。

あと、スープをとった後のガラからはずした細かな身を熱いご飯にのせて、おいしい塩をひとつまみ、香りの良い胡椒をひとふり。その上から熱々のスープをかけた「鶏茶漬け」もいけます!

さすがに骨までは食べませんでしたが、一羽たっぷり・しっかり味わい尽くしました。

川俣シャモは、福島にでかけて味わうのもいいけれど、自宅でもこんなふうに楽しめます。一羽買いだとお値段が張るとはいえ、かなーーり楽しめるので、実際にはコストパフォーマンスは良いと思います。

おいしい鶏が食べたいなって思ったら、川俣シャモのことを思い出してくださいね!