イタリア在住のフードライター、鈴木奈保子です。4月になって新年度が始まり、皆さん何かと慌ただしく過ごしていらっしゃる時期だと思います。そんなせわしいシーズンですが、4月16日はエスプレッソの日です。エスプレッソマシンなどを手がけるデロンギ・ジャパン株式会社がエスプレッソの普及のために制定しました。
そこで、今回は本場流の美味しい飲み方をご紹介します。イタリア人が1日に何回もエスプレッソでリラックスするように、エスプレッソを楽しんでみてください。

本場イタリアのエスプレッソとコーヒーはどう違う?

多くのイタリア人が「朝、エスプレッソを飲まないと1日が始まらない」と言うように、イタリア人の暮らしには欠かせないエスプレッソ。イタリアでコーヒーと言えば、エスプレッソを意味し、日本で言うドリップ式のコーヒーはカフェ・アメリカーノ(アメリカ風コーヒー)と呼ばれます。

イタリアのエスプレッソとドリップ式のコーヒーは、同じコーヒーと言っても全然違うものです。

まず、コーヒー豆の煎り方と挽き方が異なります。「急行」を意味するエスプレッソという名前が示すように、瞬間抽出で急速に淹れるため、日本のコーヒーに比べてずっと深煎りローストで極細に挽いた豆を使います。

淹れ方も日本のドリップ方式でゆっくりと抽出する方法とは違い、高圧の加熱水蒸気を用いてあっという間に抽出します。

エスプレッソが家庭で簡単に淹れられるモカエキスプレス

“高圧の加熱水蒸気”というと何だか大層なイメージですが、高額なエスプレッソマシンがなくてもモカエキスプレスを使えば、普通の家庭で美味しいエスプレッソを淹れることができます。

モカエキスプレスは、1933年にイタリアのビアレッティ社によって発明された家庭用直火式エスプレッソマシンです。水が沸騰する時の圧力を利用してエスプレッソを淹れることができるというもので、イタリアではどの家庭にもある必需品です。最近は日本でも簡単に手に入るようです。

淹れる方法は、まず本体下のボイラー部分に水を入れます。ろうとの部分にコーヒー豆を入れて、ボイラーの水にろうとの管が入るように重ねます。上体部分を上に重ねてしっかりと閉め、家庭のガスコンロの直火にかけます。

この時、弱火でゆっくりと加熱するのがポイントです。また、コーヒーの粉はスプーンなどでぎっしりと押しこむのではなく、お湯がしっかりと隅々まで行き渡りやすくなるように、ふんわりと入れるのがコツです。

火にかけることによってボイラー部分でお湯が沸くと、お湯がろうとの管を通ってコーヒーの粉に到達し、上部の中央の管からコーヒーが抽出されるという仕組みです。こうしてエスプレッソは瞬間的に抽出できるため、えぐ味や雑味がないうえカフェインも少ないと嬉しいことずくめです。

本場流エスプレッソの美味しい飲み方

エスプレッソは、デミタスカップと呼ばれる約100CCほどの小さいコーヒーカップで飲むのがイタリア流。コーヒーの量も約30CCと、いたって少量です。このコーヒーを、ごくごくっと、2口ほどで一気に飲み干します。

コーヒーのエキスが抽出されたエスプレッソは、ドロッとしていて濃厚な味。私は、コーヒーの味そのものを楽しむために砂糖を入れずに飲みます。確かにかなり苦いですが、コーヒーのうま味、コクをしっかり味わえます。

ところが、普通のイタリア人は甘いものが大好きなので、砂糖をたっぷり入れて飲みます。小さじ山盛り2杯というのもザラです。飲んでみるとコーヒーの苦みと甘みが絶妙なハーモニーを生み出して、確かに意外な美味しさです。疲れているときなどには特に美味しく感じます。

慌ただしい1日の中で、ホッとする瞬間のコーヒータイム。エスプレッソの日を機に、イタリア流エスプレッソで家庭でも手軽にくつろぎタイムを演出してみてはいかがでしょうか?