京都出身の調味料研究家の松本葉子です。今回は京都の湯葉についてご紹介したいと思います。豆乳を熱して、上に張る薄い膜をひきあげて作られる湯葉。京料理や精進料理に使われる高級な食材というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。でも家庭で気軽にたっぷり味わうのも京都の湯葉の食べ方なんです。

ちょっと贅沢に味わう湯葉もあるけれど

京都にいくつかある湯葉の製造元直営の料理店では生湯葉の刺身は定番の一品。また和食店の刺身盛り合わせにも生湯葉が入っていたりするので、京都で初めて生湯葉を食べてそのおいしさに感激したという話もよく耳にします。

生湯葉は京都ならスーパーで買えるので家庭でも食べます。でもやや贅沢品といえるでしょう。

そしてこちらが乾燥湯葉。平湯葉のほかにこのように巻いた形のものも多く、中央のものは小さな麩2つを湯葉で包んで昆布でくくってあります。

このような形の乾燥湯葉はそのままお吸い物や炊き合わせなどに使えて便利なのですが、やはり割高なので、家庭ではおもてなし料理などに用いるのが一般的です。

これぞ真打ち! 軽やかな割れ湯葉と濃厚な甘湯葉

生湯葉も乾燥湯葉も美味しいけれど、「普段のおかずにはもったいないやろ」ってことで、京都で家庭用に使われるのがこちら。

「割れ湯葉」と「甘湯葉」です。どちらも大袋で売られていて、生湯葉や普通の乾燥湯葉より格段に安いんですよ!

右が割れ湯葉、左が甘湯葉です。

「徳用湯葉」という名前で売られていることもある割れ湯葉は、文字通り、乾燥湯葉を作る途中で割れてしまったものが主体。小さなカケラや端、ヨレてしまった部分なども入っています。

一定の大きさと形が必要な平湯葉としては販売できないものを集めているので見た目は悪いですが、味は普通の乾燥湯葉と同じ。

湯葉春巻きや湯葉寿司のように大きな版を使ってなにかを巻くような料理には使いにくいけれど、それ以外には全く問題ありません。

そして、甘湯葉は豆乳を熱して薄い膜=湯葉をどんどん引き上げていくという湯葉の製造過程で、薄く繊細な湯葉が引き上げられなくなってから最後に残った豆乳で作られる湯葉。

豆乳が煮詰まっているので濃厚な甘味があり、色の濃い湯葉になります。これも乾燥湯葉の一種ですが、かなり分厚いので半生といった感じに仕上げられています。

割れ湯葉はとにかく便利!サラダや丼など自由自在に使える

割れ湯葉は小さいので戻さずそのまま料理に使えますし、なんといってもリーズナブルなのでたっぷり使えます。

例えば…
○味噌汁や吸い物、麺類、煮物にそのままいれる
○だし汁で戻してちらし寿司の具に
○ほうれん草などのおひたしや白和えに混ぜる
○甘辛く煮て佃煮に
など、使い方はいろいろ。

湯葉サラダ

割れ湯葉をぬるま湯やだし、コンソメなどで戻してサラダに加えると独特の食感が良いアクセントに。実は、戻さず使っても野菜の水分で適度に柔らかくなります。

湯葉丼

<作り方>

  1. 麺つゆを好みの味に薄めて煮立て、割れ湯葉を加えて湯葉が白っぽくなるまで煮る
  2. (1)に水溶きした葛粉か片栗粉を加えてとろみをつける
  3. ご飯の上にたっぷりかけて三つ葉を添える

甘湯葉が手に入ったらおやつやおつまみにもどうぞ

甘湯葉は京都なら湯葉の製造元や食料品店で買えますし、デパートや駅の名産品コーナーに置かれていることもあります。最近はネットでも手に入りますよ。

半生なので夏は冷蔵庫に入れた方が良いけれど、それほど神経質にならなくても大丈夫です。1枚がこんな風に大きく分厚いので、使う時は手でちぎるかハサミで切ってください。柔らかくなるまで少し時間はかかりますが、普通の乾燥湯葉と同じように使えます。

甘湯葉はとても味が濃いのでそれを生かす料理がおすすめ。例えば、素揚げするだけでも酒肴やおやつにぴったりの一品になります。

ほかにも…
○細く切ってかき揚げに混ぜる
○戻してからバターで焼いて湯葉ステーキ風に
○八宝菜など中華風の料理に
○だしやコンソメで柔らかく煮てからすりつぶしてポタージュ風に
○厚みを生かしてなにかを包んで蒸したり揚げたり
など使い方はいろいろ。

栄養豊富で味わい深い湯葉、気軽に味わいましょう!

大豆の栄養がぎゅっと詰まった湯葉は、育ち盛りのお子さんや、骨粗鬆症が気になる年代の方にもおすすめの食品。乾燥湯葉なら保存もしやすいので常備しておくと便利です。

割れ湯葉や甘湯葉といった京都の食べ方を参考に、湯葉をもっと食卓に取り入れてみませんか?