精進鉄鉢料理・京料理・茶懐石料理を提供する東京都世田谷区の泉竹(いずちく)が2月19日、「ハラール対応精進料理試食会」を開催した。2020年のオリンピック期間に来日するムスリムに対し「安心して食べられる本格精進料理の提供」を目指した新しい取組みに在日インドネシアムスリムや食品業界関係者やメディアなど約30人が参加。百貨店バイヤー、飲食業界関係者、食品メーカーの商品開発担当者は自社の事業展開にどのように生かせるかを探った。

世界のイスラム教徒(ムスリム)は現在16億人の第2位で将来的にはキリスト教22億人を超える見込み。インドネシアのムスリム率は88%で、急増する東南アジア系訪日外国人の中でも同国の訪日数は2007年の6万4000人から16年の27万人と10年で4倍に伸長。親日派が多く、日本の高い品質・技術への信頼が厚く、日本食への関心も強いが、味覚や食事マナーの違い、ハラール認証取得などの課題もある。

インドネシアのムスリム留学生

献立は「菜の花の辛子和え」や「胡麻豆腐 空豆 蝶々人参」「野菜の白酢和え 柿のチーズ博多」「揚げ湯葉の吉野かけ」など前菜から水菓子、お抹茶まで13品。醤油や酢などは横井醸造工業のハラール製品を使用し、キリンビールのノンアルコールビール「キリンゼロイチ」、月桂冠の日本酒テイスト飲料「月桂冠フリー・Alc.0.00%」も参考に用意。

招待された日本国内の大学に留学中のインドネシアムスリム3人は、「個人的には日本食が好きだが、インドネシア人は調味料の味付けの濃い料理になじんでいる。素材の味を楽しむ薄味の精進料理は特別な料理であることや、1品ずつ、素材や歴史や文化、ストーリーを紹介することで、グルメ層を引き付けられる。PRは俳優やタレントなど日本好きの有名人を招待しインスタグラムなどで発信してもらえれば効果がある」とした。

鈴木邦昌泉竹店主は、「オリンピックを迎える食に対する取組みは遅れ、ムスリムの選手や応援の方々の食事をどうするか中心軸が分からない状況にある。健康食和食の根幹である精進料理にハラール食材を取り入れることで、ムスリムの皆さまに安心して日本の食文化を楽しんでいただけるのではないか」と企画意図を紹介。

今後の可能性として、(1)喫茶感覚の精進料理の提供=飲酒を目的としない駅構内、デパ地下、ショッピングモール内での気軽に立ち寄れる軽食スタイルの精進料理の提供(2)お弁当など中食での提供=今後の民泊などの需要を背景に中食に参入。ハラール肉と精進料理を組み合わせる=(3)ムスリムの方の日本文化、日本食への理解・普及=TV、CM、雑誌、SNSなどを通じてPRする、などを提案。「五輪の主催者である東京都、観光業界や食業界の皆さんと協力していきたい」と呼び掛けた。

◇日本食糧新聞の2018年3月9日号の記事を転載しました。