JA北大阪(大阪府吹田市)が発売する「農協の飲めるごはん」=写真=に注目が集まっている。水も火も使えない非常時に、そのまま飲むだけで栄養補給でき、特定原材料とこれに準じる27品目不使用で、食物アレルギーにも対応。しかも地元産米を使った6次産業化事例で、コメ消費拡大にも貢献する。

同品は、地元産ヒノヒカリを主原料とする穀物飲料で、栄養と水分を同時に補給できる。コメと相溶性に優れるハトムギと小豆を炊き上げ、穀物が沈殿しにくい技術を生かして、程よい食感を生かしたまま、5年間の長期保存を可能とした。

商品化のきっかけは阪神・淡路大震災にさかのぼる。震災直後、水道やガス、電気の供給がストップし、飲み水にも困る中、水分なしでは喉に通りにくいビスケットや乾パン、加熱・加水が必要なインスタント食品が食べられない経験があった。

フレーバーも、誰もが好むご飯の友「梅・こんぶ風味」に加え、疲労を軽減し、子どもも飲みやすい甘みがあり、心身の疲労を癒やす「ココア風味」と「シナモン風味」3品をラインアップしている。

こうした同品の特徴が、マスコミで盛んに取り上げられ、同JAでは、昨年8月の発売以来、予想を上まわる10万本超を販売している。しかも、自治体での購入が多い非常用災害食にあって、販売の8割を個人消費が占め、宮城や福島、熊本県など被災地からの問い合わせが増えている。

さらに6月、東京ビッグサイトで開催された「防災産業展」で「災害食大賞2019」の「特別賞:日本食育学会賞」を受賞。4月からは地域住民の要望で同JA本店に同品専用「災害食の自動販売機」を設置し、さらなる社会貢献を目指している。

◇日本食糧新聞の2019年8月30日号の記事を転載しました。