国内スイーツの17年の市場規模は前年を1.3%下回る1兆5300億円となった。ベーカリーは微減の4000億円弱(いずれも本紙推定)で着地している。両市場合計では2兆円を目前に足踏みが続くが、業態の多様化や品質レベルの向上は着実に進み、近年中での到達が見込まれる。

ベーカリー&スイーツ市場2兆円は近年到達か

スイーツはチョコレートやプチギフトが好調だったが、チルド帯が全般的に苦戦し、コンビニドーナツなどのワンハンド品のブームも鎮静化。また、世帯構成の変化に伴い、誕生日やクリスマス向けのホールケーキで小型化が進んでいる。

チャネル面では、これまで急成長してきたコンビニスイーツや通販分野がほぼ浸透、これに伴い一服化している。インバウンドを含めた土産需要に強い駅ナカ、空港などの交通施設は引き続き堅調で、京都や北海道、博多など観光地への戦略的出店も総じて好調に動いた。

自家消費に強い量販・コンビニでは、それぞれシニア・男性向けにアイテムを拡充。市場規模のベースを下支えする

最大チャネルの百貨店は明暗が分かれるが、テーマ性の強い販促イベントなどは引き続き需要を取り込んでいる。一方で路面店は自家消費に強いコンビニ、量販との差別性訴求が必須の状況。さらに通販や温度帯別戦略なども対応必須の取り組みが増加し、真価が問われている。

ベーカリーは量販内でのインストアベーカリーが浸透、店内ホールセール品とのすみ分けもある程度までは果たしている。一方で路面店はホールセール回帰で総じて苦戦。いわゆる「地域一番店」など人気店は連日盛況となっているものの、特に地方では人手不足やインストアベーカリーとのカニバリなどで閉店も目立つ。

素材メーカーによる機能性素材の開発や製法・技術の進化などで、ホールセール品の品質は今後も大きく伸長する可能性が高い。特に個人店ではベーカリーならではの差別性を打ち出すことが重要となっており、“パン屋の魅力”をいかに収益につなげられるかがカギを握る。

「SNS映え」「低糖質」がトレンド

社会情勢やニーズに変化・多様化に伴い、両市場とも多くの新トレンドが発生。スイーツ市場では17年、「インスタ映え(フォトジェニック)」と「低糖質(健康志向)スイーツ」がトレンド化した。

自家消費・贈答以外の新需要「インスタ映え」。拡散効果での需要喚起が注目される(写真:スタートアウツ)

インスタ映えは自家消費や贈答以外の新たな購買理由に位置付けられるもので、自己表現やコニュニケーションツールとしての新需要を開拓。食品産業の観点からは特に「拡散」効果による需要喚起が注目され、同効果による潜在需要は両市場合計の1割弱に当たる2000億円に達すると思われる。

「低糖質」は素材メーカーや技術革新によるもので、ロカボへの注目を背景に伸長が予想される。従来までの「ギルドフリー」の流れをくむが、今後はベーカリー市場とともに「アマニ」や「麹」などの健康素材や添加物不使用などを組み合わせた「総合的な健康志向対応」も進むことが予想される。

なお、ミクロ的な側面では「〆パフェ」や「和スイーツ」「もちっと系」などが分散的ではあるが需要喚起に成功。さらに「冷凍パン」や「ドリンクスイーツ」などの新分野も定着に移行している。

ホールセールとの差別化一層重要に

ベーカリーでは、塩パンやコッペパンのブームに続き、「食事パン」全般の差別化や「ご当地パン」の全国進出が目立つ。いずれも焼きたて感や具材(地域名産品)での付加価値化などホールセールとの差別性を図るもので、前者では安定経営が、後者では話題喚起によるさまざまな副次的効果が期待される。

ホールセールとの差別化が必須なベーカリー。“パン屋の魅力”を収益につなげたい

また、ベーカリー市場では素材メーカーによるメニュー提案が百花繚乱の状況で、今春は店頭でのレシピ公開が開始される。仕掛けるのは関東地区の人気店「石釜パン工房 サフラン」で、リテール部門で頭角を現すJ-オイルミルズが動画を製作。これまでの販促概念を覆すものとして注目される。

◇日本食糧新聞の2018年4月11日号の記事を転載しました。