クリスマスイブはチキンでなくウナギ! イタリアでの伝統的な食べ方
イタリア在住フードライター鈴木奈保子です。もうすぐクリスマスイブですね。私の住むイタリアはカトリックの総本山ヴァチカン市国があるだけに、イエス・キリストの誕生日を祝うクリスマスは、1年の中でも最も大切な行事です。今回は、カトリックの本場イタリアのクリスマスでの食べ方についてご紹介します。
クリスマスイブはキリストの誕生を祝う宗教行事
日本では、“クリスマスとはイブにカップルが一緒に過ごす”ロマンチックな日。チキンの丸焼きや生クリームでデコレーションされたケーキが、クリスマスの食事の定番です。
ところがカトリック教徒にとっては、クリスマスはロマンチックとは全く関係なく、人類の救世主であるイエス・キリストの誕生を祝う宗教的行事です。24日のイブは、真夜中のキリストの誕生日を祝うミサのために、家族そろって教会に行きます。恋人同士もこの日は別々で、それぞれの家族と一緒に過ごすのが鉄則です。
聖なるクリスマスイブは断食も!肉食は絶対厳禁!
本来キリストの誕生日を迎える前夜、クリスマスイブには、カトリック教徒は断食をしたそうです。今では断食はしませんが、クリスマスイブにお肉は絶対に食べません。チキンの丸焼きなんてもってのほかです。
カトリック教徒にとって1年で最も聖なる夜クリスマスイブは、馬小屋で誕生したキリストを思い、食事はできるだけ簡素にするべきだ、と教会で教えられてきたからです。
1960年代ころまでは、クリスマスイブには贅沢な食事の象徴である肉を食べてはいけないという伝統を守って豆類や野菜などの簡素な食事をすませ、真夜中のミサのために家族で教会へ出かけていくというのが伝統的な過ごし方でした。
イタリア流クリスマスイブの魚介類ディナーコース
ところが、現代のイタリアのクリスマスイブは、肉を食べない代わりに魚介類を食べるのが主流となっています。
実際、今では肉よりも魚のほうが高価な食べ物です。せっかく大勢で集まる大切なディナーだからと奮発して、海の幸盛りだくさんの贅沢なディナーを食べるのが定番となってしまったのですから、本末転倒です。
スモークサーモンや生カキなどの前菜に始まり、ボンゴレスパゲッティなど魚介類のパスタ。そして、メインにはお魚や手長エビのグリルなどの豪華な食事を、時間をかけて夜遅くまで楽しみます。
伝統的なクリスマスの縁起を担ぐ食べ物は、ウナギだった!
イタリアのイブのディナーで、興味深いのが鰻の料理です。日本のようにかば焼きではなく、柔らかく煮込んでからマリネにします。鰻のコッテリした脂分を、ビネガーでさっぱりさせる食べ方です。また地方によってはオーブンで焼いたりするなど、中部イタリアを中心に伝統的に食べられています。
中部イタリアの川に生息している鰻は、簡単に手に入る栄養満点な食材として、肉の代わりに伝統的にクリスマスイブの食卓にのぼっていました。
また、旧約聖書でエバに禁断のリンゴの実を食べるように唆した邪悪のシンボルである蛇に形が似ている鰻を食べて、悪を遠ざけるという言い伝えがあります。
真夜中のミサのために教会へ出かけていく伝統的な家族も、今では少数派になりつつあるイタリアですが、絶対に家族で過ごすという伝統はしっかりと守られています。今年のクリスマスイブは、家族でお魚料理を食べてみてはいかがでしょうか?
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