オリーブオイルの有力生産国の一つであるトルコにとって、オリーブオイルは日常に浸透する必需品でもある。古くはランプ用オイルや石けんなどとして使われ、食卓には毎食登場する。暮らしのすべてに深く根付く。

摘みたてには生命感あふれる苦味・渋味が

トルコ・ウルラ市の農村ウズベクでは、農園でのオリーブ摘みがシーズンの日課だ。摘みたてを手に取り、作柄を確認する。袋一杯のオリーブは各家庭で使用され、口に入れると生命感あふれる苦味・渋味が広がる。「木によって摘むタイミングがあるんですよ」。作柄を確認する高齢者は若々しく、誇りに満ちる。

同村の一般的な家庭料理をみてみる。「ドルマ」や「ガルバンゾスープ」などが定番で、いずれもオリーブオイルにより風味や栄養価が大きく増す。調理法や味付けはシンプルで、飾らない。それだけにオリーブオイルの魅力を引き出す。

生活必需品だけに、科学的な側面での有効利用の研究も進む。イズミール北のタイリエリにあるラーレリ・オリーブ・オリーブオイル工場では、搾油かす(オリーブミール)をリユースする。

「乾燥したワインの搾りかすを配合して発酵すると、オリーブミールに残存するポリフェノールを効率的に抽出できる」(バイオテクノロジー研究者のアルペル・カラカヤ氏)のだという。この取組みは現在、製薬原料やサプリメントで活用され、注目されている。

日本でも健康・美容面での注目されるオリーブオイルだが、特に未精製オイルには抗酸化ビタミンやカロチノイドが含まれる。日々の食卓から、リユースでの健康的機能まで、オリーブの実は高い付加価値で構成されている。

住宅街で“現役”の樹齢2200年のオリーブの木

ウルラ地区住宅街には、樹齢2200年のオリーブの木「クラゾメナイ・モニュメンタル・ツリー」がそびえ立つ。今なお実を豊富に生み出す“現役”で、黒々とした油分たっぷりのオリーブが実をつける。

車両が多く通行する道路上に生育しているため、同住宅街では保護するための道路改装を行っている。道路を改装してでもオリーブの木を守るという考え方は、生産国であるトルコがオリーブを大切に思い、生活に欠かせない存在であることを象徴する。

同国内では樹齢3000~4000年のオリーブの木もあるという。街のクリスマスツリーとして活躍することもある、ウルラの“長老”は、日々、中心地で街を見守る。

◇日本食糧新聞の2017年7月14日号の記事を転載しました。