アサヒビールのウイスキー製造子会社であるニッカウヰスキーは、宮城県仙台市にある宮城峡蒸溜所の見学施設「ビジターセンター」を新設し、3月27日にオープンした。「体験できる」をコンセプトに、創業者、竹鶴政孝のウイスキー造りへの情熱や歴史、ウイスキーの特徴などを、香りを体験できる展示や試飲セミナーを通して五感に訴える。設備投資額は2億6000万円で、17年の来場者数は23万人を見込む。

試飲セミナーでオリジナルのきき酒ノートも

宮城峡蒸溜所は1969年に開業し、単式蒸留器と連続式蒸留器を併せ持つ、世界でも珍しい蒸留所として稼働している。ウイスキー市場が伸長している中で、岸本健利社長は「ユーザーがウイスキーに詳しくなっている。“体験”に重点を置いた見学設備で、より深く知りたいというニーズに応えていきたい」と強調した。

エントランスホールでは、実際に蒸留に使用していたポットスチル(単式蒸留器)を展示。NHK連続テレビ小説「マッサン」の撮影にも使われたもので、触れることができる。

エントランスホールでテープカットする岸本健利社長(右から4人目)

4月下旬には、ウイスキーの試飲セミナーを新たに導入する。「シングルモルト宮城峡」のほか、キーモルト3種「モルティ&ソフト」「フルーティ&リッチ」「シェリー&スイート」とカフェ式連続式蒸留器で蒸留したグレーンウイスキーを含む計5種を試飲紹介する。

商品やブレンドについて講師の解説を聞きながら、用意された「きき酒ノート」に各ウイスキーの香りや味わい、余韻などを記入していくとオリジナルのきき酒ノートが完成する。所要時間は約80分で、各回の定員は24人。受講料は税込み1000円で、ニッカウヰスキーのホームページから事前予約が必要。

各商品の香りを比較することで、ブレンドによる香りの変化を体験できる

展示コーナーでは、モルトウイスキーの原料となる実物の大麦やピート(草炭)が並び、香りを体感することができる。各商品の香りを体験できる展示が計9ヵ所あるなど、「香り体験」に力を入れている。

また、貯蔵に使用される樽の種類や特徴についてもパネルや映像で分かりやすく紹介。樽の大きさや樽内面の違いなどが実感できる。カフェグレーンウイスキーの製造工程については、カフェ式連続式蒸留器の実物模型や映像で紹介する。

カフェ式連続式蒸留器の実物模型。カフェグレーンウイスキーの製造工程をわかりやすく解説する

企画展示では半年ごとにテーマを変えて、ウイスキー関連の展示を実施する予定。初回は竹鶴政孝と妻のリタの生涯をパネルで紹介するとともに、パスポートや婚姻届、竹鶴ノートなど当時をほうふつとさせる品を展示する。

宮城峡蒸留所の歴史や今後の展望などを紹介するシアタールームでは、「宮城峡物語」と題し、新たに製作した約6分間の映像を放映する。視聴後は仕込棟や蒸留棟、貯蔵庫といった製造工程の見学を行う。

◇日本食糧新聞の2017年4月17日号の記事を転載しました。