お酒を飲むのも好きですが、調味料としても様々なお酒を使う調味料研究家の松本葉子です。今回は、日本酒を使って作る日本古来の調味料「煎り酒」をご紹介したいと思います。
煎り酒は、江戸期の料理書「料理物語」にもでてくる液体調味料で、江戸時代に醤油が普及するまでは広く使われていたそうです。
淡い色合いで、塩味だけでなく旨みとほのかな酸味がある煎り酒は、食欲が減退しがちな夏にぴったりの調味料。家庭でも簡単に作れるので、早速試してみませんか?

材料も作り方もシンプル。しかも少量から自作可能

早速、煎り酒の材料と基本の作り方を紹介しましょう。

材料

<必須材料>
・日本酒 200cc程度 純米酒が望ましい
・梅干し2個 塩分8%以上で、塩と紫蘇のみで漬けられたもの

<できれば加えたい>
・出汁昆布 5cm角

<場合によって加えると良い>
・かつお節 適宜  かつお節かまぐろぶしで、できれば血合い抜きのもの。淡泊な味の刺身などに用いる時は加えない方が良い

作り方

・小鍋に日本酒と梅干しを入れ、弱火で半量程度になるまで煮詰めてから、漉す
・鍋はホーロー、ステンレス製などを使う
・アルコールの残量が心配な場合は、酒を煮切ってから作ってもよい

<昆布を加える場合>
・日本酒に昆布を1時間以上浸けておく
・昆布を浸けておいた日本酒に梅干しを入れて弱火にかけ、煮立つ前に昆布を取り出す
・昆布の風味が強くても良い場合、多少のぬめりがでても良い場合は煮詰めるまで入れておいても可

<かつお節を加える場合>
・梅干しを加えた酒を半量程度に煮詰めた後、最後に火を強めかつお節を加えて一煮立ちしたら漉す。好みで最初に加えて煮詰めても可

煎り酒づくりの注意点と材料アレンジ

煎り酒の味は、材料の日本酒と梅干しの質に大きく左右されます。特に梅干しは重要で、最近多い塩分控えめタイプやはちみつなどの甘味を加えた梅干しでは煎り酒がうまく作れないのでご注意ください。

基本の日本酒、梅干しの他に好みで加えるものとしては、昆布、かつお節以外に、
・醤油 ・みりん ・砂糖 ・煎り米(玄米茶の玄米でも)
などが考えられます。用途によって、材料をアレンジして作るのもよいでしょう。

保存は清潔な瓶などの容器にいれて冷蔵。1週間程度を目安に使い切るようにしてください。

煎り酒は和・洋・中、さまざまな料理に使えます

煎り酒は、日本古来の調味料ということで和食用と思われがちですが、実は多彩な食材と相性が良く、使い方も自由自在です。

和食

・刺身醤油の代わりに。特に白身魚やイカ、タコ、貝などによく合います。
・和え物に。梅干しを多めにして作ると酢の物風にも使えます。
・混ぜご飯、ちらし寿司などの味付けに。
・焼き魚にかけて。ブリなどの脂の多い魚がさっぱりと味わえます。
・煮物を作るときの塩、醤油代わりに。色をつけずにこくがだせます。

洋食

・サラダドレッシングに。オリーブオイルとの相性も良いです。写真はじゃこドレッシング。
・冷製パスタの味付けに。
・野菜や魚のマリネ液として。梅干し多めで作るとよく合います。
・魚や肉の下味つけに。ポリ袋に煎り酒と材料をいれて揉み込むと便利。
・魚介のカルパッチョに。薄切りにした素材に刷毛で煎り酒を塗るのもおすすめ。

中華

・中国風刺身やサラダ、クラゲなどの味付けに。
・酢豚や酢鶏の下味つけに。臭み消しにも役立ちます。
・スープやあんかけの隠し味に。煎り酒を加えると味に深みがでます。

ほかにも、使い方はいろいろ。液体として使うだけでなく、ゼラチンや寒天で固めたものをキューブに切って料理に添えるのもおすすめですよ。

この夏は是非、煎り酒をレパートリーに加えてみてください。