11月に旬を迎える山芋は、豊富な栄養素から女性人気が高い食材。その魅力をあらゆる角度から追求するのが、西宮市にある「鳴尾山芋研究所 FLAT BUSH」である。深夜からは、ラーメン店に変身するというユニークな運営で、幅広い客層からの支持を獲得している。

山芋の魅力引き出す創作メニュー約30種類

ディナータイムには、女性客が9割以上を占める同店。多品種の山芋とさまざまな食材を、豊かな発想でマッチングさせた創作料理が話題である。

店主の八代進一さんは、オーストラリアのジャパニーズレストランでの調理経験を経て、地元に戻り開業。料理には、現地での学びも反映されているという。メニューは季節ごとに更新し、約30種類を提案。前菜からデザートまで、多彩に変化する山芋のパワーに感心させられる。

研究所感が漂う、あえて簡素にしつらえた外観。店内のシックな雰囲気とのギャップにも驚かされる

初回にまずオーダーしたいのが、「山の芋Collection Classic」。同店で使用する4種の山芋(自然薯・長芋・ヤマトイモ・ツクネイモ)を、すりおろしや細切り、セミドライなどでダイレクトに味わえる、専門店ならではのメニューだ。味の違いを知り、自分の好みを探ってもらうことが狙いである。

野菜や肉、魚との組み合わせも、アイデアたっぷりに登場。例えば、定番の人気商品「舌平目×長芋の重なったムニエル ちょっと変わったバターソースで」は、ソテーした皮付きの長芋と魚を交互に挟んだ立体的な盛り付け。ソースには、オーストラリアの発酵食品「ベジマイト」をプラスして仕上げている。

深夜からのラーメンも人気

ラーメンにたっぷりのとろろをトッピングした「○濃にごり+どろどろ」(1,000円、※ラーメン860円+トッピング140円、各税込み)

また、昨年8月から、深夜のラーメン提供をスタート。午後11時からはラーメンのみの店になり、雰囲気も客層もガラリと変わる。こちらは学生中心の男性客が7割で、一気にファンが増加し人気店となった。

「体にやさしく、とろろに合う味を」と考案したラーメンは、自家製の無化調スープに醤油ダレを合わせた本格派。「にごり」「クリアー」と、醤油風味を増幅させた各「○濃」の4種類のスープを用意する。

とろろのトッピングは別料金だが、ほとんどの客がオーダーし、ご飯を投入してとろろ飯風に楽しむ人も多い。今後は、ラーメン店での海外進出を目指し、山芋を受け入れやすい地として、台湾での出店を検討中という。

「山芋は多くの種類があり、調理法で食感も変化する奥深い食材。自分は、まだ20%程度しか、魅力を引き出せていないと思う」と八代さん。未知の組み合わせや食感の研究を重ね、食べ方をアピールしていきたいと意欲を語る。

●店舗情報
「鳴尾山芋研究所 FLAT BUSH」
所在地=兵庫県西宮市池開町1-35-B 木田ビル1階
開業=2013年10月
坪数・席数=15坪・17席
営業時間=ディナー18時~22時30分、ラーメン23時~翌2時(スープがなくなり次第終了)。火・水曜定休
平均客単価=4500円(ディナー)
1日平均集客数=ディナー15人、ラーメン20~60人

◇外食レストラン新聞の2018年11月5日号の記事を転載しました。