市販酒のトップを決める「サケ・コンペティション」を運営するなど日本酒のイメージ向上に尽力してきた東京の有力酒販店・はせがわ酒店が、新澤酒造店(宮城県)、来福酒造(茨城県)、平和酒造(和歌山県)、酔鯨酒造(高知県)の蔵元4社とともに日本酒の容器革命に挑戦する。プレミアム日本酒を高いバリアー性を持つPETボトルに入れて、8月17日から発売。

「PET=安い日本酒」とのイメージを払拭(ふっしょく)するため、特定名称酒に限定し、ラベルデザインにも高級感を持たせた。料飲店への提案を進め、18年には輸出もスタートする予定。日本酒輸出拡大への容器革命の貢献にも期待が掛かる。

はせがわ酒店の長谷川浩一社長は「ガラス瓶は重く破損の危険がある。酒類業界で容器革命は急務で、品質を損なわない軽量容器の採用は将来的にも重要」と強調する。採用したのはDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングのPETボトル。特殊な炭素膜を内側に施すことで、茶瓶と同程度に酸化を抑制し、味わいや香りを保持する。

フルシュリンクのラベルでボトル全体を覆うため、紫外線などの影響も抑える。大手メーカーが一部の生酒で採用しているが、「一般的な65℃での火入れ(加熱処理)が可能」(長谷川社長)なことから、幅広い商品展開ができると判断した。

瓶と比べ重さが33%減少することから、輸送コスト削減のメリットも大きい。テスト輸送と現地での試飲会を行ったオーストラリア、香港では、品質面と扱いやすさを両立した日本酒として好評だったという。

蔵元では半年間にわたり、品質検査を実施。味わいの劣化はないと見解は一致。「ワインもPETボトルの採用が広がっている。お客さまの持ち運びや保存にも便利」(酔鯨酒造の大倉広邦社長)、「日本酒の未来を考える際に、PET容器は極めて重要」(平和酒造の山本典正専務)など造り手側も期待を寄せる。

今回発売する商品は、新澤酒造店の「あたごのまつ 純米吟醸」(予定小売価格1160円)、来福酒造の「来福 純米吟醸」(1160円)、平和酒造の「紀風 純米吟醸」(1180円)、酔鯨酒造の「酔鯨 特別純米」(1100円)。今後12アイテムまで増やす計画があるという。当面は東京駅、表参道ヒルズなどのはせがわ酒店の直営7店舗で試飲販売し、品質と味わいの訴求に努める。

◇日本食糧新聞の2017年8月16日号の記事を転載しました。