春は山菜のような「苦い」食材を摂ると身体に良い!と思っている方も多いと思います。苦いものには「解毒」「デトックス」と言ったイメージがあるからでしょう。確かに苦味を感じる春の食材には、植物性アルカロイドに代表されるデトックス成分が豊富です。
また、「寒い冬の間に代謝が下がり循環が悪くなるだろうから、春こそ苦味の効いた食材でデトックスしてしちゃおう!」という発想をする方も多いかと思います。実はこれ、東洋医学によると大きな間違いなんです。

春の身体は意外とお疲れ気味

冬は寒いので、体温を維持するために代謝が上がります。正月を挟み、食べ疲れもおきます。年度を挟みますので、心身的なストレスを感じる方も多いと思います。

そう、春の身体は意外とお疲れ気味。眠たい、アレルギー症状がでる、気温の変化について行けず風邪をひく、いつもよりもお酒に酔いやすい、集中できない、など・・・思い当たる節はありませんか?

東洋医学では、春には五臓の1つ「肝」を助ける「酸味」のある食事をすることが良いとされています。肝臓は血液の浄化装置のような役割をしますので、「解毒」という捉えかたもできます。

ちなみに「苦い」のがいいのは夏の食事です。秋の味には「辛」です。春は秋と反対の季節ですので、辛いものや刺激物は少し控えめが良いでしょう。

春には、春キャベツやアスパラガスなど、緑も優しい淡い色の食材が増えます。また、新玉ねぎなど普段は辛く刺激のある食材も優しい味になります。

【五行色体表】
五行論、身体だけでなく自然や宇宙などあらゆるものは5つの構成要素からなる、という考えをもとにしたチャートです。中医学や東洋医学などの治療に用いる大切な考え方です。今回示したものはその内3つのごくわずかなカテゴリーです。

酸味を効かせた健やかレシピ

春の身体に優しい、酸味のある調味料や食材。お酢や、梅干しなど年中通して食べられる物、そして今が旬のミカンなどの柑橘類。最近は国産のレモンなども比較的よく手に入ります。

そのほかにもハウス物が最盛期のトマトなども酸味の効いた食材の一つです。体を温めるイメージの生姜は実は「辛」に分類される食材です。

とっても便利な酢玉ねぎ

みじん切りにした新玉ねぎを、お酢又はカボスなどのしぼり汁につけておくだけ。一週間ほど日持ちし、ドレッシングやサラダに混ぜたり、お肉やオイル煮などの魚に乗せたりとても便利です。

酢玉ねぎを、茹でた菜の花やと海老と和えて、塩胡椒で味付けしたお料理もおいしくいただけます。

春野菜のピクルス

浅づけ風のさっぱりピクルスは、ニンニクが決め手。砂糖を使わないので、しつこくなく手土産にもおすすめ。次の日から食べることができ、冷蔵庫で1週間ほど保存できます。

さっぱりクセになる、トマトのお味噌汁

トマトをたっぷり入れて、その他の具材はシンプルに2種類ほどに留めると美味しいです。米味噌が特に好相性。煮干だしを使うときは、椎茸とトマトがおすすめ。昆布だしでを使うときは、ミョウガとトマトがぴったりです。ちょっと贅沢に、旬のアサリとトマトでお味噌汁にするのもグッド・アイディア!

デトックスも、ほどほどを大切に

春の山菜が美味しい季節。私も春の苦味はとても好きです。つくしに菜の花、ふきのとう、うど、せり、優しい緑や黄色が、彩りも豊かに食卓を華やいでくれます。

ですが、春の苦味は決して身体に良い!と言えるほど単純ではありません。アクの強い春野菜は食べ過ぎると、お腹をこわすこともあります。ほどほどに、楽しむことが大切です。

近頃はやりの「デトックス」という言葉、タイトルにも使っていますが、実は、私はあまり馴染めません。「身体に毒なんて溜まっていたら、大変ですよ!」と言ってみたりするのですが・・・。

不調は全て、身体からのサイン。便秘・ニキビ・疲労・頭痛・肩こり・むくみ・・・。日常的に起きるさまざまな症状は、食材や健康食品一つで解決できるほど単純ではありません。気候や生活のリズムの変調など沢山の要因が合わさって起きることが多いのです。

身体が重く何かが溜まっているような感覚がするときもあるかもしれませんが、実は身体に不足しているものが原因ということも良くあります。東洋医学では「虚している」と言います。原因は、深呼吸が足りない、水分補給が足りない、睡眠が足りない(リラックス)、働きが足りない(興奮)・栄養素が足りない、などなど。

食べ物は美味しいのが一番ですが、健康維持も大切です。何を食べるかだけでなく、どのように調理して、どのくらいの量を、どの程度時間をかけて食べるかも、とても重要な要素です。よりいっそう食べ物を美味しく感じる健やかな体づくりは、家庭料理の大きな役割ですよね。