「食育」で特に重要な要素は子育てです。中でも「三つ子の魂百までも」や「3歳児神話」という言葉がありますが、乳児期から3歳までの時期を今一度見つめ直しましょう。
近年、児童虐待や子どもが非行化する要因に母子関係の形成不全があると指摘されています。まず、3歳までの間に母親と子どもの関係形成が十分にあったか否かによって、子どもの将来の対人関係に影響が出る可能性があります。

授乳中に母親の脳内で分泌されるオキシトシンの作用は

3歳までの親子関係が一生を左右すると言っても差し支えはないでしょう。なぜなら子どもの対人関係は、自分の母親との関係の基礎の上に築かれるものであり、母乳を飲むことでオキシトシンというホルモンが脳下から出ることで相互関係が良好になることが証明されました。

母子関係形成には、生まれてから3歳までに重要なステップがあります。特に重要な刷り込み(インプリンティング)が終了するのは生後6ヶ月頃です。「子どもが母親の乳首を吸い、乳を飲む」ことで母親の脳内ではオキシトシンが分泌されます。これは、誰かを守ろうとする気持ちが生まれることにより分泌されます。

また、感染予防やストレス耐性の作用も確認されています。そして「子どもが母親の顔を見つめる」「母親が子どもに話しかける」「子どもにほほえみかける」「子どもを抱きしめる」などスキンシップの時間をできるだけ増やすことで母と子の双方に刷り込まれるのです。

家族が揃って食卓を囲む「共食」を

3歳から8歳までの6年間は家庭でのしつけを通して学習する期間で、日常の挨拶、食卓でのマナーなどがインプリンティングされるかで一般常識が子どもの中に育まれるかどうか問われる家庭教育の中でも一番重要な食育の時期です。

食育基本法が成立して満12年が経過し、また第3次食育推進基本計画(平成28年~平成32年)も進行中で、その中に「共食」の在り方が示されています。「共食」とは、家族が揃って食卓を囲むことです。

ところで小学生に食事風景を絵に描いてもらうと、近年は一人で孤食している食卓風景が多くなってきました。絵の中央にテレビやスマホがあり、1枚のお皿とコップがあるだけ。そして後ろ向きの子どもが一人描かれているのです。

小生の子どもの頃を思い出すと、家族全員で毎朝ちゃぶ台を囲み、まず「おはようございます」の挨拶から始まり、次に姿勢を正して「いただきます」と家族全員でしたものです。そして母や妹が台所とちゃぶ台を行き来し、その間お爺ちゃん、お婆ちゃん、そして父に箸の使い方、食事の食べ方や好き嫌いについてこと細かに注意されたものでした。

しかし最近は孤食ですから、テーブルに肘を付いて食べても注意する人もおらず、たまに注意すると、うるさい余計なお世話だと逆切れしたりします。

そこで我々はお互いに共食の場を意識してほしいのです。