珍しい調味料をみつけるとついつい買ってしまう調味料研究家の松本葉子です。そんな私が今までで1番驚いた調味料といえばこれ、広島県の二反田醤油が作っている「だし道楽」。
まずその形状や売り方で仰天させられた上、味わいと使い勝手の良さにも感嘆しきり。数年前に出会って一度でファンになってしまいました。
今回は、日本の食文化と「だし道楽」の関係、そして「だし道楽」を使ったおいしい食べ方をご紹介したいと思います。

「だし道楽」との出会いはなんと道端!

だって、これ、自販機で売ってるんです。

ある日の買い物帰り、自販機でペットボトルの飲み物を買おうと立ち寄った私の前に見慣れぬ自販機が。ほー、色からするとほうじ茶かウーロン茶特化の自販機?と思ったのですが、よくみると…

焼きアゴ入り? アゴがトビウオだということは知ってましたが…確かに上の段に並んでいるサンプルをみると魚が入っています!

あぁスープなのか。でも1本700円という値段はそれにしても高いかもって思ったのですが……違いました。下に英語で書いてましたもん。

「だし」ですよ。この説明読んだ人が「だし」が何なのかわかるのか?と少々気にはなりましたが、私は日本語ネイティブですから。買うしかないでしょ。「だし」。

日本の「だし」を新しい形で提供する「だし道楽」

「だし道楽」を作っているのは、広島県の江田島にある有限会社二反田醤油。濃縮だしはこれまでもさまざまな種類が発売されていて、今や多くの家庭に常備されているおなじみのみの調味料です。けれど、あご(トビウオ)だしにこだわり、しかもだしの素であるトビウオを丸ごと一尾ペットボトルに入れてしまうという発想はかなり斬新ですよね。

ところで、焼きあごでとるあごだしは、九州や西日本では比較的よく使われ、脂臭さがなくすっきりした味わいが喜ばれる上品なだしです。特に九州では、お雑煮のだしとして、また長崎の五島うどんのだしとしてもなくてはならないものになっています。

最近では、あごだしの風味の良さが広く知られるようになってきて、あごだしラーメンや、あごだしの素なども全国区で売り出されているので、召し上がったことがある方も多いかもしれません。

さて「だし道楽」の500mlペットボトルから取り出した固形物(!)が下の写真。

入っていたのは焼きあごと昆布。長崎県平戸産だというあごは炭火でじっくり焼かれているので生臭さとは無縁。独特の香ばしさがだしの味を深めています。

しかもこの焼きあご、自販機の写真をみてもらうとわかるように結構大きいんです。煮干しとかとはケタ違いの大きさの魚が一尾はいってるのはかなりのインパクト。ちなみにこれ、製造スタッフが手作業で一尾ずつペットボトルにいれているそうですよ。

スタンダードの焼きあご入り「だし道楽」のほかに、宗田節が入った「だし道楽」もあります(写真だと左の赤いラベルの方)。

どちらもベースは広島で愛されている薄口醤油なので透明感のある色合い。だから素材の色を活かしたい料理にも使いやすいんです。
※左のボトルの色が黒く見えるのは大きな昆布が入っているためです。

あごの香ばしさが効いたもの、宗田節の薫りが生きているもの、それぞれ味の個性がありますが、あごだしの特徴として、かつお節や昆布との相性が良く相乗効果も期待できるので、両方混ぜて使ってもOKなんですよ。

和洋中、さまざまなレシピにも使えるのも「だし道楽」の魅力

「だし道楽」は、濃厚だしなので薄めて使うのが基本ですが、のびがよいので薄味仕立てにしてもうまみが豊か。そのままお吸い物にできるほか、麺類、鍋、おでんなどのだしとしてぴったりです。

二反田醤油には直営のうどん店もあって、もちろんここでは「だし道楽」が使われています。つまり麺類、特にうどんとの相性は鉄板ということですね。

このほかにもおすすめレシピはいろいろ。

例えば、野菜の煮物に使うと、野菜の持ち味をひきたてながら深いうまみを加えてくれるので、普段の煮物が一気に「炊き合わせ」にグレードアップしちゃいます。これからの季節、だし多めで冷やし鉢にしてもいいでしょう。

洋風なら、パスタの隠し味にも使えるし、だしジュレを作ってみるのも素敵。だしジュレは、「だし道楽」を好みの濃さにして寒天かゼラチンで固めるほか、果実酢などを加えてポン酢ジュレにしても爽やかです。

あごだしは柑橘やオリーブオイルとの相性もとても良いので、ポン酢ジュレならこんな風にカルパッチョに添えてみるとおいしいですよぉ。

自販機には、「だし道楽」を卵かけご飯のかけ醤油に使うという方法が書かれていましたが、“「だし道楽」×ご飯”で私のおすすめは炊き込みご飯。特に、ボトルの中身が少なくなった時にはぜひ試してみてください!

「だし道楽」を6~8倍程度に薄めただしでご飯を炊くだけ。好みで日本酒や醤油を加えてもいいでしょう。この時に焼きあごや昆布ものせて炊くのがポイント!

炊きあがったら一旦、焼きあごと昆布をとりだして、ご飯を軽く混ぜてから、昆布は細切りにして刻んだ大葉とともに仕上げに散らしてみました。焼きあごはかたいので、骨をはずしてから細かく刻むと食べやすいです。我が家では骨も食べちゃいますけどね。

そしてこの「だし道楽ごはん」の楽しみはこれ。おこげ!

香ばしくてうま味が凝縮していてたまりませんっ。このおこげが食べたくて、ボトルの中身が残り少なくならなくても焼きあごを取り出して炊き込みご飯を作ってしまうほど。

料理好きをも満足させる自販機で買うにっぽんのだし

とにかくいろいろな使い方ができる「だし道楽」。決して売り方や見た目のインパクトだけのだしじゃないのです。料理好きの人にこそ使ってほしいかも。一般の濃縮だしと同じ使い方で、またさまざまな料理の隠し味に、そのほかポン酢や二杯酢、ドレッシング、焼き肉のたれなどの自家製調味料の素材として使うのもおすすめ。その上、「魚」まで食べられるのだからおトクでしょ(笑)

というわけで、「だし道楽」の自動販売機をみかけたらちょっと試してみませんか?

自動販売機は、地元広島のほか北海道、埼玉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、福岡にあるそうです。詳細は二反田醤油のHPを参照のこと。