今、「サバの水煮缶」がブームになっており、入手が困難になるほど売れているようです。また、サバの水煮缶を使ったレシピ本も売れ行きが好調のようで、きっかけはテレビのいわゆる健康番組のようです。サバの水煮缶が健康に良いとうたったところ、視聴者の反響を呼んだのだとか。
今回は、サバそのものを使うことで魚油をできるだけ逃さないレシピを2つ紹介します。片栗粉や小麦粉でサバをコーティングする簡単レシピです。

サバの南蛮酢治部煮

サバに片栗粉をまぶしてフライパンで焼き、甘辛くて酸っぱい煮汁で煮ます。すると、表面の片栗粉が溶けて、煮汁にとろみがつきます。食材に粉をはたいて煮汁で煮る料理を治部煮(じぶに)と言います。石川県の郷土料理です。

【材料(2人分)】
サバ(生、あるいは冷凍品を解凍) 半身1切れ(塩サバの場合は、煮汁のしょうゆを減らす)
片栗粉 適宜
油 大さじ1
玉ねぎ 中1/2個
水 1/4カップ
豆板醤 小さじ1/2(別の辛味調味料でも可)
砂糖 小さじ1
酒 大さじ1
酢 大さじ1
しょうゆ 大さじ1/2

【作り方】
1.サバを二等分して、片栗粉をまぶす。玉ねぎを薄切りにする。
2.熱したフライパンに油を入れ、(1)のサバを焼く。

3.(2)の片面が焼けたらひっくり返し、豆板醤、玉ねぎを加え、水、砂糖、酒、酢、しょうゆを入れて煮る。

4.煮汁が沸騰し、とろみがついたら完成。

衣がついているのでDHA、EPAが煮汁に溶け出しにくいとはいえ、多少は溶け出しているかもしれません。それがもったいないということでしたら、ご飯の上に乗っけていただくというのはいかがでしょう。これなら余すことなくDHA、EPAをいただけます。

サバのレモンバター焼き

今度は、サバを小麦粉ではたいてバターでムニエルにし、レモン汁をかけるだけの簡単料理です。

【材料(2人分)】
サバ(生、あるいは冷凍品を解凍) 半身1切れ
塩 少々(塩サバの場合は不要)
小麦粉 適宜
玉ねぎ 中1/2個
バター 大さじ1(油大さじ1と、仕上げにバター1片でも可)
レモン 1/2個

【作り方】
1.サバを二等分して、塩・小麦粉をまぶす(塩サバの場合は塩不要)。

2.玉ねぎは薄切り、レモンは二等分にする。薄い輪切りを1枚作り、残りのレモンは絞ってレモン汁にする。

3.フライパンにバターを入れて火をつけ、(1)を入れて焼く。片面が焼けたらひっくり返し、玉ねぎを入れ、サバに火を通す。

4.レモン汁を降り、器に盛り、レモンの輪切りを添えて完成。

バターの香りとレモンの酸味と香りで、減塩でもおいしくいただけます。

サバ水煮缶の健康価値は

サバの水煮缶にはどのような健康的価値があるというのでしょうか。サバの水煮缶が健康に良いとうたっているマスコミやネットでは、このように主張しています。

1)サバの水煮缶に含まれる魚油のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸。IPA:イコサペンタエン酸ともいう)は、動脈硬化を防ぐことで、脳卒中や心臓病のリスクを減らす。
2)サバを焼くと魚油が少し落ちてしまうが、サバの水煮缶は、生のサバを缶に詰めてから加熱するので、DHA、EPAが逃げない。
3)サバにはビタミンB2やD、Eが豊富。
4)サバの水煮缶は骨や小骨も柔らかく煮えているので、カルシウムも摂れる。
5)サバの水煮缶は空気を抜いた缶の中で加熱しているので、魚油が酸化していない。

そのほかにダイエット効果や、満腹感が持続し食欲が抑制されるとか、美肌効果などをうたっているサイト等も見られましたが、これについては科学的な調査にもとづく根拠(エビデンス)があるものとは思えませんでした。

1〜5については、確かにその通りかもしれませんが、水煮缶をそのまま食べることはなく、何らかの調理をすることになるので、結局魚油もある程度落ちるし、酸化もするのではないかと思われます。

DHA、EPAが多い食材には、サバのほかにもサンマやイワシなどの青魚もあります。サバの水煮缶ばかりに注目が集まるのも不思議な気がします。

また、水煮缶のデメリットとしては、冷凍サバに比べて価格が高い場合がある、空き缶はリサイクルできるとはいえ、環境に優しいとは言えない(空き缶の輸送やリサイクルに化石燃料や電気などのエネルギーが使われる)といったことが挙げられます。

そのことを考慮に入れると、あまりサバの水煮缶ばかり偏重しないほうがいいのではないかと思いますが、皆さんはどうお考えですか?

今、「エシカル消費(倫理的消費)」という言葉が注目を集めています。環境や社会貢献などを考慮した消費行動のことです。

参考サイト:
「倫理的消費(エシカル消費)」普及・啓発活動 消費者庁

たかが空き缶かもしれませんが、私たち一人ひとりの日々の消費行動の積み重ねが、世の中を大きく変えていくかもしれない。そんなことも考えています。

また、日々の食事はいろいろな食材を使ったさまざまな料理をいただくのが望ましいと思います。何かに偏った食事というのは、栄養素のバランスの面からも、楽しさの面からも好ましくないからです。

何か一つの食材や栄養素を過大に信奉したり、否定したりすることを「フードファディズム」と言います。マスコミや口コミ、宣伝など、ちまたにはフードファディズムがあふれています。何か特定の食品が急にブームになったときは、慌てて飛びつかず、いったん立ち止まってみてはいかがでしょう。