3年ほど前から、テーブルに直接置かれたシーフード料理を手づかみで食べさせるレストランが登場してきました。フォークやお皿もなく、ちょっと違和感がありますが、豪快な演出で話題になりました。
インドのカレーをおいしく食べるには、実は手食がおすすめです。今回は、食べ物を五感で感じ、美味しさと栄養を口に運ぶ万能な食具「手食」についてご紹介しましょう。

実は世界の4割!最も多い食作法「手食」

インドの手食は、右手の指の人差し指、中指、親指の3本を使うのが作法です(薬指は添えるだけ)。指で使っていいのは、第2関節まで。やってみるとなかなか難しく、きれいに食べるには訓練が必要です。

でも、手食に慣れてくると、スプーンで食べた時に金属の味を感じるようになります。指先の感触も楽しめるので、2度味わえるとも言われています。

世界の三大食作法は箸食、ナイフ・フォーク・スプーン食、手食です。割合を見ると、箸食が30%、ナイフ・フォーク・スプーン食が30%、そして手食は40%と最も多いのです。

食具の使用は、人間が食べ物を加熱調理するようになったことにも起因します。食具の使い方は、料理の形態や器、食事様式やマナー等と関連し、国や民族それぞれに作法があります。

中でも、手食の歴史は最も古く、今でも続く食法です。主に、東南アジア、南アジア、中近東、アフリカ、オセアニア地域で行われています。

手食には宗教的な意味合いもあります。ヒンドゥー教では、神から与えられた身体が最も清いとして、食器具よりも清潔に洗った自分の手のほうが衛生的という概念があります。手食は精神文化とも深いつながりを持っているのです。

多くの手食の基本は、右手のみ使って食べることです。不浄とされる左手は使いません。

昔の米には、石等の硬質異物が含まれていることがありました。指先で料理を混ぜてまとめる手食は、石等が入っていないかの確認につながりました。さらに自分の噛む力に適した柔らかさであるかどうか、指先で感じながら口に運びます。手食には身を守る意味もあるのです。

日本食ならではの手食 「寿司」「おにぎり」

手食の文化は日本にもあります。粘りが強い日本米は、寿司やおにぎりとして手食で食べるのに適しています。

寿司職人は鮮度の高い握り寿司を提供するために、手際よく素早く握ってくれます。ふんわりと握られた酢飯とネタに醤油をつけて一口で食べるには、手食が最も適しています。

親指、人差し指、中指の3本で寿司を優しく持って横に寝かせ、ネタが下になるように先の方だけ少し醤油をつけて、舌にネタ部分がつくように、寿司の上下は逆さのまま口に入れて一口で食べます。箸で食べるのとは違った味わいを感じられるので、未経験の方はお試しあれ。

笹ずしや朴葉ずしのような殺菌効果のある葉で包まれた寿司は、葉をめくってそのまま口で食べられるように硬めに押されています。

おにぎりは手食する日本のソウルフードです。しかし、近年のある調査によると、工場で製造された衛生的なおにぎり以外食べられない人が4人に1人いるそうです。食品衛生が周知した分、愛情込めたおにぎりまで敬遠されてしまうのは少し残念です。

手食パーティーで新しい美味しさの発見を

寿司をつまんで食べる、サンドイッチを両手で挟んで食べる、パンをちぎって食べる、クレープを握って食べる等、手で食べることは食べ物を五感で感じることです。あらゆる食具に変化する手指は、美味しさと栄養を口に運ぶ万能な食具です。日本人的には、食べ物を美味しく食べられる五本箸といえるかもしれません。

食材の選択にも触感は重要です。指先の感覚を鍛えて、美味しい食べ物を五感で選べるようになりましょう。

皆さんもご家族や仲間同士で様々な食べ物の“手食パーティー”をしてみませんか? 新たな感覚で、新しい美味しさの発見がきっとありますよ。

なお、手食で食べる前には、まず手をきれいに洗うことは必須ですね。