真鴨をお取り寄せして滋賀流「鴨すき」を作ってみた!力強いうま味を堪能
滋賀県在住の調味料研究家・松本葉子です。滋賀県には美味な郷土料理がたくさんありますが、天然真鴨を使う鴨すきはその代表格。11月半ばの鴨猟解禁から3月までがシーズンです。滋賀県内には鴨すきの名店も多くありますが、今回は湖北・長浜から取り寄せた真鴨で作る、滋賀の鴨すきをご紹介します!
真鴨ってフツーの鴨と違うの?どこで買えるの?
日本全国に鴨すき・鴨鍋を名物にしている店があり、和食店やフレンチなどでも鴨を使った料理ってよくありますよね。でもその多くに用いられているのは合鴨か外国産の鴨。天然真鴨じゃありません。
真鴨は冬にシベリアから飛来する渡り鳥で、琵琶湖にも多くやってきます。だから本来、狩猟解禁中しか味わえないジビエの一種なのです。
ところで、滋賀の人はどこで真鴨を手に入れるのかって話ですが、猟師さんからわけてもらうか、鴨すきをしている料理店から購入するか……でも一般的なのは川魚屋です。
鳥なのに魚屋?と思われるかも。でもこの写真をみてください。
2軒とも大津市内の川魚店ですが、「天然真鴨有ります」の張り紙や看板に「本鴨」の字があります。撮影させてもらう時にお店できいたら、どちらも昔から鴨は扱っていて鴨を買いに来るおなじみさんも多いとのこと。
これは、昔は琵琶湖の魚を捕るためのワナにかかった真鴨を魚と一緒に川魚屋で扱っていたことの名残です。その頃は、猟師さんじゃなくて漁師さんが鴨をとってたんですね。
でも現在は琵琶湖での鴨猟は禁止されているため、狩猟解禁中に滋賀の内陸部や他府県でとれた鴨が売られています。
湖北・長浜には限りなく天然に近い飼育真鴨がいる!
滋賀県の中でも天然真鴨は昔から雪深い湖北(琵琶湖の北の方の地域)のものが美味とされてきました。それゆえ湖北には伝統の味・鴨すきを名物とする料理店も多く、シーズンになると多くの人が訪れて、天然真鴨の料理を楽しみます。
とはいえ琵琶湖の鴨が禁猟になってからは滋賀県産の真鴨を出す店は少ないのが実情です。
というわけで、今回は滋賀県産の真鴨にこだわり、しかも比較的手に入れやすいということで、琵琶湖の北端・菅浦で限りなく天然に近い環境で真鴨を育てている「鴨の里の会」から鍋用の真鴨肉を取り寄せました。
野趣あふれる赤身肉に内臓、そしてつみれ……じゃないんです!
真鴨肉をさばくのは結構面倒なので、きれいに切ってあるのはありがたいです。料理法を説明したパンフもついています。
写真は3人用のセットを解凍したもの。上から2段目までがだき身(胸肉)、その下がもも肉と手羽肉、そして、砂肝、心臓、レバー、木の葉の形にしてあるのがたたき肉です。
おなじみの胸肉も合鴨に比べると色が濃く締まっていて、脂肪が少ないのが特徴。健康に留意して育てられた鴨だから内臓類もしっかりしていて艶々です。
そして注目して欲しいのがこちら。滋賀県でいうところの「たたき肉」です。肉という名前だし、見た目はつみれとか肉団子に見えますが、実はこれ骨なんです。
真鴨の骨と軟骨を砕いてすりつぶしたもので、肉は骨に少量ついている分だけしかはいってないし、つなぎも一切なし。
このたたき肉、「幼児や高齢者、歯や胃腸が弱い方にはお勧めできません」という注意書きが入っていますが、これぞ滋賀の鴨すきの食べ方の特徴といってよいでしょう。
滋賀の鴨すきでは必ずといってよいほど登場します。
滋賀流鴨すきの作り方~骨なくしてははじまらない
鴨すきのレシピはさまざまですが、ここでは「鴨の里の会」推奨の方法を元にして作ってみます。
まずたたき肉を親指の先くらいに丸めて昆布だしを張ったすき焼き鍋にいれて煮ます。なんせ骨ですから大きく丸めると崩れるし、そもそも固くて食べられませんからご注意を。
アクをとりながら火を通したら、野菜を入れ、砂糖、醤油、酒などで味をつけます。真鴨の味はかなり強いので、味は濃いめにつけるのがコツ。
野菜はなんでもいいですが、青ネギとささがきゴボウはぜひ入れてください。
内臓類はしっかり火を通した方がいいですが、胸肉などは食べる分ずついれること。火を通しすぎないようにして、溶き卵をつけて味わいます。薬味は粉山椒がよく合いますよ。
野生に近い環境でのびのびと、しかも吟味した餌で育った真鴨の肉は、臭みがなく、かみしめるほどに力強いうま味がほとばしります。
鴨のうま味が溶けただしを吸ってくたくたになった野菜もたまらなくおいしいですよー。
そして一番最後にたたき肉を食べるのがならわしです。ただし鴨の里の会の方いわく、「元々はだしのためにいれるもんなんで食べたかったらということで。骨のカケラには十分気をつけてください」
野趣そのものの風味は好き嫌いがあるとおもいますが、私は好きです。
しめは、うどんや餅をいれたり、雑炊にするのが一般的ですが、それでも全部食べきれないと思ったら、取り分けておいて翌日鴨すき丼にすると良いと聞いたので作ってみました。
なるほど鴨すき丼、これいけます! 鴨すきをしたらぜひ試してみてください。
冬の琵琶湖の風景を楽しみに滋賀まで食べに行くもよし、あるいは取り寄せで「おうち鴨すき」もよし。
たんぱく質やカルシウム豊富で、古来日本人に愛されてきた滋味あふれる真鴨の鴨すき。今シーズンの最後に駆け込みで、間に合わなければ来シーズン、ぜひぜひ体験してみてください。
<お取り寄せ情報>
鴨の里の会
<参照サイト>
滋賀県「郷土の味わい 近江のジビエ」滋賀県
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