「小麦アレルギーの息子においしい麺を食べさせたい」との願いを込め、父親自らが会長を務める自社で、グルテンフリー玄米麺「スーパー麺」を開発、発売した。2021年11月からは、福井県のブランド米「いちほまれ」を使った玄米麺「いちほまれスーパー麺」を発売した。

麺を開発、発売をしたのはネット通販事業会社「ウォンツ」(本社・福井県鯖江市)。「ラーメン、パスタを食べると腹痛を起こす」。息子が体調の異変に気づき始めたのは、今から約5年前、高校卒業のころのことだった。複数の病院にかかったが、原因が分かるまでに時間を要した。民間の検査機関で血液検査をしたところ「遅延性小麦アレルギー」だった。

麺を食べると体調不良になるのをふびんに感じた父親。小麦不使用の麺を探し、全国各地を歩いた。時には、手打ちパスタを自ら作ったこともあった。小麦のような食感や味わいを求めながらも、なかなか「これ」という麺と巡り会うことはできなかった。探し始めて1年が過ぎたころのことだった。突如として思いたった「自分で作ればいいじゃないか」。

自分のイメージする麺を作ってくれる工場探しに奔走した。たどり着いたのは、米粉で麺を作る宮城県内の工場。宮城県産の「ササニシキ」を使用した玄米麺を完成させた。食べた息子は笑顔でこう話した。「コシ、もっちり感があって、おいしいね」。

同社は、2019年から商品化、これまでに累計約6万食が売れている。玄米を使うことで、ミネラルや食物繊維などが豊富に含まれ、無添加にもこだわった。「麺を食べられてうれしい」。食物アレルギーを抱えた人たちの声も多く寄せられているという。

同社は2021年11月から福井県産の「いちほまれ」を使った「いちほまれスーパー麺」の発売を開始した。「いちほまれ」は「コシヒカリ」発祥の地でもある福井県が6年をかけて開発したブランド米。「いちほまれスーパー麺」について「甘さともっちり感、従来のスーパー麺とは違う食感を感じ取れるのでは」と話すのは山中宙(ひろし)同社プロジェクトリーダー。

福井県内のJA直売所でのテスト販売などを経て、1月には同県アンテナショップ(銀座、南青山)でも発売した。同氏は「小麦アレルギーの人はもちろん、グルテンフリー、健康志向への関心が多い都心部の人にも知ってもらうきっかけになれば」と説明している。

◇日本食糧新聞の2022年1月24日号の記事を転載しました。