【服部幸應・食育コラム】植物のための現代版「ノアの箱舟」
世界には植物のための「ノアの箱舟」があることをご存知でしょうか。この「種子の箱舟」とでも呼ぶべきものは、自然災害や気候変動をはじめ、戦争など人災による植物の絶滅に備えて、ノルウェーの北方、北極海のスピッツベルゲン島に建てられました。この他に世界中に約1700のシードバンクはありますが、世界最大の施設です。
450万種の種子が保管できるシードバンク
種子収集家のベント・スコフマンド氏が提唱し、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏が主導となり、40カ国以上の協力を得て2008年に「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」(北極より1300㎞に位置しています)と名付けられ、今も操業し続けています。
海抜60m、横長のトンネルに岩盤内部に奥行き120mで掘られ、周りには永久凍土層と強固な作りとなっていて、海洋の水位が上がっても核爆弾が落ちてもびくともしない、と言われています。
そして、このシードバンクには現在、約50万種もの種子が保管されています。年に約12万もの種類の種子が加わり続けていますが、保管庫自体は450万種を収めることができますので、まだまだ保存することができる余地が残っているのです。
そもそも、このシードバンクが誕生した経緯に、たくさんの植物が今なお絶滅し続けていることが背景にあります。例えば、国連の調べによると、穀物では過去100年間で、なんと75%もの種類が地球上からその姿を消したと言われています。
私たちが普段食べている穀物や植物を後世に
私たちが普段食べている穀物や植物を、後世に残していくということにもっとこれからは関心を深めていかなくではならないのです。1種類の種子500粒を基本に収集し、5年毎に発芽試験し、20年で入れ替えしているのです。日本からは、岡山大学の研究機関が登録した味噌用大豆1箱のみ(2005年時点)です。
種を保護するということに関して、「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」が誕生した際、自然保護の専門家であるアレクサンドル・ハブルガエフ氏は次のように言っています。
「遺伝子学が学術分野に根をおろしはじめ、われわれは遺伝子プールを確保することが課題となっています。」
戦争で多くの穀物種が絶滅の危機にさらされましたが、保管がされていたことで、戦後に多くの植物が再び発芽させて復活をとげたのです。
「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」はまさしく、私たちの未来の植物を支えるのでしょう。
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