ほうれん草のごま和えにはごま油を!油のちょい足しでさらにヘルシーな和食に
食・栄養ライターの清原修志です。和食には「ヘルシー」というイメージがあります。動物性脂肪がとりすぎになりにくいとか、旬の野菜のよさを生かした料理のバリエーションが豊富、などのメリットが、2013年のユネスコ無形文化遺産登録の際にも日本側からプレゼンテーションされていました。もちろんユネスコは文化に関する国際機関であり、健康に関する国際機関=WHO(世界保健機関)ではありませんが、世界的に「和食はヘルシー」というイメージが持たれていることも、無形文化遺産登録の後押しになったことでしょう。
では、和食には健康面でどのようなメリットがあるのでしょう。あるいは、デメリットはあるのでしょうか。
和食の健康面でのメリットは
和食といっても、日本の長い歴史の中でその形式は変遷がありますし、身分階層や職域(僧侶など)、地域によっても大きく異なります。しかし、現代の日常の食事として一般的な和食のメリットというと下記の点などが挙げられます。
- たんぱく源として魚や大豆・大豆製品の利用が多く、肉や牛乳・乳製品の利用が少ないため、動物性脂肪の摂取が少なく、動脈硬化性疾患(心疾患や脳梗塞など)のリスクが低い。
- 野菜やきのこ・海藻をたっぷり用いるので、食物繊維(水溶性・不溶性)をとりやすく、生活習慣病の予防に効果的。
- ポピュラーな食事スタイルである「一汁三菜」という、ご飯を主食に、おかずとして主菜(肉や魚などたんぱく質をとる料理)と副菜2品(副菜、副々菜という。野菜やきのこ・海藻をとる料理)と汁物(味噌汁など)の4つの料理で構成する献立は、食事の栄養バランスをとりやすい。
- 旬の食材を使った料理のバリエーションが豊富。
- 発酵食品(納豆など)や乾燥食品(干物や乾物など)の伝統があり、新鮮な食材との組み合わせで食事内容に広がり、奥行きがある。
- 発酵調味料の文化が発達していて、うま味を生かした調味法が発達した。
- 大豆・大豆製品(煮豆や豆腐など)をたくさん食べるため、イソフラボンやビタミンK(納豆の場合)が日常的に摂取でき、骨粗鬆症の予防が期待できる。
和食のデメリットは
しかし、メリットばかりではありません。デメリットには下記の点などが挙げられます。
- 塩気の強いおかずが多く、高血圧のリスクが高い。
- 塩気の強いおかずとともにご飯をたくさん食べることになりやすく、糖尿病のリスクが高い。
- 調理に油を使わないことが多く、ベータカロテンなどの脂溶性ビタミンが体内に吸収されにくい。
- 油分が少ない料理は腹持ちが悪くてすぐにお腹が空くので、間食のとりすぎや次の食事の食べすぎを招くため、一見ヘルシーだが人によっては肥満の原因になりうる。
- カルシウムの供給源となる牛乳・乳製品(ヨーグルトやチーズなど)の摂取量が少なく、骨粗鬆症のリスクがある。
- 調味に砂糖を用いた甘辛い味の料理が多いため塩分のとりすぎにもなりやすく、食後血糖値がスパイク状に急上昇する原因にもなりやすく、食後高血糖、ひいては糖尿病の原因になりうる。
参考サイト:
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました!:農林水産省
和食の進化系「日本型食生活」
これらのデメリットの多くは以前から指摘されていて、栄養士や保健師などによる栄養指導や、食生活改善推進員などのボランティアによる栄養改善活動、料理番組などのマスコミによる献立提案などが功を奏し、昭和50年代頃には国民栄養調査(現・国民健康・栄養調査)の結果からみても、かなり理想に近づいたといわれていました。
ただしそれは、「和食」というより、前述の「一汁三菜」をベースに、おかずは和食にこだわらず、和洋中のさまざまな料理を日替わりに出し、ご飯のおかわりを減らしたスタイルで、このことを農水省は1983年に「日本型食生活」と名付けました。これは和食の進化系といっても良いかもしれません。
しかしその後、バブル景気とともに「飽食の時代」とも呼ばれるグルメブームが起こりました。バブル崩壊後には家庭料理の伝承がうまくいかず、日常の食事で栄養や健康よりもおいしさを重視するようになったりする傾向もみられ、「崩食の時代」とも呼ばれるようになりました。
最近ではネットによるレシピ情報サイトが生まれて、以前とは家庭料理を学ぶ方法も変わってきました。去年の流行語大賞にも選ばれた「インスタ映え」という言葉は、栄養や健康、さらにはおいしさよりも見映えを重視する世相を映し出しているのでしょうか。これからの家庭の普段の料理はどのようになっていくのでしょう。
このように和食の進化系である「日本型食生活」と呼ばれる理想に近づいた時期のあと、その崩壊が懸念される時代に突入したわけですが、いずれにせよ、和食のメリットを生かしながら、デメリットを改善していくことは、健康につながる確かな道だと思います。
油のちょい足しで、和食のデメリットを解消
そこで今回は、「油をちょい足しすることで、和食のデメリットを解消する」をテーマに、具体的なちょい足しアイデアとレシピをご紹介します。
<1>炊飯の際に油を足す
ご飯を炊くとき、炊飯釜にサラダ油、あるいは米油を小さじ1〜大さじ1程度加えて、炊飯スイッチを入れます。
これは、腹持ちをよくする、食後血糖値の急上昇を抑える、ビタミンEの補給になる、安いお米でもツヤツヤのご飯になる、といったメリットがあります。
以前、炊飯釜に1粒入れるだけでご飯がツヤツヤになるとうたったゼラチンコーティングの商品が話題になったことがありました(今も売られています)。あれも主成分はとうもろこし胚芽油です。
<2>ほうれん草のごま和えに、ごま油を足す
通常のほうれん草のごま和えの和え衣は、しょうゆ、砂糖、すりごまですが、これにごま油を加えます。
これで、ほうれん草に含まれる脂溶性ビタミン(ベータカロテンなど)の体内への吸収効率が高まります。
ほうれん草をゆでる際は、直径の狭い雪平鍋よりも、フライパンを使ったほうがゆでやすくて便利です。最初に根元の方からお湯につけ、それから全体をさっとゆでます。
<3>サバを塩焼きや味噌煮ではなく、甘酢照り煮にする
油を足すというより、サバに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(イコサペンタエン酸)が豊富な魚油を逃さない調理法です。グリルで塩焼きにしたり、味噌煮にしたりすると、油がしたたりおちたり、煮汁に溶け出したりします。
そこで、サバに片栗粉をまぶしてコーティングしたうえでフライパンで焼き、スライスした玉ねぎ、水、酒、酢、少量の砂糖、しょうゆを加えて煮立てます。サバの衣の片栗粉が溶けて煮汁にとろみがついたら完成です。
いかがでしょう。これならサバの身の中の油は外に逃げません。パサつかないふっくらジューシーな身と甘酸っぱい味付けでおいしくいただけます。照り煮ではなくても、小麦粉をつけてムニエルにしても、魚の油を逃さずいただけます。
これからも、具体的な調理例も出しながら、健康に役立つ食べ方をご紹介できたらと思います。よろしくお願いいたします。
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