大豆でできた肉もどきはかなり前から出回っていたが、ついに植物ベースの魚もどき食品が登場した。ハワイでのキハダマグロの呼び名「アヒ」をもじって「アヒミ」と名付けた同品は、トマトを主原料にし、見た目と食感は赤身のマグロそのものだ。マグロの乱獲を懸念したシェフのジェイムズ・コーウェル氏が考案し、ニューヨークに本社を持つオーシャン・ハガー・フーズ社が開発。高級スーパーマーケットのホールフーズがにぎりや巻き寿司に使い始めた。

ベジタリアンやベーガンの人々に

同品を使ったレストラン第1号が、カナダ第三の大都市、バンクーバーにある「ポケ」専門店の「ウエストコースト・ポケ」だ。海に面したバンクーバーは、新鮮な魚が手に入り、シーフードに対して舌の肥えている人が多い。ポケ人気もいち早く伝播している。

ハワイ生まれのポケは、魚介類の切り身に他の食材を混ぜてマリネートしたもの。ご飯の上にのせてちらし寿司のように食べることが多い。バリエーションは無限といってよく、その多様性とボウル(丼)ものの人気から、ここ2、3年で全米に広がった。

現在、ニンジンを使ったサケもどき「サケミ」と、椎茸を使ったウナギもどき「ウナミ」も開発中

同店では、客に選択肢を提供して、個々の嗜好(しこう)に合わせたマイ・ポケボウルを作るシステムを採用しているが、アヒミはその選択肢の一つとして提供している。

オーナーのザッカリー・チョウ氏は、「アヒミは、ベジタリアンやベーガンの人々にとって、またとない選択肢」と言う。質感、食感がマグロそっくりで、「マグロではない」と言われない限り、誰も分からないという。そもそもトマトにはたくさんのうま味が含まれている。客受けはとても良いそうだ。

ボウル一つで完結するヘルシーなポケ丼

自分好みのマイ・ポケボウルを作る場合、まずは、大中小の三つのサイズ、次に、タンパク質5オンス分(15$)、3オンス分(12$50¢)、2オンス分(20$)から好みのサイズを選ぶ(1オンスは約28g)。

次に、白米、玄米、オーガニックのコールスローの3種から好みのベースを選んでから、アヒミ、マグロ、サケ、タコの中から好みのタンパク質を選ぶ。

次いで、スパイシー醤油、チリフレーク、ネギ、スイートオニオン、枝豆などのミックスイン、および、ショウガ、ラディッシュ、キュウリ、キムチキュウリ、ハラペーニョ、枝豆などのトッピングを、好きなだけ選ぶ。

カニサラダ、海藻サラダ、パインアップル、マンゴーなどのプレミアム・トッピングからは2種類選び、最後に好みのソース(かけ汁)と、仕上げとして、フライド・オニオン、タロのスティック、唐辛子、ふりかけ、ごま、刻み海苔、マサゴ、豆モヤシを好きなだけ選ぶ。

ポケ丼は、とにかく明るくとにかくカラフル。色のパレットが見えるよう、透明のプラスチック容器に入れてサーブ。ソースがまたカラフルで、味だけでなく、色のアクセントを付ける。ボウルを持参した人には、その分ディスカウント。またボウルを買うごとにスタンプを押してもらい、九つスタンプをためると、10個めのボウルは無料のサービス

選択肢が多く、慣れていない人や面倒な人は、アロハ・ボウルやパシフィック・ボウルなど既成のメニューもあり、こちらも人気だ。

ポケの強みは、ちらし寿司と違い、いろいろなソースが選べること。同店では、味噌ショウガ醤油、ワサビアイオリ、スパイシー柚子スリラチャ、スモークトベーコン・アイオリ、グリーンココナツカレー、コチュ・ガーリックアイオリ、柑橘ポン酢のソースを用意している。食材は同じでも、かけるソースが違えば、まったく別の料理になる。ソースを各種用意すれば、より多くの嗜好を包括できるわけだ。

また、いろいろな食材を積み上げていくことから、タンパク質、野菜、炭水化物が一つのボウルで取れて完結できるシンプルさもいい。

早くてシンプルでヘルシー。店にとっても、具材を用意しておけば、注文の都度料理しなくとも、客の嗜好にも個別に合わせることができることが、北米のポケを始めとするボウルものの人気の理由だ。

【店舗情報】
ウエストコースト・ポケ(Westcoast Poke)
所在地=463 W 8th Avenue Vancouver, BC Canada

◇外食レストラン新聞の2018年4月2日号の記事を転載しました。