以前は、寿司は敷居の高い専門店で食べるもので、一般のアメリカ人にはなじみのない料理だったが、もはやスーパーどころか、ドラッグストアでも売られるようになった今や、手軽に食べられるファストフードやファストカジュアルも、次々にオープン。かといって、寿司であればいいというわけではなく、これだけ競争が激しくなると、他店と差をつけなければならない。
そこで、生まれたのが手巻き専門店。「ウマ・テマケリア」は、名高いシェフのクリス・ジャックルが立ち上げたもの。注文を受けてから作る手巻き寿司は、花束のように美しく、目と舌を楽しませるだけでなく、野菜たっぷりでヘルシー。玄米の他にケールの選択もあり、サラダ感覚の寿司は、女性客に好まれそうだ。(外海君子)

シェフは日本料理店で修業

同店の名前、「ウマ・テマケリア」のウマは、日本語の「うまい」と、ポルトガル語の「1」を掛けたもの。テマケリアとは、2000年初頭に、ブラジルはリオデジャネイロのレブロンやイパネマの海岸で現れ始めた手巻き寿司のラウンジのことだ。夜遅く、暗めの照明の下、人々は、ドリンクとともに、ブラジルの海で獲れた新鮮な魚を巻いた手巻き寿司を楽しむという。

オーナーシェフのジャックルは、数々のニューヨークの有名レストランで働いた後、アジアの料理にひかれて、知る人ぞ知る、あの「モリモト」で3年間働いた。そこでジャックルは寿司米作りを担当し、日本食の精密さと丁重さを学んだという。

また、スタッフの食事も担当、毎夜、いろいろなコンビネーションを工夫して手巻きを作った。なにしろ、相手は全員、食の通(つう)だ。商品ではないとはいえ、手抜きはできない。毎夜、さまざまな味やテクスチャーのバリエーションを試し続けているうちに、テマケリアの構想が浮かび上がっていったそうだ。

ブラジルの陽気さ+日本のきめ細かさ

同店は、ジャックルいわく、ブラジルの生気あふれる陽気さと、日本のきめ細かなもてなしを合致させたもの。ジャックルは、同店のために、伝統に縛られない、自由な発想でシグネチャー寿司のメニューを用意した。例えば、青リンゴや海藻サラダ、マリネした豆腐など、ユニークなネタが連なっている。

青リンゴの甘酸っぱさ、アボカドのリッチでクリーミーな風味、天かすや揚げポテトのパリパリした食感など、いろいろな味と食感が混在し、なおかつそれらのハーモニーを楽しむ、それこそが巻き物の醍醐味(だいごみ)だ。また、寿司といえば醤油がつきものだが、ジャックルは、豆板醤とマヨネーズや、アボカドとライム、味噌とカレーなどを合わせ、ネタに応じたさまざまなオリジナルのソースをクリエートしている。

同店の寿司は、おいしいだけでなく、見た目に華やかだ。細く切ったカラフルな野菜が、はみ出るほどたっぷり巻いてある。

手巻きは6$25¢、太巻き寿司は11$50¢、ちらし寿司は12$50¢。手巻き2つとサラダや味噌汁などのサイドディッシュ1つのセットが14$、手巻き3つとサイドディッシュ1つのセットが18$50¢。

自分好みのマイ寿司を

「注文を受けてから作る」を徹底。獲れたてのシーフードや季節の野菜から好みのものを選んで作ってもらうこともできる。組み合わせは自由。ベース(白米、玄米、ケール)→シーフード→ソース→野菜→トッピングの順に選んで、自分好みのマイ寿司を作る。

日本でも、おしゃれで野菜がたっぷり食べられ、おいしいだけでなく見た目も美しい、サラダ感覚の寿司は、特に女性客の間ではやるのではないだろうか。

このチェルシー店の他、人気のフード・ホールの「ゴーサム・ウエスト・マーケット」に2号店をオープン。ハンバーガーやフライドチキンなど定番のファストフードの代わりに選ぶヘルシーなチョイスとして、人々に人気だ。

◆人気メニューベスト5

  • 「ウマ・リット(サケ、マグロ、豆板醤マヨネーズ、キュウリ、ニンジン、天かす、ごまを巻いた太巻き寿司)」(12$50¢)
  • 「ルークス・ロブスター・スシ・ブリトー(ロブスター、ケール、赤ピーマン、レモンワサビ・アイオリ、パリッと揚げたポテトを巻いた手巻き寿司)」(11$25¢)
  • 「スパイシーツナ・テマキ(マグロ、豆板醤マヨネーズ、天かすを巻いた手巻き寿司)」(6$25¢)
  • 「サカナ・チラシ(マグロ、サケ、赤ピーマン、ニンジン、キュウリ、ニンジンと大根のなます、アボカド・ライム、豆板醤マヨネーズ、ごまをのせたちらし寿司)」(12$50¢)
  • 「イサラ・サーモン・テマキ(サーモン、海藻サラダ、ショウガ味噌を巻いた手巻き寿司)」(6$25¢)

<事業データ>
ウマ・テマケリア(Uma Temakeria)/所在地=64 Seventh Avenue New York NY/開業日=2014年10月/営業時間=全日 午前11時~午後11時/客席数=16席/平均客単価=12$

◇外食レストラン新聞の2017年5月1日号の記事を転載しました。