【服部幸應・食育コラム】育児の幸せのカギは脳内の「幸せホルモン」オキシトシンに
今回は「幸せホルモン」=(オキシトシン)について、お話しさせていただきたいと思います。アメリカの生化学者ヴィンセント・デュ・ヴィニョーが、「オキシトシン」及びバソプレシンの分析及び合成を行い、ノーベル化学賞を受賞したのが1955年のこと。
授乳時にお母さんの脳下垂体からオキシトシンが
当時、オキシトシンの働きは、出産時の子宮収縮と授乳時にお乳を出すことぐらいしか分かっていませんでした。その後の研究で、オキシトシンの多彩な働きが次々に判明。それは、授乳時にお母さんの脳下垂体からオキシトシンが出ることで、我が子をいとおしいと思う気持ちが芽生え、赤ちゃんもお母さんが好きになるということや、人との親密な関係や信頼関係を築き、不安を和らげるなどの社会行動に影響を与えることなどです。
哺乳動物ならみな持っているオキシトシンは、赤ちゃんとお母さんだけに出るのではありません。心地いいスキンシップや良好な関係性での食事、ペットを可愛がっている時、アロマセラピーなどで心と体がリラックスしている状態の時にも出ることが分かっています。
子供を可愛いと思えなくなると…
それにも関わらず、現代人は「仕事が忙しい」「めんどうだから」といった理由から、オキシトシンを分泌させる機会をわざわざ失う生活を送っています。特に今問題になっているのが、近年、児童虐待が年間万単位で増加してきました。保育園などで児童に与える「粉ミルク」などに母親の母乳に入っているオキシトシンが無いために、児童は母親に好意が持てなくなります。
また、母親も直接乳房から飲まれないためオキシトシンが出ず、子供を可愛いと思わなくなるのです。普通に母乳で育てた子の泣き声は、母親は微妙な泣き声にも反応しますが、母乳をあげていない母親にとっては、子どもの声が、ミンミン蝉のように煩わしいと感じてイライラし、つい児童を殴ったり、いじめたりするようになるのです。
楽しい食卓を囲む機会をたくさん持てるように
特に日本では、長らくオキシトシンの研究が立ち遅れていました。しかし、ここ数年でその根拠が示され、ようやく新聞や科学雑誌、テレビなどでもこの名を目にするようになってきたのです。特に自閉症の治療分野では、現在オキシトシンが脚光を浴びています。
私はこのオキシトシンの存在があったからこそ、皆さんがこのホルモンの存在と有用性に気付き、「食育」や「家族で囲む食卓」の大切さを訴え続けてきました。皆さんが楽しい食卓を囲む機会をたくさん持てるよう願っています。幸せのカギは脳内にあるのですから。
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