お好み焼きは大阪や広島を筆頭に各地のソウルフードとして地方色を強烈に反映した保守性の高い料理。それだけにオリジナリティーの高さで勝負するにはハードルの高い食べ物だ。そんな困難をもろともせず、小麦粉不使用、生地が主役といった大胆なレシピのお好み焼きを提案して注目を集めているのが東京・門前仲町にある「Saotome-Ke」の「ハーブと塩のOKONOMI-Yaki」だ。

米粉の生地が主役のお好み焼きを提案

香ばしい焼き色の生地の上に目玉焼きや野菜、ハーブが彩り良くトッピングされた見た目は、お好み焼きというより、カフェのパンケーキ・ランチと言いたくなるフォトジェニックな盛り付けだ。ひと口食べてみると和風だしの風味が口に広がってお好み焼きらしさを感じるが、まったく新しい食感や味に出合った新鮮さが同品の魅力である。

「従来のお好み焼きにとって生地はたっぷりの具材をつなぐ役目が主になっていましたが、生地が主役のお好み焼きを提案したかったんです」とオーナーの早乙女正雄・弥麗夫妻が語るとおり、同品のレシピは創意にあふれている。

注文を受けてから鉄板で丁寧に焼き上げる

生地の主原料は小麦粉ではなく2種類の米粉を使用。だしはカツオを一切使わず昆布と鶏がらをベースに松の実、クコの実、紅ナツメを配合したもの。これにアーモンドパウダー、山芋、卵を合わせ、しっかりとトロミが出るように練り上げる。そこにクルミと石垣島から直送されるハーブ塩を加えて調味する。これだけでも同店の独自性が伝わるだろう。

ソースなしで味わえる

「お好み焼きはソースを付けて食べる固定観念がありますが、ソースを付けると生地の個性がぼやけてしまう。素材の味を生かした生地のおいしさを楽しんでいただきたく、ソースなしで食べていただける生地を何度も試作を繰り返しました」と早乙女オーナー。

その食感は軽やかながらモッチリ。優しい味わいでありながらクセになる個性を持っている。ベース生地のみのプレーン(756円)の他、やはりソースなしで味わえるよう塩麹に漬け込んで味わい深く仕上げたポークとシーフードの2品(各850円)を用意し、二つをミックスすることも可能(950円)。

新たな看板商品として開発した「卵かけご飯の鉄板焼き」(540円・税込み)。フワトロの食感と鉄板焼きした香ばしさの組み合わせが絶妙だ

トッピングは8品を用意するが、人気はモチ(1個100円、2個200円)やチーズ(ハーフ100円、フル200円)など。これに付け合わせの野菜やグリーンを添えて提供する。1枚のサイズは18cm程度で厚さは1.5cmほどあり、食べ応えも十分だ。

お好み焼きとは思えないフォトジェニックな盛り付けも独創性が高く、まさにインスタ映えするお好み焼きといえる。

レコーディングエンジニアの傍ら同店を営業。定期的に音楽イベントを開催するなど、地域コミュニティーを育む店としても愛される。専属でサポートするミュージシャンのファンが訪れることも多い
【店舗情報】
「Saotome-Ke」
所在地=東京都江東区牡丹3-12-8
開業=2016年9月1日
坪数・席数=20坪・20席
営業時間=11時30分~15時(金~日曜と祝日のみ、LO14時15分)、18時~24時(LO23時)。月曜定休
平均客単価=ランチ1000円、ディナー3000円
1日平均客数=10~20人

◇外食レストラン新聞の2018年4月2日号の記事を転載しました。