日本とロシアで未来志向の経済協力が始まろうとしている。ロシア・ウラジオストクで9月6、7日に開催された東方経済フォーラムに合わせてロシア出店に関心の高いラーメン店がテスト営業を始めた。各ラーメン店は10月29日まで営業しているが、ロシアの消費者に味が合うかどうかなどをテストするだけでなく、現地のビジネスパートナーとの関係、店舗オペレーションなど日本のラーメン店が築き上げてきた経営のノウハウとロシア市場とのマッチングを検証し、所管官庁の農林水産省は日本の外食店の海外出店を促す考えだ。

「ラーメン鶏源」など4店がテスト営業

今回の出店は日本とロシアで昨年5月に決めた8項目の協力プランのうち「中小企業交流・協力の抜本的拡大」の一環で、極東の産業振興につなげる。農水省は中小の多く、海外への進出に力を入れている外食産業に注目した。

出店したのは、「ラーメン鶏源」「麺や琥張玖(こはく)」「麺屋政宗」「なりたけ」の4店。10日間ごとに店舗が切り替わり、日本と同じ商品を提供する。設備などは公的機関が準備、人件費、材料費などは店舗が負担。

提供された鶏源の味噌ラーメンは日本と同じもの(写真提供=農林水産省)

9月6日のオープニングセレモニーでは、日本、ロシアのメディアも取材するなど、話題性は高い。また、オープニングセレモニーの翌日からの来客者数は8日に164人、9日221人、10日163人となり、1日200人以上の来客数を目指していたが、届かない日もあった。

農水省は「ロシアでは行列して待つ習慣がなく、あきらめて帰る客が多かった」とみている。行列を逃がさない接客対応が課題とみていて、日本の市場とは異なる。

ロシアではモスクワなどで寿司店が人気で、ラーメンはこれからの商品。ロシア東部のテスト営業は、パートナーとなり得る投資家や食関係事業者との関心を高める事業だが、農水省はもう一つの事業として日本の外食産業のロシア出店に関する市場・要件調査も行う。

外資100%、ロシア事業者との共同経営など出店形態ごとに、日本の外食事業者がロシアで展開する上で必要となる有望市場になる都市、商慣行、法規制などで調査する。

日本の外食事業者がアジアなどに出店した結果、現地パートナー企業がそのノウハウで独自に展開してしまう例や、日本式の店舗オペレーションに対応できる人材が確保できなかった例も出ている。

ロシアでの出店ではアジアでのマイナス面を克服する狙いもある。

◇日本食糧新聞の2017年9月20日号の記事を転載しました。