数年前には大きな盛り上がりを見せた6次産業。補助金を付け、意気揚々と参入したものの、商品は売れず不良在庫化。そんな話が後を絶たない。今では、6次産業化否定論も多く聞かれる。成功に導く鍵は何なのか。その真相を確かめるべく、土にウナギの栄養分を加えて栽培したサツマイモ「うなぎいも」の加工品を展開するコスモグリーン庭好(静岡県浜松市)を訪問した。

ウナギを使うことにより芋の甘みが増す

コスモグリーン庭好は、造園設計やリサイクル業を営む会社。7年前、農業に参入。取締役部長の伊藤拓馬氏が6次産業化事業を立ち上げた。ウナギが特産の浜松。ウナギ加工業者が今まで廃棄していたウナギの頭や骨をサツマイモ栽培の肥料として使い、うなぎいもと命名した。

ウナギを使うことにより、芋の甘みが増すとのこと。個性的なうなぎいものキャラクターとともに商品展開を進めている。2011年には、6次産業化法の認定を受けた。

地元の活性化を進める仕掛けとして、13年にはうなぎいも栽培とそのブランドを管理する生産者組合「うなぎいも協同組合」を設立し、理事長に就任。現在は、30以上の生産社(者)が組合員として加盟。大胆ともいえる広報戦略で話題性を創出し、注目を集めることで地域を巻き込んできた。

干し芋の袋詰め作業

また、ビジネスモデルも非常に興味深い。自社で加工品製造するだけでなく、組合から外部加工業者へ原料となるうなぎいもを卸している。しかし、それには条件がある。うなぎいもの味が生かされているか、デザイン表現が適切かなどを組合が審査し、認定された商品のみが、うなぎいもブランドとして販売を許可される。

さらには、外部加工業者はうなぎいも商品の売上額に応じて、ロイヤルティー(商標権の使用料)を支払う仕組みとなっている。

うなぎいも協同組合理事長も務める伊藤拓馬氏

今では台湾、シンガポール、香港への輸出が始まった。特に台湾での展開が好調。現地の人からもキャラクターの人気は圧倒的で、言葉の壁を越えブランド力を高める大きな手段となっている。「将来的には台湾現地法人と組んで、現地で加工品を生産し販売につなげたい」と熱く語る。

◇日本食糧新聞の2017年8月4日号の記事を転載しました。