産地の海岸にある“カキ小屋”風に、ダイナミックにカキを食べさせる店が増加中の大阪。中でも、ユニークな提供方法で話題なのが、難波にある「牡蠣とかはまぐりとか 貝賊」である。やかんで蒸し焼きにするという意表を突くスタイルで、貝好きが集まる繁盛店となっている。

蒸して口が開いたら、やかんのまま提供

大阪・ミナミの繁華街、難波エリアで最近注目されているのが、旧新歌舞伎座の裏通りである“座裏”と呼ばれるスポット。新旧の飲食店が混在し、特徴ある店が多い中、貝料理専門店として人気を集めているのが同店。貝好きが貝好きを呼ぶといった具合に人気店へと成長し、冬だけでなく年間を通して集客に成功している。

「行ってみたい」という気持ちをけん引するのが、同店の名物「広島産牡蠣やかん焼き」。価格は、S(約10個、1598円)、M(同20個、2818円)、L(同30個、3974円)とリーズナブルで、客の9割はオーダーするという。作り方は、やかんにカキを入れて、酒とみりんを少々プラスして火にかけるだけと、いたってシンプル。蒸して口が開いたら、やかんのまま提供する。

「広島産牡蠣やかん焼き」(写真はM)。蓋を取ると、湯気とともにカキの風味が立ち上る。カキは広島産を通年使用する

よりふっくらした仕上がりに

鉄板や鍋ではなく、やかんを調理器具にするという発想が、このメニューのポイント。「やかんは蒸気が逃げるので、鍋に比べると効率は劣ります。しかし、一気に高温で調理をすると、身が縮みやすくなる懸念があります。ある程度蒸気を逃がしつつゆっくりと火を入れることで、よりふっくらした仕上がりを目指しています」と、代表の廣岡信太郎さん。

さらに、やかんを使用すれば、カキから出たスープを注ぎやすいというメリットも。スープにポン酢を少量プラスすればよりおいしくなり、カキのエキスを最後まで味わうことができる。また、スープを熱燗(かん)で割って飲む「牡蠣酒」(1合583円)も提案。酒8対スープ2の割合で合わせれば、口中に磯の香りが広がる燗酒となる。カキ好きにはたまらない楽しみ方である。

店内の照明にもやかんを活用

2時間飲み放題付き「やかんコース」も好評

その他、貝の刺し身や焼きハマグリも人気。「他ではあまり食べられないような、珍しい貝類も提供したい」と仕入れにもこだわり、その時々の各地で良いものを取り入れている。また、貝料理の他、魚や野菜のメニューもあり、多彩なニーズに対応している。

平日はビジネスマン、週末はミナミに遊びに来るカップルやファミリーが多く、宴会利用も多い同店。やかん焼きを組み込んだ、2時間飲み放題付きで手軽な「やかんコース」(1人3780円。利用は2人~、要予約)などのコースもあり、「やかん焼きを試してみたい」という客に好評という。また、現在の鍋メニューは、コースで提供する「ハマグリのしゃぶしゃぶ」のみのため、今後は新しい鍋メニューも考案したいと話す。

●店舗情報
「牡蠣とかはまぐりとか 貝賊」 所在地=大阪府大阪市中央区難波4-8-2 大幸ビル1階/開業=2014年6月/営業時間=午後5時~翌午前0時(LO11時30分)、無休/坪数・席数=約20坪・29席/1日平均客数=60人/平均客単価=5000円

◇日食外食レストラン新聞の2017年2月6日号の記事を転載しました。