宮崎県宮崎市在住のオタク系スイーツライター・和山エリーです。大学進学を機に宮崎市へ移住。人情溢れるあたたかいこの街に魅せられ、さらには宮崎の豊富な「食」の魅力の虜になりつつあります。10月8日の「ようかんの日」にちなんで、今回は「鯨ようかん」をご紹介します。地元宮崎在住であっても手に入れる手段が限られるので、「幻のお菓子」とも呼ばれています。鯨ようかんのルーツをたどりつつ、さらにこれを美味しく食べるコツについてご紹介したいと思います。

「幻のお菓子」として名高い宮崎のご当地スイーツ

宮崎のスイーツと言えば、「チーズ饅頭」が全国的には最もポピュラーです。しかし、宮崎県民からは根強く愛されていながらも、他県においては知名度が極めて低い隠れたご当地スイーツが存在するのだとか。

その名も「鯨ようかん」です。基本的にはその日の内に食べなければいけないということで、製造される数にも限りがあります。

「鯨ようかん」というネーミングではあるものの、もちろん原材料に鯨が使用されているわけではありません。米粉を練って伸ばして餅のようにして、さらにそれをあんこで挟んでから蒸し器で蒸して製造される和菓子です。

「鯨ようかん」というネーミングのルーツについても見てみましょう。このお菓子は宮崎市の佐土原(さどわら)という地区が発祥になります。モデルの蛯原友里さんの出身地でもありますね。

鯨ようかんが誕生したのは江戸時代で、佐土原は「佐土原藩」として栄えていました。その4代目の藩主の島津忠高氏ですが、26歳という若さでこの世を去ってしまいます。そのため、忠高の息子である万吉丸が2歳という年齢にして「世継ぎ」となることになりました。万吉丸の母の松寿院は、わずか2歳の我が子が藩主となるという事実をたいそう心配したのだとか。

そこで松寿院は、万吉丸に「広い大海を泳ぐ鯨のように、たくましく力強く育って欲しい」という願いを込めて、鯨の姿に似せたようかんを作らせたのだそうです。これこそが「鯨ようかん」の始まりになります。

くじら羊羹の由来(宮崎市観光協会)

鮮度が命!保存料不使用の手作りスイーツ

これが鯨ようかんで有名な、佐土原の「阪本商店」さんの商品です。ルーツを知った後にこのパッケージを見ると、感銘深いものがありますね。

パッケージの裏に鯨ようかんの取り扱いについて記されていますが、その日の内に食べてしまうのが基本で、食べきれない場合には一つずつラップに包んで冷凍保存をし、自然解凍もしくはレンジや蒸し器を使って解凍して再度食べるのが望ましいようです。冷凍保存ができるとはいえ、なるべく早く食べるようにするのが良いでしょう。

このように、鯨ようかんはとにかく新鮮さが命のスイーツです。売り切れる分しか製造されないので、手に入らないこともしばしば。「幻のお菓子」と言われる所以ですね。

鯨ようかんにひと手間加えてさらに美味しく

甘さ控えめのあんこにもっちりとした米粉がマッチして非常に美味しい鯨ようかん。これに少しの素材を足すだけで、いろいろな風味を楽しめます。早速見ていきましょう!

鯨ようかん×生クリーム(チョコレートシロップがけ)

鯨ようかん自体が甘さ控えめなので、生クリームとチョコレートシロップという組み合わせを加えてもとても美味しく食べられます。見た目も可愛らしくなるので、お客様をおもてなしする時などにも良いですね。女子受けもバッチリの一品です。

鯨ようかん×ソフトクリーム

これもまた絶品スイーツです!鯨ようかんもソフトクリームも互いの風味を邪魔しないので、両者を組み合わせることによって絶妙な甘さとコクが増してさらに美味しくお召し上がりいただけます。ソフトクリームの代わりにバニラアイスを利用するのも良さそうですね。「雪見だいふく」を彷彿とさせるこの食べ方、ぜひとも一度お試しください。

鯨ようかん×クリームチーズ

「えっ…和菓子とクリームチーズ?」とちゅうちょする方もいらっしゃるかもしれませんが、これがまた合うんです。ほどよい酸味とクリーミーさが加わった鯨ようかんは、お酒のおつまみとしても美味しくお召し上がりいただけます。

特に、ビールやスパークリングワインなどの炭酸系に合いそうですね。鯨ようかんをクリームチーズと同様にキューブ状に切って盛りつけても可愛いですよ。ぜひお試しください。

このように、その鮮度もまた魅力の一つの「鯨ようかん」。宮崎空港や宮崎駅などで購入可能ですが、午前中のうちに売り切れてしまうことが多いようです。近頃は通信販売で冷凍便で全国発送をしている店舗もあるようなので、遠方の方はそれを利用するのも手ですね。宮崎県民が愛する幻の味を、ぜひ一度ご賞味くださいませ。